性器に痛みが出る原因には性感染症や包茎、加齢やストレスなどさまざまです。中には不妊につながるものや、緊急で手術を行うものもあるため病気を知っておくことは非常に大切です。今回は男性の陰茎や精巣(睾丸)が痛む場合に考えられる病気を紹介していきます。
陰茎が痛む病気
尿道炎
尿道炎の原因となる代表的な細菌にクラミジアや淋菌があります。またどちらでもない細菌が原因となって起きる場合は非淋菌性非クラミジア性尿道炎といいます。男性は比較的症状が現れやすいことで知られています。
感染する原因のほとんどは性行為です。症状がある場合は、クラミジア感染では、排尿時に染みるような痛みが生じ、白やクリーム色の膿が少し分泌されます。淋菌感染は症状が強く、排尿時に焼けるような強い痛みと黄色い膿が分泌されます。いずれも治療せずに放置すると、炎症によって精管が狭くなって精子が通過できなくなることで不妊の原因にもなります。
非淋菌性非クラミジア性尿道炎は少し痛みと分泌液が出てきます。慢性化するか小さなしこりが外側の尿道口にできることもあります。また、前立腺炎を併発する可能性もあります。どの細菌が原因でも抗菌薬で治療していきます。
性器ヘルペス
原因は単純ヘルペスウイルスの感染で、性感染症の1つです。かゆみのような違和感が生じた後、痛みとともに性器に水ぶくれが現れてきます。水ぶくれが破れるとさらに強い痛みが現れ、排尿や歩行に支障をきたすことがあります。
抗ウイルス薬で治療していきます。ただ一度感染すると、ストレスや疲労で体力が落ちたときに再発を繰り返します。
亀頭包皮炎
亀頭とそれを覆う包皮の間には、垢が溜まりやすいです。不潔な状態が続くことで細菌が繁殖し、亀頭と包皮に炎症を起こす病気を亀頭包皮炎といいます。主な原因は包茎です。症状は亀頭が赤く腫れ、亀頭の表面に痛みが生じます。また、黄色い膿が分泌されることで下着が汚れることもあります。
抗菌薬を飲んだり塗ったりして治します。日頃より皮を剥いて垢を取り除くなど、清潔な状態を保っていきます。
ベーチェット病
ベーチェット病は原因不明の病気で、難病に指定されている全身性炎症性疾患です。男性は陰嚢や陰茎、亀頭に痛みを伴う潰瘍(外陰部潰瘍)ができます。
このほか口腔内のアフタ性潰瘍、腕や足にしこりを伴う赤い発疹などが出る皮膚症状、痛みや充血、羞明(通常の光でも眩しく感じる)、失明といった眼の症状が知られています。関節炎や消化器症状(腹痛、下痢)、神経症状(麻痺、痺れ)を伴うこともあります。
外陰部の潰瘍には副腎ステロイド軟膏を塗ったり、清潔にしたりします。そのほかの症状にはそれぞれに合った治療をしていきます。
精巣(睾丸)が痛む病気

急性精巣炎(睾丸炎)・精巣上体炎
精巣で作られた精子は精巣上体という臓器を通過し、尿道へと分泌されます。通路として繋がっているため、尿道から細菌が入り込むと精巣や精巣上体に炎症が起こります。若い人の場合、原因はクラミジアや淋菌などの性感染症が多く、高齢者では大腸菌などの一般的な細菌が原因となります。
症状は精巣や精巣上体の部分的な激しい痛みから始まり、その後精巣全体に広がっていきます。赤く腫れ上がり、発熱を伴うこともあります。抗菌薬や抗ウイルス薬で治します。睾丸を冷やすと痛みが和らぎます。
またムンプスウイルス感染による流行性耳下腺炎(おたふく風邪)にかかった場合、精巣炎を伴うことが知られています。炎症が長期化したり、両側に起こってしまうと不妊の原因にもなったりするため注意が必要です。
精巣捻転症
身体の中で精巣(睾丸)が捻じれてしまうことで、精巣に向かう血管や精管(精子の通り道)が閉じてしまう病気です。学童期の子供に生じやすく、動いている時よりも睡眠時や明け方に発症することが多いといわれています。症状としては、強い痛みと精嚢の腫れ、嘔吐などがみられます。
治療には手術が必要で、発症してから6~8時間に捻じれを解かないと、精巣が壊死してしまいます。血管の捻じれによって精巣への血流が途絶えてしまうため、手術までの時間が長いほど妊孕性(にんようせい:妊娠させる能力)が低下していきます。
まとめ
性器の痛みだけでも日常生活に支障をきたしうるものですが、我慢して治療が遅れると精巣の壊死や不妊につながるものもあります。特に性感染症では、男性に比べると女性では症状が現れづらいため、気付かないまま感染が続いていることも珍しくありません。
パートナーへ感染を防ぐため、またうつされないためにも男性がしっかりとコンドームを着けることが予防の第一歩となります。