人は体内で酸素と二酸化炭素を交換して生きています。その交換を邪魔してしまうのが一酸化炭素です。一酸化炭素中毒になってしまうと全身に症状があらわれ、ひどい場合は死につながります。今回は一酸化炭素がどういったものなのか、具体的に中毒になるとあらわれる症状などについて詳しく紹介していきます。
一酸化炭素はどうやって発生するの?
一酸化炭素は、炭素(石油や石炭などに含まれる原子)が不完全燃焼を起こしたときに生じる気体です。一酸化炭素は無色、無臭、無刺激の気体であるため、日常生活の中で判別することができません。
炭素(C)が燃えたとき、周囲に十分な量の酸素(O2)があれば、二酸化炭素(CO2)が発生します。しかし、酸素が不足しているような状況では1つの炭素原子に1つの酸素原子しか結びつかないため、一酸化炭素(CO)が発生します。これを炭素の不完全燃焼と呼びます。
一酸化炭素が人体に影響を及ぼすメカニズム
呼吸によって体内に取り入れた酸素は、肺に入ります。そして中を走っている毛細血管との間で酸素と二酸化炭素を交換しています。
このとき、酸素を受け取る働きをしているのがヘモグロビンです。ヘモグロビンは赤血球の中に存在しています。
酸素を豊富に含んだ血液は全身を巡りながら、体の中の臓器に酸素を渡し、二酸化炭素をもらってまた肺へと戻っていきます。
ヘモグロビンは酸素を全身に届ける役割を持っています。一報で一酸化炭素は酸素が足りていない状態なので、酸素と強く結びつく作用があります。
一酸化炭素が体内に侵入すると積極的に酸素と結合しますが、その力はヘモグロビンの200~300倍にも及ぶといわれています(東京ガスより)。
一酸化炭素は一度結合した酸素を手放そうとはしません。そのため全身の臓器に酸素が行き渡らなくなり、人体に悪影響を及ぼすのです。
どういった症状が現れるのか

急性期
初期の症状は頭痛や吐き気、めまい、不快感、息切れなどがあり、風邪や胃腸炎などと似たような症状が出てきます。目がチカチカする、見えづらいなどの視力障害も出る場合があります。
進行してしまう初期症状の悪化に加え、徐脈(脈が遅い)、徐呼吸(呼吸回数が減る)、顔面の紅潮、発汗、耳鳴りのほか、注意力や思考力の低下、運動失調(身体が思うように動かない)、幻覚などが生じます。
さらにひどくなるとけいれんや失禁、不整脈、ショック(血圧の低下により意識が保てない状態)、呼吸不全などに陥ります。最悪の場合は死に至ります。
一酸化炭素が症状をもたらす力は非常に強いです。例えば空気中の一酸化炭素濃度が0.16%になると、20分後には頭痛やめまい、吐き気が生じ、2時間で死に至ります。0.32%になると、5分後には頭痛やめまいが生じ、30分で死に至ります。さらに、1.28%では1~3分で死に至ります(東京ガスより)。
慢性期
急性期の状態を抜け出して一度は症状が改善しても、およそ2日後に神経障害がみられることがあります。
脳や神経は一度傷ついてしまうと再生するのは難しいです。その結果、慢性的な頭痛や学習・記憶障害などが起こりやすいといわれています。また知能低下や意識障害、抑うつのほか、怒りっぽくなったり攻撃的になったりする場合があります。
日常生活で注意すべき点は?
家庭では冬に使用するストーブや火鉢が原因となって一酸化炭素中毒が起きやすくなります。ただ季節に関わらず、コンロや給湯器などを使用するときは注意しなければなりません。
また地下室や閉じられた場所での作業するときに、ガソリンを燃やして動く機器を使っていたときに中毒になる例も報告されています。
もしガスや暖房器具の使用中に頭痛や吐き気など一酸化炭素中毒が疑われる症状がみられた場合は、換気してすぐに新鮮な空気を吸ってください。ガスあるいは暖房器具などの電源を切りましょう。症状が強い場合には迷わず救急車を呼びます。
また最近では不完全燃焼を防ぐ機能を備えたガス機器が販売されたり、ガス漏れ警報器の設置なども行われています。これらに対応した製品の購入、買い替えも有効な手段の一つです。
まとめ
一酸化炭素は体内に必要な酸素を奪ってしまう危険な存在です。ガスや暖房機器を適切に使用しないと、誰もが一酸化炭素中毒を発症するリスクがあります。換気など注意事項をしっかり守れば防げるので、機器を使うときは常に意識しましょう。
また使用中に頭痛などの症状が現れたら、一酸化炭素中毒を疑って病院を受診してください。