飲み会では、「とりあえずビール!」が未だに根強い定番です。いくら飲んでも平気な顔をしている人がいる一方で、ほんの少量のお酒を飲んだだけで気分が悪くなってしまう人もいますよね。練習をすれば飲めるようになる、なんて言う人もいますが、そもそもお酒を飲めないというのはどういう体質なのでしょうか。
お酒の強さを決める酵素「ALDH」
お酒を飲むと、アルコールは肝臓でアセトアルデヒドという物質に変わります。このアセトアルデヒドには毒性があり、悪酔いや二日酔いなどの原因となります。
アセトアルデヒドは、肝細胞中に存在するアルデヒド脱水素酵素(ALDH)という酵素によって、体に害を成さない酢酸に分解されます。血液によって全身をめぐった酢酸は、最終的に水と二酸化炭素に分解されます。
ALDHには、アセトアルデヒドの濃度が高くならないと働かないALDH1と、濃度が低い時に働くALDH2があります。ALDH2の働きが弱いと有害なアセトアルデヒドを分解できないため、少量のアルコールを摂取しただけで悪酔いしてしまうのです。
ALDH2には、さらに3つの型があります。
①活性型
活性型のALDH2は、アセトアルデヒドの分解を速く行うことができます。そのため、このタイプのALDH2を持つ人はお酒に強いといえます。
ただし、いくら強いと言っても、一気飲みをしたり大量にアルコールを摂取したりすると分解が追いつかず、急性アルコール中毒を引き起こすことがあるので注意しましょう。
②低活性型
低活性型は、代謝速度の遅いALDH2をさします。このALDH2を持つ人は、お酒に弱いタイプです。サッポロビールによると、日本人の37~38%は低活性型のALDH2を持っていると言われています。
③非活性型
非活性型のALDH2は、アセトアルデヒドの分解を全く行うことができません。日本人の6~7%が非活性型のALDH2を持ちます。つまり、低活性型と合わせると、日本人のおよそ半数は生まれつきお酒に弱いか全く飲めない体質であるということです。
このタイプの人が無理にお酒を飲んだ場合、食道がんのリスクが上がることが知られています。①のALDH2活性型の人たちと比べ、食道がんのリスクは3.4~16.4倍にもなるといいます(独立行政法人病院機構久里浜アルコール症センターより)。
あなたのALDH2はどのタイプ?
では、3種類のALDH2のうち、自分がどのタイプなのかを知るにはどうしたら良いのでしょうか?
ALDH2の型は遺伝によって決まり、後天的に変わることはありません。つまり、両親ともにお酒に弱ければ自分も弱いといえます。
このほか、エタノール・パッチテストでもお酒に強いかをある程度判別することができます。
方法は以下のとおりです。
- 消毒用アルコール(70%)をガーゼにしみこませる。
- 1のガーゼを上腕に7分間貼り、はがして10分後にその部分の皮膚の色の変化を見る。
皮膚が赤くなっていたらアルコールに弱い体質(アセトアルデヒドが分解されずに残っているため)、変化がなければアルコールに強い体質です。
「練習したら飲めるようになった」は要注意!
「もともとお酒を飲めない体質だったけれど、飲んでいるうちに平気になった」という話を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
実は、アセトアルデヒドはミクロゾームエタノール酸化酵素(MEOS)という酵素でもある程度分解されます。このMEOSは、鍛えることによってその力が強くなるのです。つまり、「お酒が飲めなかった人が練習していたら飲めるようになった」ということが起こりえます。
しかし、MEOSは数週間お酒をやめていると元の状態に戻ってしまいます。また、MEOSを使いすぎると肝障害を起こしやすくなるとも言われているため、お酒を飲めない体質の人が無理をして飲めるようになるのは非常に危険なことなのです。
まとめ
お酒を飲めない体質だと、「飲めるようになりたい!」と思うこともしばしばありますよね。ですがお酒の強さは遺伝的に決まっており、日本人はもともと半分近くがお酒に弱い体質なのです。そのため、無理をして飲むのは禁物です。また、お酒に強い人でも飲み過ぎは様々な病気につながることがあります。お酒とのつきあい方には、くれぐれも注意してくださいね。