開腹手術というものはそれほど頻繁に受ける機会のないもので、いざ自分や、自分の周りの人が手術を受けるとなると、何を気をつけたら良いのか、わからないことが多いのではないかと思います。
今回は開腹手術を受けるにあたって、また、受けた後にどのようなことに気をつければよいのかを見ていきましょう。

目次

手術前、手術後の目標

はじめに、手術にあたってどんなことを目標にしたらよいかを考えてみましょう。

まず手術の前には、万全の状態で手術に臨めるようにすることが第一の目標となります。つまり、手術を受けることが決まったその日から、身の回りの準備だけでなく、体調管理手術後への備えが必要となるのです。

一方で手術の後では、合併症(手術によって新たに引き起こされる病気)を予防し、一刻も早く回復することが主な目標になります。最も大切なのは医師の指示に従うことですが、自分で気をつけられることもあるのです。

では、これらの目標のために、実際にどんなことに気を付けるべきなのでしょうか。

手術前に気を付けること

自分の受ける手術内容について把握しておく

まず何よりも大事なのは、自分の受ける手術についてよく医師の話を聞き、理解しておくということです。手術についてしっかり理解をしておけば、準備をスムーズに実行することができますし、安心して治療を受けることにも繋がります。

もし、分からないことや不安に思うことがあるのであれば、ためらわずに医師に聞くことも大切です。

使っている薬の確認

手術内容の理解に加えて、手術前に使っている薬がある場合はきちんと担当の医師か薬剤師に伝えなければなりません。お薬手帳があればそれを渡すのが一番ですし、なければ普段飲む薬をそのまま持参して見せるのも一つの手でしょう。

飲んでいる薬の種類によっては、手術の準備、方法やそのあとのケアの仕方が変わってくる可能性もあるので、しっかり過不足なく伝えられるようにしましょう。

体を清潔に保つ

手術を受けるにあたって、意外と大切なのが体を清潔に保っておくということです。開腹手術の前には医師による消毒がもちろん行われますが、少しでもリスクを減らすという意味で体を清潔に保っておくというのは大切となります。毎日体を拭くだけでもだいぶ違いますから、医師に確認をとって許可が出たらやってみましょう。

タバコは吸わない

タバコは体の抵抗力を弱めてしまうだけでなく、手術後の肺の合併症(手術などに関連しておこる病気)を引き起こす可能性を高めてしまうため、あまり望ましくありません。少なくとも手術をうける一か月前には禁煙を始めることが推奨されています。

糖尿病のコントロールをする

もし糖尿病がありその治療を行っている場合、医師とよく相談して普段以上に血糖値のコントロールを行わなくてはなりません。タバコと同様、糖尿病で血糖値が高くなってしまうと様々な合併症が引き起こされやすくなり、手術後の回復が遅くなってしまいます。

リハビリテーションを行う

リハビリは手術後に行うのはもちろんですが、手術前の準備として行うことも有効とされています。

がうまく出せないと肺炎に繋がったり、ずっと寝たきりでいると肺塞栓症(肺の血管が詰まってしまい、呼吸困難を引き起こす)になってしまたりといったリスクが高く、そうならないための訓練が非常に重要になります。

手術前であっても、手術後の寝たきりの状態を想定し、痰の出し方や歩き方の練習を行ったり、肺炎や無気肺(空気が通らず肺が潰れてしまう)などを引き起こさないよう呼吸訓練などをあらかじめ行ったりすることで、手術後のリハビリや回復がスムーズに行えるようにします。

特に開腹手術では、痰が出せずに肺炎になるリスクや、無気肺を引き起こすリスクが高いため、あらかじめ十分な訓練を行っておくことは大切でしょう。

その他に、しばらく安静状態を続けた後でもすぐに動けるようある程度の筋肉をつけておくことも有効であるため、手術前に軽い運動や筋トレを行っておくのも良いでしょう。

手術後に気を付けること

医師と患者-写真

転倒に十分気をつける

手術後は、麻酔の影響や筋力の低下により非常に転倒しやすくなっているため、十分に注意しなくてはなりません。特に手術直後は無理に動こうとせず、どうしても動きたいときは、補助ができる人が近くにいる状況を作ってから動く方が望ましいです。

体を清潔に保つ

手術を受ける前にも大切なことですが、手術後であっても、体を清潔に保っておくということは大切です。手術後は傷跡が残っており、体の抵抗力も落ちているので、感染の機会を少しでも少なくすることが早い回復へと繋がるのです。こちらも、医師に確認をとって行ってください。

リハビリテーションを行う

先ほども述べた通り、肺炎肺塞栓症になるリスクを減らすために、早いうちから運動を行うことが大切です。

手術前に行った痰の出し方や歩き方を実際に行ったり、肺炎や無気肺(空気が通らず肺が潰れてしまう)などを引き起こさないよう呼吸訓練などを実行して、手術後のリハビリや回復がスムーズに行えるようにします。

転倒に気を付ける、という項とやや矛盾しているように感じられるかもしれませんが、動けるようになったら、なるべく早く動き始めることが大切です。

無理をするのはよくありませんが、動けるのに寝たままの状態でいると、合併症によって状態が悪化するリスクがどんどんと高まってしまいますので、手術後一日を目安に、医師などの指示に従って体を少しでも動かせるようにしましょう。

おわりに

今回は開腹手術の前後で気を付けるべきことについてご紹介しましたが、基本的には担当の医師の話をよく聞くことが大切です。自分にできることをやったうえで、分からなかったり、不安に思ったりすることがあれば、ためらわずに担当医に相談するようにしましょう。