リケッチア感染症はリケッチアという細菌に寄生されたダニ、シラミ、ノミに刺されることによっておこる感染症です。日本ではツツガムシを介するツツガムシ病、マダニを介する日本紅斑熱がみられます。
リケッチア感染症が疑われた場合、どういった治療が行われるのでしょうか?そもそもリケッチア感染症を予防するにはどうしたら良いのでしょうか?ここでは、リケッチア感染症の治療、予防方法について解説していきます。
リケッチア感染症の診断までのながれ
ツツガムシやマダニにさされ、リケッチア感染症かもしれない…と思ったら皮膚科もしくは内科を受診すると良いでしょう。特に、さし傷・発熱・発疹が出現した場合は、リケッチア感染症が疑われます。治療が遅れると重症になる恐れがあり、全ての症状がそろわなくても受診することが大切です。
1.問診診察
ツツガムシやマダニに刺された日にち、症状をききとり、発疹部位を確認します。ツツガムシやマダニにさされるのは野外ですから、野外活動の場所、旅行先など、刺されたときの状況や地域も確認します。
リケッチア感染症であるツツガムシ病と日本紅斑熱は症状が似ているため鑑別が難しいのですが、刺されてから発症するまでの日数や発生地域に違いがあるため、それらの情報は診断の手がかりとなります。
2.血液検査
リケッチア感染症では、炎症反応検査値(CRP)が上昇し、肝機能が悪化する場合があり、血液検査で確認します。
血清診断(抗体の有無を調べて病気を診断する検査)で抗体が上昇していれば、リケッチア感染症だと確定できますが、結果が出るまでには数日要します。そのため確定診断を待たず、問診や診察内容からリケッチア感染症の疑いが強ければ治療を開始します。
リケッチア感染症の治療方法
リケッチア感染症には抗生物質が良く効きます。速やかに治療を開始すれば2~3日で熱が下がり、予後も良好です。抗生物質は、第一選択としてテトラサイクリン系薬を使います。日本紅斑熱では、ニューキノロン系薬も用いられますが、ツツガムシ病には効きません。
しかし、発症(発熱)から治療開始まで日数が経過しているケースでは重症化のリスクが高く、臓器不全におちいる可能性があります。早めの受診・治療が大変重要です。
治療は症状が重症化しないか観察するため入院で行われることが多く、点滴で抗生物質を最低7~10日間投与します。さらに退院後も抗生物質の内服を2~3週間続けます(日本皮膚科学会より)。
リケッチア感染症にかからないためには?
リケッチア感染症を予防するためのワクチンはありません。そのため、予防のためにはツツガムシやマダニにさされないようにすることが大切です。
リケッチアをもったダニは野山や草むらの土に生息していますが、さされないための工夫として、下記のようなことを留意しましょう。
- むやみに草むらに入らない
- 野山に入る際は長そで、長ズボン、手袋、帽子などを着用し、できるだけ肌を出さない
- 草の上に直接座る、寝転ぶ、というようなことはさけ、敷物を利用する
- 脱いだ上着やタオルは、地面や草の上に置かない
- 虫よけスプレーを活用する
- 野外活動のあとはすぐに入浴し、着替える
- 肌に吸いついているダニを見つけた場合、さし傷・発疹・発熱などの症状が出現した場合はすぐに受診する
ツツガムシやマダニにさされたからといって、全てがリケッチアを持っているわけではないので、必ずリケッチア感染症になるわけではありません。
しかし、リケッチア感染症の知識をもっていると、体調の変化に気づくことができ、早期治療につながります。野外活動の機会のある方は知っておきたいですね。
まとめ
リケッチア感染症は、早期治療ができれば抗生物質による治療が良く効きます。治療が遅れて重症化することのないよう、リケッチア感染症の知識をもち、早期受診につなげたいものです。野外活動の機会が多いという方は、ダニにさされない工夫を心がけましょう。