「白黄色の痰が出た」「茶色っぽい痰が出た」「ねばねばした痰が出た」…痰が止まらない時に痰の色や状態が気になったことはありませんか?痰には、8つの色のパターンがあり、その色によって、病気の原因が違ってきます。症状が回復傾向にある場合は自然治癒を待っても良いですが、咳をともなう痰が3週間以上続く場合は、原因をつきとめ、治療を受けることをおすすめします。
本記事ではそもそもの痰のメカニズムから、色による病気の違いを紹介します。

目次

痰(たん)とは

空気の通り道である気道の粘膜は、細胞から出てくる「気道分泌物」が表面を覆っています。通常は、この分泌物は、ごく少量で無意識のうちに飲み込まれています。ところが、細菌やウイルスによる感染が起こると、「気道分泌物」が増加し、死んだ細菌やウイルスを含んだ粘り気の強い分泌物となります。これが「痰(たん)」となります。

痰が出る原因性状別

痰は、病気の原因によって、痰の色が違ってきます。痰が止まらないという方は、一度自分の痰の色を見て、どのような色なのかを確認し、下記の表を参考に判断してみてください。

性状 考えられる病気
膿性 白黄色
~淡黄色
急性気管支炎
急性肺炎
緑色 びまん性汎細気管支炎
慢性気管支炎
気管支拡張症の増悪
さび色 肺炎球菌性肺炎
肺膿瘍
肺化膿症
粘液性 透明
~白色
非細菌性感染症
COPD
泡沫性 ピンク色 肺水腫
漿液性 透明
~白色
肺胞上皮がん
気管支喘息
血痰 茶色、
暗赤色
肺がん
気管支拡張症
肺結核症
肺真菌症
肺梗塞
喀血 赤色 肺出血
気管大動脈瘻

膿性の痰:白黄色~淡黄色、緑色、さび色

細菌や細胞成分(白血球、上皮細胞など)が混入すると、黄色や緑色などの膿混じりの痰が出ます。

最もよく見られる白黄色~淡黄色の痰は、細菌感染症によって生じます。一方、より濃い色(緑色)の痰は、緑膿菌などが産出する色素によってみられ、古い膿を含んでいると考えられます。
さび色の痰は、膿に少量の血液が混じったときにみられるものです。肺炎球菌が関係していることが多く、腫瘍や肺膿瘍の組織破壊物が含まれる場合もあります。

粘液性の痰:透明~白色

肺の粘膜にある杯細胞(さかずきさいぼう)や気管支腺などからの分泌物が過剰になると、ネバネバした粘液性の痰が出ます。これは、細菌以外(ウイルスなど)の感染によってみられることが多いです。

泡沫性の痰:ピンク色

泡を含んだピンク色の痰は、肺循環のうっ血によってみられます。肺水腫などで毛細血管から血液中の水分が漏れ出すと、肺胞の空気と混ざって泡が生じます。

漿液性の痰:透明~白色

さらさらとして無色の、水のような形状の痰がみられた場合は、毛細血管の透過性亢進が原因となっていると考えられます。

通常の血管では、血管の壁を透過するのは水分や分子の小さな物質だけです。しかし様々な原因で、タンパク質などの分子の大きな物質も血管の壁を透過してしまうことがあります。この状態を透過性亢進といいます。

透過性亢進によって起こる漿液性の痰は、肺胞上皮がん気管支喘息などでみられます。

血痰:茶色、暗赤色

文字通り、血の混じった痰が血痰です。肺血管の破綻によって気道内に出血した際にみられます。

血線を引いている(糸状に血が混じっている)痰の場合、喉からの出血であることが多いです。一方、全体として赤い痰が出たら肺からの出血を疑います。

肺がん気管支拡張症をはじめ、様々な病気が考えられるので、血痰がみられた場合は早急に呼吸器内科を受診してください。

喀血:赤色

血液そのものを咳とともに吐き出した場合喀血と呼び、血痰と区別します。1回の喀出血液量が2ml以上の場合をいいます。

肺出血をはじめ重大な原因が考えられるほか、大量に喀血した場合は窒息を起こしてしまうこともあります。ただちに病院を受診してください。

咳と痰の関係

咳き込む男性

痰の様子や咳の続く期間で、ある程度病気がわかる

痰をともなう咳を湿性咳嗽(しっせいがいそう)、痰が出ない咳を乾性咳嗽(かんせいがいそう)といいます。痰の有無により、原因となっている病気をある程度特定することができます。

湿性咳嗽と乾性咳嗽のどちらであれ、咳が続く期間が3週間以内の場合は、感染性の病気が疑われます。3週間以上、特に8週間を超えて咳が続く場合は、原因の多くは非感染性の病気が考えられます。

急に痰がともなう咳が出るときは、細菌性肺炎、気管支炎などが疑われ、慢性的に痰がからむ咳が出る状態の場合は、肺結核症COPD、肺水腫、肺がん、気管支拡張症などの病気が考えられます。

市販薬(OTC医薬品)を試してみる

安静にしていても症状が改善しない場合、市販薬を試してみるのも一案です。ただし、上にもあるように3週間以上咳が続く場合は肺の病気である可能性が考えられますので、その場合はできるだけ早く呼吸器内科を受診するようにしてください。

病院へ行くべきなのはどんな時?

下記のような咳や痰がみられた場合は、早めに呼吸器内科医に相談してください。

  • 咳や痰が2週間以上続く
  • 血痰・喀血がみられた
  • 色の濃い痰が出る
  • 粘り気の強い痰が出る

まとめ

痰がからむ咳が続くときは、苦しいものです。自然に回復していると感じるときは良いですが、長期間続き、痰の色が緑色やさび色の時、あるいは血が混じっている時には注意が必要です。近くの呼吸器内科がある医療機関を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。