コンタクトレンズ(コンタクト)を使う人は全国で現在1,500~1,800万人おり、その割合は日本国民の10人に1人とされています(日本眼科学会より)。コンタクトはメンテナンスが手軽になったり、購入しやすくなったりするなど便利になっている一方、眼障害も併せて増加しています。今回はコンタクトが眼障害を起こす理由、また考えられる疾患について紹介します。

目次

コンタクトレンズが目の病気を招きやすい理由

コンタクトは目に装着する時点で、リスクを抱えています。コンタクトは高度管理医療機器であることを認識し、正しい使用、レンズケアと定期検査が大切です。これらが守られず、長時間装用、装用不良、不適切なレンズケアによるレンズの汚れや傷などによって眼障害が出現し、さらに定期検査が行わなければ重症例に至ることがあります。

この背景としてコンタクトレンズ量販店の安売り販売、そしてインターネット販売の普及などがあります。これらの販売店では医師の処方なしでコンタクトを販売していることが少なくありません。購入者は、十分な正しい使用、レンズケアの方法も知らずに購入可能で、その後の定期検査も行われません。

また、これらの販売店では眼障害を引き起こしやすい極端に酸素透過性の悪い安価なカラーコンタクトレンズ(カラコン)も販売されており、問題視されています。

酸素や涙の不足

目の角膜(黒目の部分)は、涙の中に含まれる酸素を取り込んでいます。角膜がコンタクトに覆われると、新鮮な涙を得にくくなります。そうすると目は酸素不足に陥りやすく、感染症や傷などと眼障害になりやすくなります。コンタクトのうち、ハードコンタクト(ハード)は一回の瞬きで角膜とコンタクト間の涙を約15~20%交換できますが、ソフトコンタクト(ソフト)はわずか約1%しか交換できません日本眼科学会より)。

コンタクトの性能は向上し、酸素透過率や涙液交換率も上がってきてはいます。それでも裸眼や眼鏡に比べると、コンタクト装着時は目に負担をかけています。長時間装用、コンタクトの汚れがさらなる酸素不足を引き起こします。また、最近、問題となっているものとして、カラコンがあります。カラコンの多くは酸素透過性が悪く、眼障害を引き起こしやすくなります。

コンタクトレンズの汚れやキズ

コンタクト装着で起きる眼障害のうち、レンズ自体の問題として、最も多い原因はレンズの汚れです。コンタクトは汚れると酸素透過性が低下し、角膜が酸素不足になります。またレンズに汚れによる変形や傷があると、角膜を傷つけます。その傷に汚れたコンタクトに付着していた細菌などの微生物が入り込むと、重篤な眼障害を引き起こします。

またレンズの汚れはアレルギー反応を誘発し、結膜炎の原因になります。

コンタクトレンズを使っていて注意したい眼障害

コンタクト洗浄の様子

巨大乳頭結膜炎

アレルギーによる結膜疾患のうち、コンタクトなど異物を目に入れることによって引き起こされる結膜炎です。目のかゆみ、充血、目やになどの症状の他、上まぶたの裏側に楕円形の隆起物(いわゆるブツブツ)が現れます。1mm以上の隆起を巨大乳頭と呼び、結膜炎の中で最も重症です。

治療はまずコンタクトの使用を中止し、アレルギーを抑える目薬、またはステロイド入り目薬を差します。アレルギー反応が出る原因は、コンタクトについていた汚れ、タンパク質があります。特にソフトはハードよりも汚れが蓄積しやすいので、1日使い捨てタイプでない人は日ごろのレンズケアが重要です。

角膜上皮障害

角膜の一番表面の細胞(角膜上皮)が傷つき、はがれている状態です。症状の軽い順に点状表層角膜症、角膜びらん、角膜潰瘍と分類されます。

角膜上皮は2週間ほどで新しい上皮と入れ替わります。従って、角膜上皮までの障害であれば、コンタクトの使用を中止し、涙の成分に近い目薬で角膜を保護し、合併症としての角膜感染症がなければ、正常な状態に戻ります。

角膜上皮障害のうち、点状表層角膜症はしばしば見られる疾患で、ゴロゴロするといった異物感、眩しさを感じることがありますが、多くは無症状です。

ハードでもソフトでも起こることがありますが、特にソフト装用者では無症状であることが多く、無治療で放置され、角膜上皮を越えて実質まで障害される角膜潰瘍の状態になってから、初めて症状が出現して眼科を受診することがあります。障害が角膜実質まで到達すると角膜に混濁が残り、視力も低下し、元の状態には戻りません。

角膜上皮障害の原因として、コンタクトの長時間装用による角膜酸素低下、コンタクトの汚れ、コンタクトの傷、劣化、ドライアイやコンタクトのフィッティング不良などがあります。

また、次の項で述べる角膜感染症は基礎疾患として角膜上皮障害があります。角膜感染症になると失明に至る可能性があります。従って、定期検査を行い、角膜上皮障害の段階で治療を行うことが大切です。

角膜感染症

ソフト装用者に多く、特に、頻回交換型コンタクトで最も多く見られます。原因は前項で述べた角膜上皮障害に、正しいレンズのケアを怠ってレンズが微生物に汚染されることが合併して角膜に微生物が入り込むことです。

レンズケア方法として、現在は化学消毒法が主流となっており、過酸化水素剤、ポビドンヨード剤と洗浄、すすぎ、消毒、保存の用途を1本で行う多目的溶剤(MPS)の三種類に分けられます。このうちMPSは最も安価で簡便ですが、消毒効果が劣るため、角膜感染症で問題となっています。

レンズ汚染の原因として微生物のレンズケース内での増殖があります。消毒剤の開封ごとにレンズケースを新品と交換すること、保存液を毎回交換することが正しい方法ですが、感染症が見られる方の多くは、これらが行われていません。保存液として、水道水を使用したり、使用したMPSを廃棄せず、追加したりすることによって、微生物がケース内に残り、微生物が増殖します。

主な原因微生物は次に述べるアカントアメーバ緑膿菌です。これらは日常どこにでもいる微生物で、通常はこれらによる角膜感染症になることはありません。レンズケース内で増殖したこれらの微生物がコンタクト装用によって障害された角膜上皮から侵入して角膜感染症が起こります。

緑膿菌

緑膿菌は生活環境に常にいる常在菌です。

緑膿菌は感染から角膜潰瘍発症までの進行が早い特徴があります。角膜が穿孔し、眼球内まで細菌が侵入することがあります。抗菌薬の目薬を1~2時間ごとに頻回し、重症例では抗菌薬の点滴が併用されます。

アカントアメーバ

川や沼に生息していますが、水道水の中にもいることがあります。また、MPSにはアカントアメーバに対する消毒効果はほとんどありません。

感染するとゆっくりと進行し、初期は強い目の痛み、強い充血などの症状が出ます。角膜の病態はヘルペス角膜炎と類似し、誤って抗ヘルペスウイルス薬や、抗炎症目的でステロイド点眼薬が行われることがあります。アカントアメーバに対する特効薬は存在せず、治療は抗真菌薬や消毒薬を目薬として使用、抗真菌薬の全身投与、角膜の感染部位を削る併用療法が行われます。

まとめ

コンタクトによって起こる眼障害の多くは、決められた使用方法が守られていなかったり、正しいケアをしていなかったりすることが原因です。定期的な目の検診と、レンズ取り扱いの正しい知識を身につけ、長くコンタクトを愛用できるようにしましょう。