腎臓は、握りこぶしほどの大きさですが、生きていくために欠かせない多くの役割を担っている臓器です。なかでも、腎臓と血圧は密接な関係にあります。腎臓の働きが悪くなると高血圧になり、高血圧が続くと腎機能が低下するという“悪循環”に陥りやすく、どちらかを治すのではなく、両方をうまくコントロールすることが大切です。

目次

高血圧の診断基準は?

血圧とは心臓から全身に送り出される血液が血管に加える圧力のことです。血液を心臓から全身に送り出すとき、血管にかかる圧力を収縮期血圧(最高血圧)、全身から心臓に戻ってくるときにかかる圧力を拡張期血圧(最低血圧)と呼んでいます。

高血圧治療ガイドライン2014によると、高血圧は、最高血圧が140mmHg以上または、最低血圧が90mmHg以上の状態をいいます。ただ、これは病院など医療施設で測った値を指しており、自宅で測った場合は、最高血圧が135mmHg以上、最低血圧が85mmHg以上と、基準がやや低めに設定されているので注意しましょう。

高血圧では、目立った症状は現れません。自覚症状が出たら、と考えるのではなく、日頃から血圧の値を気にしておいた方が良いでしょう。

尿を作るだけではない!腎臓の重要な働き

ドクター
腎臓は、血液を濾過して老廃物や塩分(ナトリウム)を水分(尿)として排泄する仕組みがあり、尿を作る臓器として知られています。この濾過をスムーズに行うためには、全身の血圧を一定に保つ必要があることから、血圧を調整する役割もあります。

腎臓が血圧に関係する働きをまとめると、次のようになります。

塩分(ナトリウム)と水分(尿)を調節する

健康な人の腎臓では、余分な塩分は水分と一緒に排出され、一定の血圧を保っています。しかし、腎臓の働きが悪くなると、排出機能がうまく働かなくなります。水分が溜まり、ナトリウムの排泄が低下することで血液の量が増え、その結果、血圧が上昇します。

ホルモンの分泌

腎臓から分泌されるホルモンには、血圧を上げる作用があるものがあります。「レニン」と呼ばれるホルモンです。レニンは、腎臓の機能が低下すると分泌量が増えるため、高血圧を引き起こす要因にもなります。

 

慢性腎臓病と高血圧

高血圧と腎臓は切っても切れない関係ですが、腎臓病の患者さんにとっては、より事態は深刻です。高血圧は、慢性腎臓病(CKDの発症と進行に大きな影響を与えます。

ここで重要となるのが、血圧を下げる降圧治療です。血圧を適正値まで下げることで、CKDの進行を遅らせ、末期腎不全による透析療法のリスクを軽減できます。加えて、心臓病や脳卒中といった心血管疾患のリスクも減らせます。

血圧を下げるには、塩分の摂りすぎや過食といった乱れた食生活の改善や、禁煙、適度な運動といった生活習慣を見直すことが先決です。これでも血圧が下がらない場合は、降圧剤を使った治療も行われます。

この際、一般の高血圧治療とは薬や目標血圧が違うので、注意が必要です。また、急激に血圧が下がると、腎臓の働きが悪化することもあるため、必ず主治医の指示に従って治療を進めましょう。

まとめ

腎臓と高血圧の悪循環を断ち切るには、医師の元での適切な治療や生活習慣の見直しによる血圧のコントロールが重要になってきます。早めに高血圧の治療をすることで、腎臓病の進行を遅らせるメリットもあるので、命と腎臓を守るためにしっかり治療を行いましょう。