動物に触れる機会の多い方は耳にしたことがあるかもしれない感染症です。四類感染症に分類されているもので、頻度としてもそれほど珍しいものではなく、誰でも接触する可能性のあるもので、重症化した場合には致命的になることもある感染症です。症状や予防対策など、知っておくとよいでしょう。

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原因は「レプトスピラ」という細菌

レプトスピラ症とは、レプトスピラと呼ばれる細菌に感染することが発症する病気です。レプトスピラ症が分類されている四類感染症は、「動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれのある感染症」と定義されており、動物から感染する病気であることがわかります。

レプトスピラはらせん状をしており、スピロヘータ目という細菌の仲間に分類されています。250以上の型があり、病原性でないものと病原性のものとが存在しますが、このうち症状の原因となるのは病原性のレプトスピラです。中性~弱酸性の淡水中や、湿った土の中で数ヶ月は生きることができると考えられています。

げっ歯類からの感染が多い

レプトスピラに感染している動物を介してヒトへの感染が起こります。哺乳類はほとんどすべての種類で感染する可能性があり、特にげっ歯類が高確率で保菌しています。ヒトへの接触が多い動物では、牛、鹿、豚、イノシシ、犬が宿主となっている場合があります。

菌は宿主である動物の腎臓に住みつき、尿と一緒に菌が体外に排出されます。この尿で汚染された土や水と接触することでヒトへ感染するのです。経口感染と経皮感染があり、「汚染されたものを口に入れた場合」「汚染された土や水に鼻や目の粘膜や、傷のある皮膚で触れた場合」などに感染します。ヒトからヒトへの感染はないとされています。

風邪に似た症状だが、放置すると悪化することも

潜伏期間は2~21日と、比較的幅があります(東京都感染症情報センターより)。発症後は、急な発熱や頭痛、関節痛といった、風邪のような症状が出ます。目の充血も症状のひとつです。そのまま治ってしまい、この感染症だとわからないこともありますが、放置して悪化するパターンもあります。

悪化した場合、黄疸や腎機能障害、出血傾向が見られるようになり、治療をしなければ死に至ることもあります。重症例のレプトスピラ症は特にワイル病と呼ばれています。

治療法について

軽度~中等度のものに対してはドキシサイクリンという抗生物質の内服が勧められます。重症の場合にはペニシリンでの治療となりますが、抗生物質により破壊された菌が原因となるショック症状が見られる場合があるため、投与後の症状への注意が必要となります。

予防法について

ヒトと犬に対しては使用できるワクチンが製造されていますが、4つの型への対応のみなので、型に合わないものへの予防効果は不明とされています。ほかでは、レストスピラの汚染のありそうな地域では川遊びなどの水に入る行為を避けること、水は飲まないこと、が予防となります。

レプトスピラ症は、世界中でみられる病気です

地球儀

世界的にみると、世界中のどこでも感染する可能性のあるものです。特に東南アジアや中南米などの熱帯~亜熱帯での大流行が見られます。そのため、海外旅行先で感染して日本に持ち帰るといった輸入感染例も近年報告されています。日本国内では、1970年代前半までは年間で50名以上の死亡例の報告がありました国立感染症研究所より)。近年では衛生環境が整ったことにより患者数は少なくなりました。ただし、報告がゼロになったわけではありません。特に沖縄では発生報告が多くされています。ごく最近では2015年7月だけで3例の報告があります(沖縄市より)。

まとめ

感染症は、ほとんど無症状のまま感染したことに気づかない場合もありますが、一方で、抵抗力が落ちている人や子供・お年寄りが罹ると重症化し、ときには死に至る場合があります。レプトスピラ症もそんな感染症のひとつです。こうした危険を少しでも減らすため、かからないための予防、感染拡大をさせないための対策が非常に重要です。