蜂巣炎(ほうそうえん)・蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、毛穴や傷口から細菌が侵入して、皮膚の深い組織が炎症をおこす感染症です。

広い範囲に、赤み・痛み・腫れがみられ、38度以上の高熱がでることがあります。炎症がおきた組織を顕微鏡でみると蜂の巣の仕切りのように見えることから、その名前がつけられています。症状は全身に起こりますが、とりわけ膝から下によくあらわれます。

皮膚炎だからとあまく見てはいけません。突然、重症化して緊急入院する人がいます。この記事では、蜂巣炎(蜂窩織炎)の原因と症状を中心に解説しています。

目次

蜂巣炎(蜂窩織炎)は、体のどこでも発症する

人間の皮膚は、表面の部分から順に表皮真皮皮下脂肪という3つの層から成り立っています。蜂巣炎(ほうそうえん)は、いちばん外側の表皮にある、毛穴・汗腺・傷口・やけど・乾燥肌・床ずれ水虫・湿疹などから細菌が侵入し、真皮や皮下脂肪に到達して炎症・化膿を起こします。「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」とも呼ばれます。

蜂巣炎(蜂窩織炎)は、体のどの部分にも発症しますが、特にかかりやすいのは膝下です。蜂巣炎(蜂窩織炎)のような皮膚の感染症には種類が多くあり、感染した体の部位・皮膚の深さ、細菌の種類などによって様々な病気の呼び方があります。よく知られているもので次のようなものがあります。

  • 爪まわり〜手足の指先に感染すると「ひょう疽
  • 表皮に感染すると「伝染性膿痂疹(とびひ)
  • レンサ球菌が真皮に感染すると「丹毒」
  • 筋膜まで感染すると「壊死性筋膜炎

前触れがなく、進行が早いことも

蜂巣炎を引き起こす細菌は数多くありますが、おもに黄色ブドウ球菌レンサ球菌によって感染します。これらの細菌は、普通なら皮膚の表皮でバリアされるものですが、糖尿病などによって免疫力・抵抗力が低下していると、蜂巣炎を発症しやすくなります。

また、普段から血行がよくない、手足がむくむ、といった人も感染するリスクが高いといわれています。それは、血行不良があると傷ができやすくなり、むくみがあるとリンパ液の流れが悪く、細菌が増殖しやすいためです。

蜂巣炎は、はじめ皮膚の赤み、腫れや痛みから始まります。前触れなく発症したり、進行が早いこともあります。

皮膚の炎症と、風邪のような症状

膝を抱えて壁にもたれる女性-写真

「虫に刺されかな」と思っていると、いきなり足が太くなり、あっというまに足全体が赤く腫れ上がり、自分の足が「ゾウの足にでもなった」感覚に襲われます。

感染した皮膚は熱をもち、オレンジの皮のようなあばた(皮膚の小さな窪み)や水疱ができることがあります。そして、体調はすぐれず、次のような風邪に似た症がみられます。

  • 寒気による震え
  • 体全体のだるさ
  • 38度以上の発熱
  • 頭痛や吐き気
  • 関節の痛み

そのほか、心拍数の上昇・低血圧・錯乱状態といった深刻な症状にみまわれることもあります。40度にせまる高熱で意識が朦朧とし、救急車で搬送されて入院する人もいるくらいです。実際、一般の救急外来でもっとも多い皮膚病は「蜂巣炎」といわれています(日本臨床皮膚科医会より)。

治療せず、重症化すると死亡することもある

蜂巣炎を治療せずに放置すると、感染した皮膚の血管が詰まり、組織に栄養が行き渡らず、皮膚の細胞は死滅します。細胞が死滅することを壊死(ネクローシス)といいます。壊死すると神経が働かなくなるため、痛みは消えて何も感じません。

やがて、壊死が進むと、血行が途絶えて免疫が働かなくなるため、皮膚の下の筋膜に沿って感染が拡がり、「壊死性筋膜炎」という病気を引き起こします。そうなると、外科手術で壊死した組織を切除する治療などが施されますが、それでも死亡率は約30%と高い危険がともないます(メルクマニュアル医学百科より)。

まとめ

蜂巣炎は、細菌によって皮膚の炎症や化膿が起こる感染症です。毛穴、傷口、水虫など小さな割れ目から細菌は侵入し、皮膚の深い組織で感染します。赤み・腫れ・痛みが生じ、高熱を伴うなど重症化することがあります。治療せずにいると、壊死性筋膜炎に移行し、皮膚の組織が死滅し、外科手術によって患部を切断する事態や、死亡率の高い状態になることがあります。軽い症状でも必ず皮膚科を受診しましょう。