クモは世界中に約35,000種、日本には1,000種ほどの種類が存在しています(国立感染症研究所より)。基本的には他の害虫を食べる益虫で、毒を持つ種類は限られています。クモの毒による死亡例は日本ではまだ報告されていません。ただ、中には噛まれる(クモ咬傷、こうしょう)と毒によって症状が出るタイプもいます。今回はクモ咬傷について、注意が必要なクモを紹介しながら、症状と対処法を解説していきます。

目次

注意が必要なクモの種類

国内で注意が必要なクモとしては、カバキコマチグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモなどが知られています。
在来種のうち、最も毒性が高いクモはカバキコマチグモで、稀に強い全身症状を示すことがあり、国外では死亡例も報告されています。

カバキコマチグモ

カバキコマチグモは、体長1.0~1.3cm(オス)、1.2~1.5センチ(メス)の大きさです。全体は黄褐色から暗褐色で、腹部に特徴的な模様はありません。

セアカゴケグモ

セアカゴケグモは、体長0.4~0.5cm(オス)、0.7~1.0cm(メス)の大きさのクモです。全体は黒色で、腹部の腹面・背面ともに砂時計型の赤い模様があります。

ハイイロゴケグモ

ハイイロゴケグモは、体長0.5cm程度(オス)、1.0cm程度(メス)の大きさのクモです。色は茶色から灰色、黒色と個体差があります。腹部は球状で、背面には多数の褐色の模様があり、腹面には赤色の模様があります。

クモ咬傷の症状

セアカゴケグモ

通常、クモに咬まれても一時的な痛みが生じるのみで、数日で治るケースが多いです。

しかし、稀に強い毒性が現れ、皮膚症状に留まらず全身に症状が現れることもあります。

軽い症状の場合

症状は皮膚のみに留まります。
咬まれた部位には針に刺されたような痛みが走った後、鈍い痛みが持続します。

皮膚には1、2ヶ所の刺し傷が残り、その周辺が赤くなり(発赤)し、熱を持ちます。患部が水ぶくれになることもあります。

毒性の弱いクモであれば、これ以上の症状が生じることはなく、傷口も2、3日で治癒します。しびれや腫れを伴うこともありますが、長引くことはありません。

中等度の場合

やや毒性の強いクモに咬まれた場合、上記の皮膚症状に加え、咬まれた部位から痛みの強さ、範囲ともに拡大していくことがあります。

咬まれた部位では発汗や鳥肌が見られ、周囲には筋肉痛が生じてきます。
ただ、バイタルサイン(体温、脈拍、呼吸数、血圧、意識など)は正常で呼吸数や脈拍数が乱れることはありません。

重症の場合

重症の場合、全身に発汗の増加や鳥肌がみられ、発熱や頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、不安感など様々な症状を引き起こすことがあります。
刺し口から離れた部位にも筋肉痛が生じ、動悸や頻脈などもみられます。

相当ひどい場合は、急激な血圧低下によって意識を失うショック状態に陥ります。

刺し口を超えて痛みが生じることで、他の疾患と間違われるほどの強い痛みとなることもあります。
手や腕を咬まれた場合には強い胸の痛みが生じて心筋梗塞に似たような症状を認めたり、足を咬まれた場合には激しい腹部の痛みから虫垂炎や腸閉塞、婦人科疾患などが疑われた例もあります。

重症化するのは子供や高齢者、あるいは免疫力の低下している方などに多いと言われています。

体液などが眼に入ったときの症状

クモの種類によっては、毒牙だけでなく、体液や糸にも有害な成分を含むものもあります。
これらの成分が眼に入ってしまうと、まぶたや眼球に炎症が起こり、浮腫や充血、角膜炎などを引き起こします。

噛まれたときの対処法

咬まれた場合は速やかに流水で流し、傷口を優しく洗いましょう。
圧迫すると痛みが増強することがあります。

痛みが強い場合には、冷却剤などを用いて十分に冷やしてください。

痛みや発赤が刺し口に留まり、皮膚の症状だけであれば自宅で様子をみるのでも構いません。
ただ中等度以上の症状が現れたり、不安感が強かったりした場合には、早めに医療機関に受診してください。

病院を受診する際は、噛んできたクモが分かると診断・治療がスムーズに行えます。
クモの写真を撮るなどして医師に見せると良いでしょう。

ただし、写真を撮ることにこだわりすぎて受診が遅れないよう、無理のない範囲に留めてくださいね。

まとめ

日本では、過去にクモに噛まれたことによる死亡例はありません。
また例えクモに噛まれても症状が軽い場合は、特に心配する必要はありません。

もし噛まれた後に皮膚以外に症状が出た場合は、早めに病院を受診しましょう。