今までは認知症といえば発症してしまうと治療薬もなく、悪化していくのを待つだけの病気と考えられていました。しかしここ10年ほどで使用できる認知症の認可薬は4種類まで増え、病気の進み具合や症状などで使い分けたり併用したりすることができるようになってきました。

最も早く発売された薬をアリセプト(一般名:ドネペジル)といい、その後登場した薬をメマリー(一般名:メマンチン)、レミニール(一般名:ガランタミン)イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ(一般名:リバスチグミン)といいます。アリセプト、メマリー、レミニールは飲み薬、イクセロンパッチ・リバスタッチは貼り薬です。

ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミンはコリンエステラーゼ阻害薬に分類されますが、メマンチンのみ4種類の認知症薬の中で作用機序が違います。

そこで今回はこのメマリー(メマンチン)について詳しく見ていきたいと思います。

目次

「メマリー」とはいったいどんな薬なのか?

メマリーとは第一三共株式会社から販売されている薬の商品名であり、一般名(成分名)をメマンチンといいます。

日本では2011年に販売された比較的新しいお薬です。残念ながら認知症を完治するものではありませんが、認知機能を改善し、また、「怒りっぽい」「興奮しやすい」「攻撃的になる」「徘徊」といった認知症の周辺症状を軽減する効果が認められています。

しかも、他の3種類の薬とは作用機序が違うため、他の認知症のお薬との併用が可能である点が特徴的です。

「メマリー」の効能効果とは?

それでは効能効果について詳しく見ていきましょう。添付文書には以下のように書かれています。

「中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」

そもそもアルツハイマー型認知症の軽度・中等度・高度はどのように分けられているのでしょうか。以下にそれぞれに対応する症状を記しましたので参考にしてください。

アルツハイマー型認知症・症状の分類

  • 軽度:お金の管理が難しい、物事の段取りをつけられない、同じことを何度も聞く
  • 中等度:状況に合った服装が選べない、一人で買い物ができない、感情・行動が不安定
  • 高度:一人で服を着ることができない、尿・便失禁する、一人で入浴できない

また他の認知症のお薬はどちらかというと感情や行動などを活発化させる傾向がありますが、メマリーについては感情や行動などを安定化させる傾向があり、怒りっぽく攻撃的な患者さんに選択しやすいとされています。

「メマリー」はどのようにして効くのか?

メマリー(メマンチン)はNMDA受容体拮抗薬に分類されます。

アルツハイマー型認知症では、脳内の神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体(受け手)が必要以上に活性化されている状態です。そのため、過剰なカルシウムイオンを脳神経細胞に入れてしまい、神経細胞が損傷したり、記憶・学習機能障害がおこったりするとされています。

そこでメマリーがこのグルタミン酸の受容体(受け手)と先に結合することで、過剰なカルシウムイオンの脳神経細胞への流入を防ぎ、神経細胞損傷や記憶・学習機能障害を防ぎます。

「メマリー」の用法用量

医師から説明を受ける男性-写真
1日1回5mgから内服を開始して、1週間に5mgずつ増量し、維持量(薬の効果を維持するために必要な薬の量)として1日1回20mgを内服します(1週目は1日1回5mg、2週目は10mg、3週目は15mg、4週目以降20mg)。なお、高度の腎機能障害がある場合の維持量は1日10㎎となります。

1日1回の服用とありますが、特にいつ飲まなければいけないといった決まりはないので、確実に内服できる時間帯を決め、飲み忘れないように定期的に服用することが重要です。

「メマリー」の副作用

メマリーの副作用として一番多いのは「めまい」「ふらつき」です。飲み始めや増量時に起きやすいといわれています。内服量を徐々に増やしていくのは、薬を体に慣れさせて副作用を出にくくするためなのです。

その他の副作用として眠気、頭痛、便秘・食欲不振などがあります。服用を開始して気になる点があれば病院で相談するようにしてください。

まとめ

ここ10年ほどで認知症の薬が増え、様々な症状や進行度に合わせて選べるようになりました。特にメマリーは現在唯一のNMDA受容体拮抗薬として注目されています。

認知症の治療で大切なのは「早期発見・早期治療」です。早期に認知症の薬を服用すれば、それだけ認知症の進行を遅らせることが期待できるのです。

患者さんに薬を服用させてあげること以外にも、認知機能を維持するためにご家族がしてあげられることがあります。それは、患者さんの家庭内や地域での役割を作ってあげることです。洗濯物をたたむ係やご飯の片付け係など、なにか仕事を与えてあげることでやる気も芽生え、残っている認知機能を維持できる可能性があります。ご家族の助けが必要になる場合も多いと思いますが、このようなことを意識してみてはいかがでしょうか。