体がだるく発熱のほかに黄疸が起きた場合はどのような病気が考えられるでしょうか。黄疸は冬に旬を迎えるミカンの食べすぎなどでなる「柑皮症」とは異なります。今回は黄疸の仕組みなどについて説明したうえで、発熱と黄疸がみられたときに注意すべき病気を紹介していきます。

目次

発熱のメカニズム

細菌・ウイルスなどの病原菌が体内に侵入した場合、体の防御機能の働きとして、まずは熱を出して病原菌を退治しようとします。「発熱している=菌と戦っている」状態ですので、安易に解熱剤を使用してはいけません。発熱は体の中の異変を知らせる一つのサインと理解し、普段から自分の平熱を知っておきましょう。

黄疸のメカニズム

古くなった赤血球が破壊されるときに出てくる色素にビリルビンがあります。通常ビリルビンは腸管に流れていきますが、その通り道に石や腫瘍(しゅよう)、炎症が起きると行き場をなくし、結果として血液中に逆流します。逆流したビリルビンが血液中に増えると、皮膚や眼球の白い部分が黄色になっていきます。これが黄疸です。

同じく皮膚を黄色にする症状に柑皮症がありますが、柑皮症はみかんやカボチャなどカロテノイドを多く含む食品を食べ過ぎるとなる症状で、眼球が黄色になることはありません。

発熱と黄疸をきたす病気とは?

黄色いチューリップ-写真

発熱と黄疸をきたす病気には、急性の肝炎胆嚢炎(たんのうえん)に胆管炎、また膵臓がんなどがあります。

急性肝炎

急性肝炎は、短い期間で肝臓が肝炎ウイルスに感染したものです。同じく経過が短い薬物や肝炎以外のウイルス、アルコールによって起こる肝炎は当てはまりません。肝炎ウイルスにはA型、B型、C型、D型、E型の5種類があります。

初期症状は全身倦怠感食欲不振・発熱といった風邪のような症状で始まり、急性肝炎の判断は難しいです。そのときに黄疸がみられると、急性肝炎を疑います。血液検査を行うことで、さらにどの肝炎ウイルスに感染したのか調べられます。

C型肝炎以外は自然治癒しやすいですが、まれに劇症肝炎に移行することがあります。劇症肝炎は肝臓本来の機能が全く営むことができなくなり、高度の黄疸・発熱・出血傾向・肝性脳症・精神神経症状を起こします。その場合の致死率はかなり高く、血液透析を応用した人工肝補助装置や血漿(けっしょう)交換が行われますが、それでも肝機能の回復が難しい場合には肝移植を行うしかありません。

A型肝炎

汚染された水や食品(生の貝など)を介して感染します。劇症化はまれです。発症後、大部分が3~6カ月で治ります。

B型肝炎

血液またはその製剤が注射された場合や、汚染した針などを刺したり、薬物乱用者が感染することが多いです。また性交渉を通じてかかることがあります。A型肝炎と比べると慢性肝炎や肝硬変に進行する確率が高いです。多くは発症から3カ月程度で治ります。

輸血や針を変えないで行った予防接種や母子感染が原因に挙げられますが、現代では対策が取られています。また針刺し事故でも48時間以内にグロブリン注射を打つことで感染を防止できます。新生児に対してもグロブリン注射が行われ、効果が顕著に表れています。

C型肝炎

全ての年齢層で起こりえます。血液を介するほか、ピアスや入れ墨、覚せい剤などを使用した針性交渉による感染もあります。

無症状・無黄疸で進む場合があり、その約半数は慢性肝炎に移行します。長い年月をかけて肝硬変、肝がんとなり、最後は吐血、下血(血便が出る)、腹水が貯まるほか体が非常にかゆくなり、精神状態も悪くなって死に至ります。

最近では新薬(飲み薬)が開発され、ほぼ100%に近い患者のウイルスを消し去ることができます(東京医科歯科大学消化器内科より)。それ以外にインターフェロン(ウイルスの増殖を抑えるタンパク質)による治療がありますが、発熱全身の倦怠感関節痛脱毛うつ状態めまい痙攣などの副作用がみられることがあります。

D型肝炎

B型肝炎ウイルスと共存して存在し、D型肝炎ウイルスの診断は困難で正確な感染経路などの把握はできていません。B型肝炎が治れば、D型肝炎も治癒します。

E型肝炎

日本国内には存在しない肝炎ウイルスでしたが、2000年ごろから北海道を中心とした地域でE型肝炎ウイルスの集団感染が話題となりました。E型肝炎のワクチンなどは開発されておらず、発症した場合は対症療法となります。

約1カ月で治りますが、A型肝炎より劇症肝炎を発症するリスクが高くなります。妊婦が感染した場合の致死率は20%に及ぶこともあります国立感染症研究所より)。

急性胆嚢炎(たんのうえん)

急性胆嚢炎の95%に胆石がみられますメルクマニュアル|胆嚢炎より)。右上の腹部が痛み、発熱や吐き気、嘔吐の他、黄疸がみられる場合があります。局所に圧痛と腹部の緊満があり、超音波検査で診断してもらい、痛みや炎症がおさまってから胆嚢摘出術が行われます。

急性胆管炎

胆管内に結石や悪性の腫瘍があると胆管に炎症が起こります。腹部の痛みや発熱、黄疸がみられます。さらにショック症状や精神障害が加わった時には、きわめて重篤な状態と判断します。早急に治療を行わなければ、命を失う危険性が高くなります

胆管がん

徐々に進行していく黄疸が特徴です。初期の自覚症状はありませんが、ある程度進行すると胆管炎を起こし発熱を伴うことが多いです。

膵臓(すいぞう)がん

症状は上腹部痛・食欲不振・吐き気や嘔吐などがあり、進行すると腫瘍熱や黄疸がみられるようになります。膵臓がんは治療成績が悪いがんで、その理由として早期診断が困難なことにあり、発見された時にはすでに進行しており、さらに他の臓器に転移している場合が多いです。

発見された場合、手術を行わないで生存期間を伸ばす有効な方法がないため、可能な限り手術により腫瘍を摘出するように勧められます。

まとめ

眼球の白い部分や皮膚の色が急に黄色く変化して来たときには、何らかの病気が関係しています。成人になってからの病気で黄疸が自然と良くなるものはありませんし、最悪命にかかわる危険な状態が考えられます。黄疸と関連がある臓器は消化器のため、受診する場合は消化器内科がある病院に行きましょう。