お酒を飲んだあと、顔が赤くなったり、ドキドキと動悸がしたり、頭痛や吐き気を覚えたりしませんか?これらの症状はフラッシング反応と呼ばれており、飲酒によりフラッシング反応がみられる人は「お酒に弱い体質」です。
しかし、飲み続けていれば強くなるからといって、大量の飲酒を続けていませんか?
今回の記事では、お酒にもともと弱い体質だった人がお酒を控えた方がいい理由について解説します。
飲酒後の症状は、「フラッシング反応」かも?
フラッシング反応とはコップ1杯程度の少量のお酒で現れる不快な症状で、次のようなものがあります。
- 顔が赤くなる(からだの皮膚が赤くなることも)、顔が火照る
- 脈がドクドク、ドキドキする(動悸、頻脈)
- 眠くなる
- 頭痛
- からだがかゆくなる
- 気持ちが悪い(吐き気)
- 汗が出る
- 寒気がする(血圧低下)
このようなフラッシング反応があらわれる体質の人をフラッシャーといいます。いわゆる「お酒に弱い人」のことです。
フラッシング反応の原因
フラッシング反応の原因は、アルコール(エタノール)の代謝物であるアセトアルデヒドです。
体内に入ったアルコールは酵素のはたらきによって、段階を経て無毒化されます。第一段階ではアルコール脱水素酵素(ADH)によりアセトアルデヒドへ、第二段階ではアセトアルデヒドが2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって酢酸へと分解されます。
フラッシャーの方では、ALDH2のはたらきが弱い、あるいはまったくはたらきません。ALDH2が十分にはたらかないと飲酒のあと体内にアセトアルデヒドが溜まり、フラッシング反応を引き起こします。
ALDH2のはたらきの強さは遺伝子によって生まれつき決まっていますが、日本人の4割がこうした体質をもっています(専門医通信より)。酵素ALDH2について詳しくは、「アルコール分解酵素が少ない?お酒を飲めない体質って?」の記事で解説しています。
練習すれば、お酒は飲めるようになる?
しかし、中には「自分は飲んでいるうちにお酒に慣れた・強くなった」と言う人がいます。これには、アセトアルデヒドの分解を行うもうひとつの酵素「MEOS」と、アルコール耐性が関わっています。
MEOS(ミクロゾームエタノール酸化酵素)
MEOS(ミクロゾームエタノール酸化酵素)は、アセトアルデヒドの分解を補助的におこなっている酵素です。アセトアルデヒドのうち約8割はALDH2によって、残りはこのMEOSによって分解されます。MEOSは、お酒を習慣的に飲むことではたらきが亢進される酵素で、お酒に弱い人でも練習して飲めるようになるのはこのためです。
しかし、しばらくお酒を飲まない時期が続けば、酵素のはたらきは元に戻ります。
アルコール耐性
「酔い」を何度も経験することで、私たちの脳は酔いの状態に慣れていきます。「脳の慣れ」は刺激に対する反応性を低下させることで、脳を刺激によるストレスから守る防衛機能のひとつです。
酔いの状態に慣れることでアルコールへの感受性が低下すると、酔いによる不快な症状を感じにくくなります。これがアルコール耐性です。
「お酒に弱い体質」の人の健康リスク
このようにもともとお酒が飲めなくても、ある程度の量の飲酒ができるようになります。しかし、それでも「お酒に弱い体質」そのものが変わるわけではありません。飲酒後にアセトアルデヒドが体内に留まりやすいために、アセトアルデヒドにさらされる時間も長くなります。
お酒に弱い体質の人は強い人に比べると、食道がんをはじめとする消化管や頭頸部(のどなど)のがんのリスクが高いとされています。
また、少量のアルコールで高度のアルコール性肝障害の危険があるのも、ALDH2のはたらきが弱い人です。もともとアルコール性肝障害は、ALDH2の活性型高く大量のアルコール摂取が習慣となっている人に多い病気ですが、ALDH2のはたらきが弱い人は少ない飲酒量であっても、発症・悪化するケースがあるようです。
特に、ALDH2がまったくはたらかないタイプの人よりも、はたらきが弱く、練習するうちに飲酒できるようになったという人が危険であるとされています。飲酒をはじめた1~2年の間に飲酒後の顔面紅潮や頭痛などを感じていた場合は、もともとはお酒に弱い体質である可能性があることを留意しましょう。
まとめ
飲酒後に顔が赤くなったり、ドキドキしたりするといった「お酒に弱い」体質は、どんなにたくさんお酒を飲んでも変化するものではありません。また、無理な飲酒を続けた場合、お酒に強い体質の人に比べて、食道がんなどのリスクが高いといわれています。
飲酒後に、顔が火照る、頭痛や吐き気がするなどのフラッシング反応がみられる場合には、とくに飲酒量や飲酒習慣に気を配る必要があります。