食中毒を起こす細菌は、生活環境の中に多く存在しています。例えば、土の中にいる食中毒細菌として「セレウス菌」が挙げられますが、「熱に強い殻(芽胞)を作る」という特殊な性質を持っていて食品を汚染することがあり、注意が必要です。今回は「セレウス菌」について説明します。

目次

セレウス菌の特徴は?

セレウス菌は、土壌細菌の一種で、土や水中など自然環境の中で広く分布しています。食品を汚染する機会も多く、特に穀類、豆類、香辛料などはセレウス菌に汚染されていることが多いと考えられています。熱に強い殻(芽胞)を作り、100℃で30分加熱しても分解されません。

セレウス菌食中毒はどのように起こる?

2001年、九州の保育園で行われたもちつき大会であん餅などを食べた園児ら多数が嘔吐などをしたというニュースがありました。その後の調査によって、あん餅を食べてから嘔吐が起こるまでの時間が短かったこと、細菌検査の結果セレウス菌が検出されたことなどが分かり、この集団嘔吐はセレウス菌による食中毒であるとされました。小豆を茹でた後室温で長時間放置した間に、セレウス菌が増殖して毒素を産生したと考えられたのです。

セレウス菌による食中毒の原因食品として、肉、魚、ミルク、野菜、穀類、芋、麺類、チーズ製品などたくさん挙げられます。これらのものが混じっているソース、スープ、サラダや鍋焼き料理などが関係することもあります。

セレウス菌は増殖するときに、「嘔吐型毒素」と「下痢型毒素」の2種類の毒素を産生し、嘔吐型と下痢型の2種類の症状が現れます。どちらも重症化することはまれで、大半は軽症で終わると考えられています。

嘔吐型

食品中内で毒素が作られ、毒素を食べることによって食後1時間~5時間(平均して2時間~3時間)で吐き気や嘔吐を起こします。まれに下痢をすることもあります。原因食品として、焼飯、ピラフ、焼きそば、スパゲッティ等が挙げられます。日本で発生しているセレウス菌の食中毒は、ほとんどがこの嘔吐型です。

下痢型

食品と一緒に身体の中に入った菌が人の小腸で増えるときに毒素を作り、食中毒を起こします。食後8時間~16時間で腹痛や下痢などを発症します。原因食品として、弁当、プリン等が挙げられます。

セレウス菌食中毒はどのように防ぐ?

小分けにした惣菜-写真

セレウス菌食中毒は、菌がある程度の数まで増殖しないと発生しないので、食品中での菌の増殖を抑えることが重要となります。

  • 食材はよく洗浄して使う
  • 料理や食事の前、トイレの後などは手をよく洗う
  • 加熱前の下ごしらえ済みの食品は、長時間の放置を避けて冷蔵(10℃以下)で保管する
  • 加熱後の食品を保管する場合も冷蔵する(10℃以下)
  • 調理した食品はすぐに食べる(調理後から食べるまでの時間を短くすることが大切)
  • 一度に大量の米飯や麺類を調理して作りおきはしない
  • 焼き飯やスパゲティなどを翌日再調理して食べない
  • 穀類が原料の食品は、調理後は保温庫(60℃以上)で保温するか、小分けして速やかに低温保存(5℃以下)する
  • 加熱前の生の食品と加熱後の食品が接触しないように気を付ける(包丁、まな板、皿などを別にするなどの工夫をする)

まとめ

土にいる細菌に由来する食中毒の予防は、食材に付いた菌を洗浄して除去する、調理後は直ぐに食べる、または適切な冷却保存することが大切です。食中毒菌の中には、熱に強い殻を作る菌もあるので、特徴を理解して食中毒を防ぐようにしましょう。