現在日本で販売されている認知症のお薬はアリセプト(成分名:ドネペジル)レミニール(成分名:ガランタミン)、リバスタッチ・イクセロンパッチ(成分名:リバスチグミン)、メマリー(成分名:メマンチン)の4種類です。

この記事では認知症のお薬で初めて販売された貼り薬であるリバスタッチ・イクセロンパッチについて詳しく見ていきたいと思います。

目次

「リバスタッチ」「イクセロンパッチ」とはいったいどんなお薬なのか?

認知症といえば不治の病として高齢になると多くの方が心配する病気の1つであるといえるでしょう。残念ながら認知症そのものを治す薬はまだ存在していません。しかし、認知症の症状や進行を緩和する薬の開発は、いくつかの製薬会社で行われています。

2011年までは日本で認可・販売されている認知症のお薬はアリセプト(成分名:ドネペジル)のみでしたが、2011年以降新たに3種類の認知症のお薬が認可され、患者さんの症状や状態にあわせてお薬を選ぶことが可能になりました。

「リバスタッチ」「イクセロンパッチ」は、2011年から販売されている認知症のお薬であり、唯一の貼り薬ということで注目されています。お薬の成分名(成分名)をリバスチグミンといい、リバスタッチは小野薬品工業株式会社から、イクセロンパッチはノバルティスファーマ株式会社から販売されています。

「リバスタッチ」「イクセロンパッチ」の効能効果とは?

リバスタッチ、イクセロンパッチの効能効果は以下のように書かれています。

「軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」

なお認知症の種類の詳細については「認知症の4つのタイプ―その原因と症状」をご覧ください。

「リバスタッチ」「イクセロンパッチ」はどのようにして効くのか?

リバスタッチ、イクセロンパッチはアリセプト(成分名:ドネペジル)やレミニール(成分名:ガランタミン)と同様にコリンエステラーゼ阻害薬に分類されます。

アルツハイマー型認知症の患者さんでは、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの活性が低いと考えられています。コリンエステラーゼ阻害薬は、コリンエステラーゼというアセチルコリンを分解する酵素の働きを阻害し、脳内のアセチルコリン濃度を高め、神経細胞間の命令の伝達を円滑にすることで認知症の症状進行を緩和するとされています。

リバスチグミンには、アセチルコリンエステラーゼブチリルコリンエステラーゼ(アルツハイマー型認知症が進行して神経細胞が脱落してくると産生されるようになるコリンエステラーゼ)という2種類のコリンエステーゼを阻害する作用があり、同じコリンエステラーゼ阻害薬に分類されるドネペジルやガランタミンと異なる作用機序をもつことが特徴です。

「リバスタッチ」「イクセロンパッチ」の用法用量

使い方は、背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼り付け、24時間毎に貼り替えます。

1日1回4.5mgから貼付し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量して、維持量として1日1回18mgを貼付します。また、患者さんの状態に応じて、1日1回9mgを開始用量とし、4週後に18mgに増量することもできます。他の認知症のお薬と同様に、量を少しずつ増やし徐々に体に慣らしていくことで副作用の発現などを抑えます。

維持量である18㎎に達するまでは量の増減が可能なので、もし副作用がひどい場合などは一度量を減らしたり、休薬することができます。ただし4日以上休薬し再開する場合は、以前の投与量ではなく開始用量(4㎎か9㎎)から始めて、2週間以上開けてから次の用量に進む必要があります。

また、使用上の注意点として以下の様なことがあげられます。

  • 前日に貼ったお薬をそのままにして新しいお薬を貼らないでください。必ず前日分をはがしたことを確認してから新しいものを貼ってください。副作用が増強されることがあります。
  • 貼り忘れに気づいたときは、その時点で薬を貼ってください。翌日からはいつもと同じ時間に貼替をしてください。1度に2枚(2回分)貼らないでください。

「リバスタッチ」「イクセロンパッチ」の副作用

頻度の多い副作用は、その他のコリンエステラーゼ阻害薬と同じで消化器症状である悪心・嘔吐・食欲不振などです。また貼付剤特有の副作用として、皮膚のかぶれが出現する可能性があります。前日と同じ個所には貼らない、貼る前に保湿剤で皮膚の保湿を心掛ける、などの工夫をすることでかぶれの頻度を低下させることができます。

貼付剤のメリット・デメリットとは?

豆電球-写真

リバスタッチ、イクセロンパッチの最大の特徴は貼付剤であるということです。

患者さんに物忘れの症状がある場合、飲み忘れも起こりやすく、飲んだか飲んでないかもわからなくなるときもあり、お薬の管理が難しいことが多いといわれています。

しかし貼付剤であれば、使用しているかどうかを目視で確認することができ、またお薬に日付を書く欄があるため、貼り忘れや貼り替え忘れも起きにくいと考えられます。そのため介護者にとっても扱いやすいお薬であるといえるでしょう。

認知症のお薬で一番大事なことは、毎日しっかりと服用(貼付)することですので、貼付剤という選択はこの点でメリットがあります。

デメリットとしては貼付剤特有の皮膚のかぶれかゆみが挙げられます。皮膚症状がひどい場合は、医師に相談し、内服薬への変更も考える必要があります。

まとめ

お薬の研究・開発は、日々進歩しています。中でも生活習慣病や認知症などの疾患に関するお薬は、特に発展が目覚ましい分野です。ここ10年ほどで認知症の薬が増え、症状や認知症の進行度に合わせて選べるようになりました。

それぞれのお薬にはそれぞれのメリット・デメリットがあります。患者さんの症状やライフスタイルに合ったお薬を医師と相談しながら選択していくことが重要といえます。