片頭痛は痛みの症状が強く、日常に支障をきたしてしまうつらい頭痛です。頭痛だけでなく、吐き気を感じて、実際に嘔吐してしまうこともあります。そんな片頭痛の発作を何とかする方法はないのでしょうか?
この記事では、片頭痛の対処法について述べます。
片頭痛の治し方は?まずは専門医に相談を
片頭痛には未だ根本的な治療がありません。年齢とともに治っていく方、症状が落ち着いていく方もいますが、長期間頭痛と向き合わなくてはいけない方もいらっしゃいます。
また、治ったと思っても、何年か後に再発することがありますので「完全に治った」とは言い切れない病気です。
ただし、症状を軽くする方法はあります。その第一歩として、頭痛外来や頭痛専門医のいる病院に相談することをお勧めいたします。
頭痛専門医とは、医師の中でも頭痛に詳しく、頭痛治療に関する一定の経験や勉強を積んだプロです。もちろん勝手に自称できるものではなく、日本頭痛学会によって認定されている医師のことを指します。頭痛専門医の検索はこちらでできますので、ぜひお近くの専門医を探してみてください。
病院に行くのは面倒という方も、頭痛には重大な病気が隠れていることもあるため、一度は医療機関でしっかりと診断してもらうことをオススメします。医師の指導をあおぐことは頭痛をこじらせないためにも重要です。
片頭痛の薬は何のため?
片頭痛の薬にはどんなものがあるのでしょうか?
片頭痛に対して処方される薬には大きく分けて2つあり、発作が起きた際に服薬する症状を抑えるための薬(鎮痛薬)と、予防のために飲む薬(予防薬)に分けられます。
どちらも根本的な治療薬ではありませんが、症状を軽減したり、頻度を少なくしたりする効果がある薬です。片頭痛の治療薬には市販されている薬もありますが、病院で処方される治療薬は種類が多いだけでなく効果が大きいものが多く、自分に合うものを見つけることができれば、頭痛が起きたとしてもご自身でコントロールすることが可能になります。
ただし、鎮痛薬の内服回数が多くなった場合は、鎮痛薬の飲みすぎによって頭痛が起きる(薬物乱用頭痛)可能性もあるため、医師に相談してください。
自分でできる片頭痛対策
いつ起きるか分からない頭痛に対して、服薬以外にも自分でできることはないのでしょうか。以下に、頭痛の軽減・予防に役立つ3つのステップをご紹介します。
1.予兆、なりやすい条件を知ろう
片頭痛は、頭痛が始まる前に体の異変に気付くことができる場合があります。また、人によっては一定の条件が揃うことで片頭痛になりやすい時期が存在し、それを知っておくことで頭痛に備えることができます。
片頭痛が発症しやすい条件
片頭痛には、発症しやすくなるパターンがいくつか存在します。
どういった条件が頭痛を誘引するかは人それぞれですが、多いものを紹介いたします。
- 雨の日など、低気圧の時
- 休みの日、ストレスから解放されたタイミング
- 睡眠不足の時、もしくは逆に寝すぎた時
- 騒音の近くにいた
- 血管を拡張する食品を食べ過ぎた時
- 液晶画面をずっと見続けている
- 生理の前後(女性)
眩しい光や騒音、強い匂いは頭痛になってからも辛く感じますが、それ自体が頭痛を誘発する要因になることもあります。また、チョコレート、チーズ、ナッツ類、柑橘類、アルコール(赤ワインは要注意)、ソーセージ、カフェインの入ったもの(コーヒーや紅茶、濃いお茶)などの摂取は血管を拡張し、片頭痛を引き起こすもとになります。
予兆としてよくある症状
片頭痛の直前には一時的に血管が収縮することが知られています。血管の収縮により血流が悪くなることで、頭痛の予兆となる様々な症状が現れます(前兆のない方もいらっしゃいます)。頭痛が始まると、これらの症状は消えてしまうことが特徴です。
発作が起きた時に飲む鎮痛薬は頭痛が始まってすぐ(種類によっては前兆があってすぐ)に飲んだ方が高い効果が得られることが多く、とくに吐き気を伴う場合は吐き戻さないうちに鎮痛薬を早めに服薬するほうがよいでしょう。以下のような前兆に気づいて早めに薬の準備をすることが重要です。
※薬を飲むタイミングや量は、医師の指示に従ってください。
- あくびが止まらない、眠気
いつもより明らかに多いあくびや、きちんと寝たはずなのにあくびが出る時は要注意です。 - イライラする、不快な感じ
