認知症は、65歳以上では10人に1人が罹患する可能性があるヤンセンファーマ株式会社より)とされており、その治療薬にも注目が集まっています。

2011年までは認知症のお薬は日本ではアリセプト(成分名:ドネペジル)しか存在しておらず選択肢がありませんでした。しかし2011年以降、新たにレミニール(成分名:ガランタミン)、リバスタッチ・イクセロンパッチ(成分名:リバスチグミン)、メマリー(成分名:メマンチン)の3種類の認知症のお薬が販売されています。

今回はその中でもレミニール(成分名:ガランタミン)について詳しくお伝えしていきたいと思います。

目次

「レミニール」とはいったいどんなお薬なのか?

レミニールとは商品名であり、お薬の成分名(一般名)をガランタミンといいます。2011年から販売されている比較的新しい認知症のお薬です。

「レミニール」の効能効果とは?

レミニールの効能効果は以下のように書かれています。

軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制

現在認可されている4つのお薬に共通していえることですが、認知症を完治するお薬ではありません。

軽度~中等度のアルツハイマー型認知症とは次のような状態を指します。

  • 軽度:お金の管理が難しい、物事の段取りをつけられない、同じことを何度も聞く
  • 中等度:状況に合った服装が選べない、一人で買い物ができない、感情・行動が不安定

一方、高度のアルツハイマー型認知症では次のような症状が認められます。

  • 日常の会話が困難になる
  • たびたび失禁が見られる
  • 一人で着替えをしたり、お風呂に入ることができない

つまり軽度~中等度のアルツハイマー型認知症の患者さんに使用し、認知症の進行を遅らせることが、レミニールの主な用途になります。

なお、アルツハイマー型認知症の進行度合いによる症状については、『認知症のくすり「メマリー(メマンチン)」効果と使い方』の記事でも詳しく解説しています。

「レミニール」はどのようにして効くのか?

レミニールはコリンエステラーゼ阻害薬というものに分類されています。これは他の認知症のお薬であるアリセプト(ドネペジル)とリバスタッチ・イクセロンパッチ(リバスチグミン)と同じです。同じ作用を持つこれらのお薬は併用できませんが、NMDA受容体拮抗薬に分類されているメマリー(メマンチン)とは併用が可能になっています。

アルツハイマー型認知症では脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンが少なくなっています。コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンを分解してしまうコリンエステラーゼという酵素のはららきを阻害してアセチルコリンを増やすことで情報の伝達を助けます。このコリンエステラーゼ阻害作用は、アリセプトとリバスタッチ、イクセロンパッチと同様です。

これに加えレミニールには、アセチルコリンの受容体(体内の物質・細胞にある情報伝達物質を受け取る場所)に作用し、アセチルコリンが受容体に結合しやすくすることで、情報伝達をさらに活性化させる作用があります。

この2つの作用により、症状の進行抑制期間をより延長できると考えられています。なお、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬についてはアリセプト(ドネペジル)メマリー(メマンチン)の記事にも詳しく書かれているので、こちらを参照してください。

「レミニール」の用法用量

1回4mgを1日2回(1日8mg)から開始して、4週間後に1回8mgを1日2回(1日16mg)に増量して、経口投与します。なお、症状に応じて1回12mgを1日2回(1日24mg)まで増量できますが、増量する場合は変更前の用量で4週間以上投与した後に増量します。

他の認知症のお薬と同様、少しずつ量を増やして体に慣らしながら服用します。

1日2回服用する点が、他の認知症のお薬と異なる点です。このあたりも薬を選択するうえでポイントとなります。

「レミニール」の副作用

お薬-写真

他の認知症のお薬(コリンエステラーゼ阻害薬)と同様に、一番多いのは消化器症状で、悪心・嘔吐・食欲不振、下痢・腹痛などが知られています。特に飲み始めや増量時などに表れやすいと言われています。飲んでいるうちに体が慣れ、症状がなくなることも多いため、副作用が出現した場合は自己判断で中断せず、医師に相談してください。

薬を少量から開始して、有効用量である1日16mgまで増量するのは、薬を体に慣らすことで上記のような副作用を抑える目的があります。

まとめ

ここ10年ほどで認知症の薬が増え、症状や認知症の進行度に合わせて選べるようになりました。それぞれのお薬にはそれぞれの効果、用法、副作用があります。患者さんの症状やライフスタイルに合ったお薬を医師と相談しながら選択していくことが重要です。