以前と比べて目が飛び出していたり、横から見たときに左右の目の高さが違うことを指摘されたりしたことはありませんか。これらの症状は眼球突出と呼ばれ、原因には目周辺の病気や全身疾患が挙げられます。今回は眼球突出がみられたときに考えられる病気を紹介していきます。

目次

眼球突出とは

目玉(眼球)は眼窩(がんか)と呼ばれる骨の窪みの中に収まっています。眼球突出は、眼窩に存在する筋肉脂肪組織血管などが腫れることで、眼球を後ろ側から押し出して眼が飛び出ているように見える状態を言います。

眼球突出以外に、目の症状として視力障害、複視(物が二重に見える)、充血が起こることがあります。眼窩の後ろは脳につながっており、脳にも障害が起こると、重篤な後遺症、さらには生命に危険を及ぼすことがあります。

眼球突出で考えられる原因4つ

汗をかく女性

バセドウ病

眼球突出を認める際にまず疑われるのは、バセドウ病です。バセドウ病は甲状腺刺激ホルモン受容体と呼ばれる箇所が誤って攻撃されることで、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される自己免疫疾患です。20歳~30代の女性に多い病気です(健康の森より)。

甲状腺は身体の代謝を活発にするホルモンです。甲状腺機能が亢進している(高まっている)状態では、身体が常に運動を続けているような状態になります。その結果、動悸や息切れ、手足のふるえ、汗をかきやすい、疲れやすい、体重減少などさまざまな症状が出てきます。中でも特徴的なのが眼球突出です。

バセドウ病では眼窩内の脂肪や筋肉にも炎症が起き、これらの組織が厚くなります。そうなると眼球が押し出されます。この病気は全身性の疾患であるため、眼球突出は両目に見られます。

眼窩蜂巣炎

眼窩に細菌が感染して膿が溜まる眼窩蜂巣炎があります。原因として、眼窩の周りにある副鼻腔や歯に感染した菌の侵入、眼窩にある涙が鼻に流れる涙道の感染(涙道炎)、眼窩の骨折などがあります。

眼球突出は片目に見られ、急速に進行します。眼球突出以外に、疼痛、眼瞼(がんけん、まぶた)の腫脹(腫れ上がる)、結膜の腫脹と充血、眼球運動の制限、霧視(むし、目がかすむこと)、複視が出現します。治療は緊急入院による抗生物質の点滴です。手遅れで失明、さらには生命に危険を及ぼすことがあります。

眼窩腫瘍、眼窩炎症性偽腫瘍

眼窩に密集している筋肉や神経、血管など様々な組織のいずれかの細胞ががん化することで、様々な種類の眼窩腫瘍が生じます。

小児では良性腫瘍はゆっくり進行するのに対して、悪性の横紋筋肉腫や白血病は急速に進行します。特に白血病は片目、あるいは両目に眼球突出が見られ、その時期は白血病の採血所見(結果)よりも数ヶ月前です。成人では、転移によって生じることが最も多く、眼球突出、複視、疼痛、視力低下がみられます。

眼窩炎症偽腫瘍とは、炎症によって傷ついた部分を修復するために集まった繊維組織が眼窩内に蓄積することで、非がん性の細胞の塊が生じるものです。進み方は急速、ゆっくり、再発など様々です。急速の場合は疼痛、複視、視力低下も現れます。多くは小児で見られますが、成人では全身性の血管炎である多発血管炎性肉芽腫症などが起こることがあります。

内頚動脈海綿静脈洞瘻、硬膜動静脈瘻

眼窩の後ろ、脳の下側に海綿静脈洞と呼ばれる、脳からの静脈が集まってくる部分があります。この海綿静脈洞には眼球と眼窩の静脈も流れ込んでいます。この海綿静脈洞を脳への動脈である内頚動脈が通っているのですが、内頚動脈から海綿静脈洞へ出血することがあります。これが内頚動脈海綿静脈洞瘻(ないけいどうみゃくかいめんじょうみゃくどうろう)です。

出血すると海綿静脈洞の圧力が高まり、眼窩、眼球の静脈がうっ血、さらには逆流します。そうすると典型的には、眼球突出、拍動性雑音、結膜充血の三症状が見られます。拍動性雑音は心拍に合わせて脈打つように患者の方も聴くことができます。

この三症状以外に、複視、視力低下の眼症状や、脳の静脈が逆流すると耳鳴り、頭痛、めまいなどが起こります。さらに、失明や脳出血による重篤な後遺症を引き起こすことがあります。内頚動脈海綿静脈洞瘻を起こる原因としては、動脈瘤の破裂と外傷性があります。

同じ様な病気に、硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)があります。硬膜は脳を包んでいる膜で、この硬膜へ流れて行くべき動脈が直接静脈に流れる病気です。これが海綿静脈洞で起こると内頚動脈海綿静脈洞瘻と同じ症状が現れます。多くは原因不明で、中年女性に見られます。

まとめ

眼球突出が生じる原因として、最も知られているのは自己免疫疾患であるバセドウ病ですが、それ以外にも炎症性、感染性、腫瘍、血管性の大きな病気が隠れていることもあります。目が渇きやすくなったり、ものが二重に見えたりするなどの症状がある場合は、眼球突出が起きている可能性があります。不安のある方は早めに眼科を受診してみてください。