頭痛前になんとも言えない不快感を覚えることがあります。ごくたまにしか片頭痛を発症しない方にとっては、前兆として認識するのは難しいかもしれません。 - むくみ
発作の2~3時間前に、むくみを生じる方もいます。むくみを感じた時に、他の症状も見られた際には片頭痛の予兆である可能性があります。 - 眩しい、音やにおいに敏感になる
- 空腹感
- 手足が痺れる、力が入らない
頭痛の前に手足の痺れや動かしにくさを感じる方もいらっしゃるようです。しかし、これらの症状は脳卒中などの命に関わる重大な病気の症状とも一致するため、片頭痛だと安易に決めつけずに必ず医療機関を受診しましょう。頭痛が今までにないほど激しい、ろれつが回らない、言葉が出てこない・理解できない、意識がもうろうとする、めまい、痙攣などの症状があれば、一刻も早く医療機関を受診してください。しばらくして症状が軽快したとしても、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性も否定できません。
前兆としてよくある症状
- 目がチカチカする
カメラのフラッシュを見た後のような、チカチカするものが見え、どんどん範囲が広がっていきますが、しばらくすると消えます。このチカチカは閃輝暗点といい、目が見えにくくなった、視野が欠けたと感じる方もいます。片頭痛の前兆として代表的な症状ですので、閃輝暗点が出たら頭痛が始まる直前と考え、この時点で鎮痛薬を服薬しても良いでしょう。
2.頭痛が起きたら記録をつけよう
ここまで片頭痛の誘因や前兆になる症状として多いものをご紹介しましたが、頭痛の症状は人それぞれですので、自分はどのような時に頭痛が起きやすいかを把握することが大切です。
具体的な方法として、記録をつけることをオススメします。
頭痛の起きた日付、どんな痛みだったか、持続時間、薬は飲んだか、天気や食事、何をしていたか、前兆とみられる症状など、頭痛が収まった後に思い出せる限りでかまいません。女性の方は、加えて生理周期なども把握しておくと良いでしょう。
日本頭痛学会が症状を記録するための「頭痛ダイアリー」を配布しています。
パソコンをお持ちの方は下記からダウンロードして使用してください。
日本頭痛学会|頭痛ダイアリー
自分の発症パターンが分かれば、鎮痛薬を飲むタイミングを逃さなくなること以外にもさまざまな対応が可能になります。
例えば、頭痛の要因になってしまう食べものについて、全く食べないようにするのは大変ですが、自分が発症しやすい場合には控えるなどの対処ができます。
また、眠りすぎた時に頭痛になりやすい方は休日でも目覚ましをかけるような対策がいいでしょう。
それ以外にも、「生理前はチョコレート禁止」、「雨の日はスマートフォンの液晶の光量を抑える」など、自分にあったやり方を見つけてください。
3.頭痛が起きている間の対処法
それでは、頭痛が始まってしまった後はどうすれば良いのでしょうか。
一般的に片頭痛は動くと頭痛が酷くなるため、できるだけ暗くて静かな場所でじっとしている方が良いとされています。
また、痛む部分を冷やすことで症状が和らぐという特徴がありますので、冷却シートや氷枕があれば効果があるかもしれません。
頭痛の中には、片頭痛の特徴と緊張型頭痛の特徴を併せ持つ、混合型頭痛というものがあります。緊張型頭痛とはストレスや肩こりによって誘発される慢性頭痛です。緊張型頭痛への対処法は片頭痛とは大きく異なり、マッサージや入浴、ストレッチなどで体を温めることです。
したがって頭痛発作が片頭痛ではなく混合型頭痛だった場合には、片頭痛の対処法のみでは緊張型頭痛を増悪させてしまうことがあります。混合型頭痛の場合、片頭痛と緊張型頭痛のどちらの対処で痛みが軽減されるか、ご自身で色々試しながら治療をすすめていくことになります。
まとめ
片頭痛には根本的な解決法がないので、ご自身が症状と向き合い、適切に対応することが何より重要です。今回ご紹介した3つの対策を念頭に、まずは専門医に相談することが症状改善の第一歩です。
最後に、頭痛の診断については、自分で決めつけることは危険です。脳卒中や脳腫瘍などの器質的な脳疾患を否定する上でも、頭痛に悩まされる中で一度も病院に行ったことのない方、頭痛がいつもと違うと感じた方は、必ず医療機関を受診してください。受診の際には、頭痛の記録を持っているとスムーズな診断が可能になる場合が多いです。