男の子が下腹部や陰嚢(いんのう、いわゆるフクロ)付近を痛がったり、吐き気を訴えたりする場合は精巣捻転が起きている可能性があります。精巣捻転は症状が出てから早急に治療しないと、精巣の機能障害を起こし精子をうまく作ることができなくなってしまいます。今回は精巣捻転について詳しく紹介していきます。
精巣捻転とは
精巣捻転とは、精巣(睾丸、いわゆるタマ)が回転することで、精巣に繋がっている精巣への血管、精子の通路である精管の束である精索(せいさく)が捻じれてしまう病気です。片側にみられることが多いです。
精索が捻れると血液が精巣まで届かず、痛みや腫脹(身体の組織の一部が炎症などによって腫れ上がること)を伴い、早期に治療をしないと精巣が壊死してしまいます。早めに対処しないと障害を受けた側の精巣は機能が損なわれ、摘出しなければならなくなります。
発症しやすい時期・症状
時期
原因としては、精巣鞘膜(精巣の前面を覆っていて、精巣が動き過ぎないよう固定しているもの)および精索の発生異常によって、精巣鞘膜への精巣の固定が不完全(bell-clapper変形)になることで引き起こされるといわれています。
若い男性であればどの年代でも起こる可能性はありますが、精巣捻転が特にみられるのは思春期前後(14~18歳)、次いで新生児です。
新生児の場合、胎児のときに精巣捻転が起きていて、産まれたときには既に精巣が壊死してしまっているケースもあります。
症状
いきなり発生する非常に強い陰嚢や下腹部の痛み、吐き気、嘔吐があります。幼児で発症した場合は、自身の症状をうまく伝えられない場合もあるので、注意が必要です。
症状が現れる時間帯は深夜から早朝と、睡眠中に起こることが多いです。一旦症状が治まるケースもあるので注意が必要です。発熱や、おしっこをするときに痛みが起こるなど下部尿路症はあまりみられません。
鑑別が必要な他の病気・病態
精巣捻転と似た陰嚢が痛む症状は、いくつかの病気でみられますが、代表的なものは以下の2つです。検査でどの病気か判断しますが、精巣捻転の可能性が否定できない場合は一刻も早い治療が必要になるので、まず手術を優先することがあります。
急性精巣上体炎
精巣の横にある精巣上体が炎症を起こす病気です。精巣の血流は正常で、精巣上体の血流は増加しています。また精巣上体の腫大があり、痛みを伴います。こちらは精巣捻転と違って発熱や下部尿路症状を伴うことがしばしばあります。血液検査で炎症反応が上がっていることが判断材料になります。
精巣垂(精巣上体垂)捻転
精巣や精巣上体の横にある2、3ミリメートルの小さな突起が捻じれる病気です。痛み方や触診での判断は難しく、手術にて確認されるケースもあります。
鼠径ヘルニア
子供の場合は胎内で成長する過程で陰部から後退するはずの腹膜が、生まれつき残ってしまう(遺残)ことがあります。いわゆる脱腸した状態で、この残った腹膜はその形から腹膜鞘状突起と呼ばれます。陰嚢の痛みとして現れることがあります。
病院で行う検査
触診・問診
触診では精巣が大きくなっていないか(腫張、腫大)、押して痛みは強くなるか(圧痛)などを調べます。
痛みが始まってすぐは陰嚢の腫れはみられませんが、時間が経つとともに陰嚢が腫れて大きくなっていきます。陰嚢を持ち上げると痛みが増します(プレーン徴候陽性)。
超音波検査(エコー)
血液の動きを調べるカラードップラーを用いて、精巣へ血液が流れているかを確認します。精巣捻転の場合は精索が捻じれて血流が途絶えてしまっているため、血流を確認することができません。また精索の肥厚(太くなっている)などの特徴もあります。
治療法
精巣捻転の治療は、基本的に手術で陰嚢を切開し精索の捻じれを戻し、精巣の血流を改善させ、再度捻じれないように精巣を固定します。長時間経過し、壊死した精巣の血流の改善が得られない場合は摘出します。
できる限り精巣を温存することを目指し、症状が出てから6~8時間以内であれば、精巣を温存できる確率は高くなります。壊死しているようであれば、精巣は取り除かれることが多いです。
片側で発生していた場合でも、将来的に精巣捻転を起こす可能性を考慮して反対側も固定します。
まとめ
精巣捻転は発症から治療までの時間をいかに短くできるかが、非常に重要になってくる病気です。子供が陰嚢や下腹部の痛みを訴えたときは、すぐに病院を受診しましょう。男の子を持つ保護者はあらかじめ知識を持っておくことをお勧めします。