人間ドックというと「1日拘束される!」と思っている方も多いかと思いますが、実は多くの場合午前9時頃から開始され、所要時間は4~5時間です。そのため、プランによっては午後過ぎから外出することも可能といえます。ではいったいどのような流れなのでしょうか、また、受診の際は何に注意すればよいのでしょうか。
人間ドックの検査の流れ

検査の流れは各医院によって異なりますが、ここでは代表的な日帰りコースの流れについてご紹介します。
1.予約
各医院のホームページ、窓口、電話等などで予約が可能です。
2.書類送付
人間ドックを受けるにあたっての注意事項や、当日に必要な便採取の容器などが送られてきます。
3.検便回収問診票記入
当日、病院に行ったらまずは検便を提出します。便に血が混じっていないかを調べることで大腸がんやポリープ、痔などが発見できます。
その後、問診票を記入します。それが終わったら、いよいよ人間ドックスタートです。
4.尿検査血液検査
尿検査では、尿に含まれる物質を測定することで、腎炎、ネフローゼ、糖尿病や尿路感染症などを調べます。
また、血液検査からは、貧血、肝臓の異常、腎臓の異常、高脂血症、糖尿病などの可能性を調べます。
5.身体測定
身長・体重・血圧・体脂肪率やBMIなど基本的な身体の情報を集めます。メタボリックシンドロームの判定もここで行われます。
6.聴力検査
低音~高音領域の聞こえを調べ、難聴かどうかを調べます。一般的に加齢に伴い、高い音は聞こえにくくなってきます。
7.視力検査
近視の検査です。裸眼もしくは眼鏡やコンタクトレンズをつけた視力が0.7以上あれば日常生活に支障はありません。
8.眼底検査眼圧検査
眼底検査は、目の奥にある眼底を観察することで、眼の病気だけでなく高血圧や動脈硬化の程度、糖尿病などが診断できます。
眼圧検査は角膜の表面に空気を吹き付ける空気眼圧計で測定します。眼圧が高いと緑内障の可能性があります。
9.内科診察
医師による内科診察を行います。血液検査やX線検査では見つけにくい心臓弁膜症などの病気を視診、触診、聴診器による聴診などで調べます。
10.心電図
心臓の筋肉(心筋)は、血液を送り出すときに縮んで(収縮して)電気的活動が起こります。この電気的活動を記録したものが心電図です。心臓の血管の異常(狭心症・心筋梗塞・冠動脈硬化)、心臓内の電気の伝導異常、不整脈などがわかります。
11.腹部超音波検査
超音波を発する機械を腹部にあてて、肝臓・胆のう・膵臓・脾臓・腎臓・大動脈などの検査をします。臓器の形や大きさ・腫瘤や結石などの存在がわかります。人間ドックで見つかりやすい病気は脂肪肝、肝嚢胞、肝血管腫、胆石、胆のうポリープ、腎結石、腎嚢胞などです。
12.胸部X線検査
肺や心臓の異常をX線写真で観察して調べます。肺がんや結核などの肺の病気をはじめ、心臓の拡大・縦隔の異常などを発見するために行われます。
13.肺機能検査
機械に息を吹き込んで肺の呼吸機能をみます。肺活量や気管支の状態、また、喘息やその他の肺の疾患を調べます。
14.上部消化管X線造影/上部消化管内視鏡検査
上部消化管の様子をみるために、上記2つの検査のうちのどちらか片方を受けます。
消化管の内部は観察しにくいので、造影剤のバリウムを飲んで胃の中を撮影することで食道・胃・十二指腸の形を写し出します。食道・胃・十二指腸の膨らみ具合や変形・病変の有無を評価します。
上部消化管内視鏡検査は、胃カメラを使って上部消化管(食道・胃・十二指腸の一部)の内部を直接観察し、撮影する検査です。内臓の形や色をみるだけでなく、必要に応じて組織を採取して顕微鏡でみることで確実な診断が可能となっています。
15.オプション検査(希望者のみ)
上記の検査に加えて、希望者はより精密な検査を受けられます。各医院によってその内容は異なるので、気になる方はまず病院に問い合わせてみましょう。
16.医師による結果説明
検査がすべて終わったら、その結果を踏まえて医師からの説明があります。もし不安なことや気になることがあればここで聞いてしまいましょう。
17.結果表送付
総合的な判定結果表が送付されます。
その結果さらに精密検査や治療が必要な方は、精密検査依頼書(紹介状)でお知らせします。
このほかに1泊2日や2泊3日でじっくり検査するコースなどもあります。こちらは、時間はかかりますがその分精密に検査でき、また、食事や宿泊施設などが豪華なことも多いです。
検査の際の注意
受診前日まで
- 原則として、前日の午後9時以降および当日はお食事や飲み物をとってはいけません。飲酒・喫煙も同じです。
- 前日の夕食は、油物は避けて、消化のいい食事をとるようにしてください。
- 胃カメラを受ける方は、2~3日前から消化に良い食事をとってください。
- 検査前日の午後9時から検査終了まで全く食事ができないため、糖尿病治療中の方は低血糖症状が出る危険性があります。人間ドックお申し込みの際に、血糖降下剤やインスリンの休薬について医師にご確認ください。
受診当日
- 朝はお食事・お飲み物を一切とらずに病院へ行きましょう(水については医院で扱いが異なるので、検査を受診予定の医院にお問い合わせください)。
- 検査で具合が悪くなったことがある方は、事前にその旨を報告しましょう
- 女性の方は、生理予定日を避けて受診の予約をしましょう。もし生理になってしまった場合は、日程の変更をしましょう。
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方は事前にその旨を伝えてください。
- お薬を常用されている方は事前にその旨を伝えてください。
- ネックレス等の貴金属製品はできるだけ身に着けずに行きましょう(検査の際にはアクセサリーなどの金属類は外します)。
その他の注意
- 上部消化管X線造影検査を受ける方で、以前または最近、緑内障、前立腺肥大、心臓の病気、甲状腺の病気を指摘されたことがある方は医師に伝えましょう。
- 子宮頸がん検診を希望する方は、生理開始日~終了後2日間は検査に適さないため、それ以外の日を選んでください。
検査の一部を受けられない方とその検査(各医院によって異なるため、詳しくはお問い合わせください)
- 妊娠中の方、妊娠の可能性のある方(放射線関連と内視鏡検査)
- 授乳中の方(マンモグラフィー、また断乳が必要です)
- 心臓ペースメーカーや植え込み型除細動器を装着している方(体脂肪測定・脳ドック・頭部MRI)
- 豊胸手術をされた方(マンモグラフィー・乳腺X線検査)
- 人工内耳・中耳を装着している方(MRI)
- アートメイクや入れ墨をしている方(MRI)
- 抗凝固薬・抗血小板薬を服用している方(内視鏡検査)
- 人工関節や脳動脈クリップおよび外科用ステントなど、金属が体内にある方(MRI)
- 金属製の避妊リングを装着している方(MRI)
このほか、持病があったり薬を服用したりしている場合には、事前に医師に相談しましょう。
人間ドックに持っていくもの
- 保険証
- 2日分の検便(詳しくは各クリニックにお聞きください)
- 眼鏡
- コンタクトレンズとケース、保存液
- 服用中のお薬またはお薬手帳
まとめ
健康診断よりも結果が詳細な人間ドックは、受ける検査の数や気を付けなければいけないことも多いようです。正確な検査結果を出すためにも「面倒くさいなあ」なんて思わずに、人間ドックを万全の態勢で受けられるようしっかりと準備しましょう。