冬の終わりから春先にかけてくしゃみ、鼻水が止まらない…花粉症の人にとってとても辛い時期がやってきました。

これまでは、花粉症の対策といえば予防と対症療法が主で、根本的な解決策はありませんでした。しかし、2014年から「舌下免疫療法」が花粉症の治療として保険適応になりました。ネットやテレビでも紹介されているのでご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか?今回は、舌下免疫療法について、その原理や具体的な治療方法などをお話しします。

目次

hay-fever

花粉症はなぜ起こる?

花粉症は、花粉に対して身体がアレルギー反応を起こすことで発症します。花粉症が起こる詳しいメカニズムについては、「花粉症のメカニズムって?花粉を吸うとどうして症状が出るの?」で取り上げているので、舌下治療法への理解を深めるためにもまずはご参照ください。

舌下免疫療法とは

舌下免疫療法では、花粉症の原因である花粉エキスを、ほんのわずかに持続的に舌下に投与します。それによって身体を花粉に慣らしてアレルギー症状を和らげるという治療法です。

花粉症は季節性のものなので、短期間集中的にしか花粉にさらされない状態では、身体は花粉を異物と認識してしまいます。しかし、2~5年の長期間に渡って少量の花粉アレルゲンエキスを持続的に体内に取り込むと、体内に花粉が存在し続けるので、次第に身体が花粉を異物だと思わなくなります。こうして、花粉飛散シーズンになっても花粉が異物と認識されず、アレルギー症状が起こらなくなるというわけです。

舌下免疫療法のメカニズム

舌下免疫療法の効果発現メカニズムは十分には解明されていませんが、次のように考えられています。舌下免疫療法の実施により、日常生活で取り込まれる量より多い量の花粉が体内に入ると

  1. 制御性T細胞(過剰な免疫反応をおさえる細胞)が活性化
  2. Th1細胞(アレルギー反応をおさえる細胞)が増加
  3. Th2細胞(アレルギー反応を促進する細胞)の増加を抑制
  4. IgEと花粉の結合を妨げるIgGなど(抗体)が増加

などの反応が引き起こされると考えられています。このように体内の免疫反応が変化することで、花粉症を治療する効果を発現すると推測されています。

舌下免疫療法ができる人

マスクの女性
舌下免疫療法で用いる薬はスギ花粉エキスなので、スギ花粉による花粉症で苦しんでいる人が対象となります。年齢について上限はありませんが、日本では12歳以上が対象となっています。

また、妊娠中の人やぜんそく症状が強い人など、治療を受けられない人もいますので、医師に事前に確認してもらいましょう。

舌下免疫療法のやり方

それでは、実際に舌下免疫療法のやり方を見ていきましょう。

自分でスギ花粉エキスを1日1回舌の下に投与し、 2分間待った後飲み込みます。効果を最大限に発揮させる ために舌下への投与後、5分間はうがいや飲食を避け、副作用の発現を避けるために2時間は激しい運動や入浴などは控えます(※初回投与のみ医者のもとで服用します。)

これを毎日、最低2年間程度継続する必要があります。長期間の治療になってしまいますが、体内で花粉を異物と認識させなくするためにはどうしても必要な期間となります。途中でやめてしまうと効果がなくなってしまうので継続することが一番大切です。

花粉症の時期に花粉症に対する薬が必要なくなる寛解に至る方は20%程度ですが、症状がかなり和らいで楽になるという有効な方まで含めると、有効率は80%程度になります。

ここで注意してほしいポイントは“花粉飛散シーズンには行わない”ということです。「花粉症の治療なのに花粉症の時期にやらないなんて…」と思われるかもしれませんが、花粉が飛んでいる時期に開始すると抗原との接触量が増えてしまうため、花粉症の症状が悪化する恐れがあるためです。以上から、花粉が飛散しない、6月から11月の間に治療を開始しないといけません。

リスクはあるの?

「本当にこれで治るの?」「危険性はないの?」と心配な方も多いかと思います。舌下免疫療法の副作用としては、主に口腔内のかゆみなどの局所的な症状が報告されております。また、稀ではありますが、命の危険があるアナフィラキシーショックの可能性も指摘されておりますので、専門の医師の指示のもと治療を行う必要があります。

最後に

今回は、つらい花粉症を治す最新治療方法として「舌下免疫療法」を取り上げました。

この治療法がすべての人に効果的というわけではありませんが、それでも多くの人に効果が出るといわれています。もし花粉症で毎年悩まされているなら、試してみる価値はあると思います。一度、お住まいの地域で舌下免疫療法を受けられる病院がないかぜひ検索してみてください。