口の中を清潔に保ち、虫歯を予防する歯磨きは年齢に関係なく大切なものです。幼いころから取り組むことで習慣となります。ただ幼少期に歯ブラシをくわえたまま転ぶなどして、入院するなどの事故につながるケースがあります。喉の奥には脳や太い血管があり、傷つくと命に関わるほか、脳障害による重い後遺症が残る可能性も出てきます。

今回は子供にみられる歯ブラシが喉に刺さる事故について、状況や発生件数、対策などを説明していきます(記事内のデータは消費者庁および東京都より引用しています)。

目次

なぜ事故が起きるの?

子供、特に乳幼児は歩行が発達していません。重心が頭の方にあるため身体のバランスがうまく取れないため、そもそも転ぶリスクがあります。歯ブラシを口にくわえたまま歩いていると、倒れたはずみに事故が起きる可能性があります。歯ブラシは先端が尖っていないため危険はないと考えられがちですが、細長い形状をしているため力が加わった場合は意外と深く突き刺さっていってしまいます。

事故を防ぐために柄の部分が円形だったり、柄の途中が皿のように膨らんだりして奥に入らないよう工夫されたタイプが販売されています。都が行った実験でも、安全対策を施した歯ブラシの多くは有効に機能することが確認されました。

ただなかなか普及が進んでいない状況があります。都が2016年に実施したウェブアンケート調査(1~5歳の子供がいる男女1000人)では、子供に喉突きを防止する歯ブラシを使わせている割合は1歳児で30%、2歳児以上だと10%にも達していませんでした。

どのくらい事故が発生しているの?

消費者庁によると、6歳児以下の歯ブラシに関係する事故は2010年12月から2016年12月にかけて全国30の医療機関で139件発生していました。また東京消防庁の管内で5歳児以下を歯ブラシ関連の事故で搬送した事例は毎年40件程度あります。なかには入院した例もありました。

このデータには救急車を使わず病院を訪れた場合などは含まれていないので、実際にはもっと起きていてもおかしくありません。都のアンケート調査では、子供が歯ブラシによって怪我をしそうになった、もしくは怪我した割合は16%でした。そのうち90%は「子供や自分たちの責任」としてどこにも報告していないといいます。

子供が歯ブラシによって怪我する状況

怪我をした年齢は、消費者庁のデータで1歳児が64件と半数近い割合でした。その後2歳児の42件、3歳児の17件と続きます。事故が起きた状況では歩くなどしていたときが91件(65.5%)、ソファなどから転落したときが19件(13.7%)でした。

都や消費者庁の資料には、実際に起きた事故がいくつか紹介されています。その一部を紹介します。

  • 歯ブラシをくわえた状態で走って転んでしまい、喉に突き刺さって口の奥が傷つく。血は止まったが発熱し、元気もないため救急外来を受診。
    喉に血腫と膿瘍の疑いなどがあったので、8日間入院。
  • 歯ブラシをくわえてソファに座っていたとき、前に落ちて歯ブラシが刺さる。保護者が抜いて歯科医院に行ったが、その後発熱と首に腫れがみられたので受診。蜂窩織炎で入院。
  • 歯磨き中誤って転倒して喉に刺さり、抜いたときに折れた先端部を子供が飲み込んでしまったので救急を要請。後日違和感があって病院を訪れると折れた部分が喉に刺さったままだったので別の病院に搬送された。

自分たちでできる対策とは

子供用はみがき

(左)ピジョン、(右)ホクビよりそれぞれ画像提供

一人で歯磨きをさせない

事故は1~3歳の間に多く発生しています。イスではなく床に座った状態でやるよう教えることも大切ですが、それでもバランスを崩してしまうことも考えられます。可能な限り近くで見守ることが必要です。

周囲を片付けておく

万が一口に歯ブラシをくわえたまま歩き回ってしまった場合、周りにクッションやコードなどがあると足を滑らせたり引っかかってしまったりする可能性があります。転ぶ原因になる物は片付けておきましょう。

安全対策を施した歯ブラシを選ぶ

常に見守り続けるのは負担にもなりますし、限界もあります。安全対策を施した歯ブラシを使わせてリスクを軽減しましょう。磨きにくい場合がありますので、虫歯にならないよう仕上げ磨きは大人がやってあげるといいでしょう。仕上げには一般的な歯ブラシを使うと思うので、幼児の手の届かないところに保管しておきましょう。

まとめ

消費者庁は2017年2月に子供の歯ブラシ事故への注意喚起を発表しています。2013年に続き2度目ですが、前回の喚起後も6歳児以下の事故情報は83件寄せられている状況です。なかなかイメージしにくい事故ですが、いつ起こってもおかしくないことを把握しておく必要があります。子供が安全に歯磨きの習慣を身につけられるよう、歯ブラシ選びから取り組んで事故を防ぎましょう。