MRI検査についてきいたことがありますか? 最近では、MRIが大学などの特殊な施設だけではなく、一般病院や画像診断クリニックで受けられるようになり、普段はあまり病院にかからない方々にもよく知られるようになりました。検査数も近年増加傾向にあり、何度かお受けになったことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。一方で、MRI検査が具体的にどんな検査なのかは意外と知られておらず、CTと混同されることもあるようです。今回は、放射線診断専門医として日々MRIを読影する筆者が、MRI検査についてちょっと詳しくお話させていただきます。

目次

MRI検査とは?CTとの違いについても

MRIとは、Magnetic Resonance Imagingの略で、磁石を使用して画像を撮影する検査です。磁石を使うところが、放射線をあてて画像を撮影するCTとの最も大きな違いになります。MRI、CTいずれの場合でも、寝台に寝そべり、大きな筒の中に入って検査が行われる点で共通しており、機械の外見上も比較的よく似ています。しかし、検査中ほとんど音のしないCTと異なり、大きな音がするので、ヘッドホンをしながら検査をするのが一般的です。

MRIは、磁場を生じさせることで、体内の水素分子の状態や密度を画像化しています。人間の体の70%は水でできていますが、水には水素分子が多く含まれています。また、人体に含まれる脂肪にも、水素分子が含まれています。MRIの機械で磁場を作り出し、水素分子を一定の方向に向かせ、それからパルス状の電磁波を与えて、励起(れいき)させます。パルスをあてるのをやめると、水素分子は徐々にもとの状態に戻っていきますが、もとの状態に戻るまでに電波を放出し、これを信号化し、得られた信号をフーリエ変換することで、画像化しています。

これに対してCTは、レントゲン写真などと同じように、人体に放射線をあて、放射線がどのくらい吸収されるかで白、黒、グレーなどの色の違いが出てきます。このように両者は、根本的な仕組みが違う、全くべつの検査なのですね。

MRIの磁力の強さ

磁力の強さは、T(テスラ)という値で表されます。現在では、1.5Tが標準的にどこの施設でも置かれている機械です。古い機械では、0.8Tなどのものもあります。近年では、徐々に、3TのMRIが増えてきて、ここ2-3年ほどで多くの施設に設置されるようになりました。磁力が高くなることにより、信号雑音比(S/N比)が向上するのでより解像度の高い画像が得られるようになりました。撮像時間の短縮もできるようになっています。

磁力が強くなって注意しなければならないのは、体内に金属が入っている場合です。あとで書いていますが、手術などで入った体内金属にはMRI対応のものが多く見られますが、1.5Tには対応していても、3Tには対応していないという場合があります。そういった場合には、やけどなどの副作用がでることがあり、検査ができません。

MRI画像の種類について

MRI-写真
MRIの特徴のひとつに、いくつか異なった種類の画像が撮像できるということが挙げられます。与えるパルスの種類や磁場のかけ方を変えると、作り出される画像も異なってきます。わたしたち画像診断医は、異なった種類の画像を見ることで、患者さんの体の中で何が起こっているのかを突き止めます。スピンエコー法といわれる、基本的な撮像方法では、90度パルスと180度パルスをかけ、パルスを与える間隔をTR(繰り返し時間)90度パルスから180度パルスまでの間をTE(エコー時間)と呼んでいます。

スピンエコーで得られる画像には、以下のような画像の種類があります。

T1強調画像

TRとTEを短くしたときに得られる画像です。下に述べるT2強調画像とともに、最も日常臨床でよく使われる撮像方法です。特徴としては、水が黒く描出されること、出血が白く検出されることなどがあります。脂肪も白くなります。

T2強調画像

TRとTEを長くした時に得られる画像です。水は白く描出されます。癌や炎症なども、水分を比較的多く含んでいることが多いので白っぽくなることが多いです。出血は、出血してからの時間経過により見え方が変わりますが、出血後ある程度時間が経ってから沈着するヘモジデリンという物質が黒く映ることはよく知られています。

スピンエコー法のほかに、よく使われる方法として、グラジエントエコー法というのがあります。これは、パルスを使う代わりに、傾斜磁場をかけてエコー信号を得て画像化する方法で、スピンエコー法よりも撮像にかかる時間が短いのが利点です。T1強調画像、T2強調画像を得ることができ、呼吸停止が必要な腹部の撮影のほか、以下の用途に使われています。

造影剤を注入するダイナミック撮影

造影剤を注入し、30秒後、60秒後、90秒後と時間経過を追って撮影する方法をダイナミック撮影といいます。肝臓癌や乳癌の診断で行われます。

T2*強調画像

出血がよく検出できる撮像法です。脳の微小な出血などを検出するのに役立ちます。

また、水分子の運動状態をみる方法にEPI法というのがあり、これを用いて、以下の拡散強調画像が撮影されます。

拡散強調画像

急性期の脳梗塞を診断するのに有用な方法です。癌の診断にも役に立ちます。

このように、いろいろな画像を用いることで診断を行います。また、MRIは様々な断面の画像を得ることができるのも特徴のひとつです(再構成技術の進歩により、最近ではCT でも様々な断面の画像を作り出すことが可能になっています)。

MRI検査でわかることは?

ができたり、出血をしたり、炎症がおきたりすると、その部分の水素分子の密度や動きやすさなどが周囲の正常組織と比べて変わってくるので、病変が描出されます。前にも述べましたように、癌や炎症はT2強調画像で白くなることが多いです。また、癌や膿瘍(細菌感染によってできた膿のかたまり)、時期にもよりますが出血などは拡散強調画像での信号が上がります。

また、筋肉や骨などの形態評価にもすぐれていて、椎間板ヘルニアや股関節、膝間接の病気なども診断が可能です。

血管や細い管などもよく見える!

実は、MRIでは、造影剤を使わなくても血管を描出することが可能です。Time of Flight法という方法を主に用いて行われ、MRA(MR Angiographyとよばれます。脳の動脈瘤や、血管閉塞を見るときによく使われます。人間ドックでもよく行われます。

また、肝臓と胆嚢、十二指腸を結ぶ管として総胆管とよばれる構造がありますが、このような細い管もMRIを使って描き出すことができます。MRCPと呼ばれる方法で、総胆管のほかに、膵臓のなかにある主膵管という管も描出できます。この方法は、胆管癌や胆管結石、膵炎や膵腫瘍を診断するときにも使われます

まとめ

ここまでMRIの特徴やCTとの違いについてご説明しました。

MRIによる体への影響が心配な方は、次回の記事「MRIの長所と短所。造影剤や検査で体に影響がでることはある?」も併せてご覧ください。