結核」といえば、長引く咳などの症状が現れる肺結核をイメージするかもしれません。ただ、感染するのは肺だけじゃないって知っていますか。感染先は眼や喉など様々で、そのうちの一つに腸があります。今回は、腸が結核菌に感染した状態である腸結核について、感染する経緯や症状について詳しく説明していきます。

目次

腸結核とは?

結核は結核菌に感染することで生じる感染症の一種です。多くは肺に感染する肺結核で、2015年の段階で新たに結核を発症した人数は18,280人、死亡者数は1日に5人とされています(結核研究所より)。

一般的には肺結核として知られている結核ですが、実は体の様々な部分で結核菌による感染が生じます。その中でも大腸や小腸が結核菌に感染した状態を腸結核と呼びます。

腸結核は発症の仕方によって、次のように分類されます。

  • 続発性腸結核…肺結核に感染後、結核菌を含んだ痰が消化管に流れて腸に感染したもの
  • 原発性腸結核…肺に結核菌の感染がみられずに腸結核を発症したもの

結核自体は治療法が確立されていて、感染者数、死亡者数はともに減少しています。ただ高齢者など、免疫力の低下がみられる人たちが新たに結核菌に感染しやすい傾向があります。腸の結核菌感染は今でもみられています。

腸結核の原因は?結核菌の感染する経路は様々

金色に輝く臓器

腸結核になる原因は、結核菌がどのような経路で腸に感染するかによって異なり、また様々です。以下に結核菌の感染経路の違いを示します。

  • 消化管を通して結核菌が運ばれて感染
  • 血液によって結核菌が運ばれて感染
  • リンパによって結核菌が運ばれて感染
  • 腸に近い臓器を通して感染

最も多いのは消化管を経由しての感染とされています。具体的には、結核菌を含む痰を飲み込むことで、喉から食道、胃といった消化管を経由して腸へ結核菌が運ばれることで感染します。

症状がない場合も?腸結核でみられる症状

腸結核でみられる症状には腹痛や下痢、嘔吐、腹部の膨満感、発熱などがありますが、無症状の場合も少なくありません。また症状を見ても分かるように、腸結核特有の症状というのはみられません。

また病気による腸の変化として、粘膜の潰瘍がみられます。腸の中でも最も良く症状が見られる部位は、回盲部と呼ばれる小腸と大腸の境界部分です。理由として、回盲部は胃酸による影響が少ないかつリンパが集まっている部分が多く、結核菌が感染しやすいことが考えられます。

合併症には腸閉塞(イレウス)、腸に穴が空く腸穿孔(ちょうせんこう)などが挙げられます。

まとめ

腸結核は肺結核を伴わない場合でも発症することが分かっています。ただ特有の症状はなく、疾患の特定もなかなか難しい面があります。腹痛や下痢など腸の異変が長引いている場合は、早めに消化器内科などを受診してしっかりと診断をしてもらうようにしましょう。