急な腹痛に襲われた場合、様々な原因が考えられます。その一つが「腸閉塞(イレウス)」です。腸の流れが滞ってしまうことにより、腹痛や吐き気をはじめ多様な症状がみられます。

先日、鎮痛剤としてお馴染みの「ロキソニン」の「重大な副作用」の項目に、「小腸・大腸の狭窄・閉塞」を追記するようにと厚生労働省からの指示が出たそうです。案外身近な病気である腸閉塞について、その症状や治療法を解説します。

目次

腸閉塞(イレウス)ってどんな病気

腸閉塞は、腸の中の食べ物や消化液の流れが滞っている(内容物が腸に詰まってしまった)状態をいいます。医師にはイレウスという名称で呼ばれることが多いです。

詰まった箇所より上部の腸は正常に働きますが、下部に食べ物や消化液・ガスなどが運ばれなくなってしまい、腹痛嘔吐などの症状を起こします。治療を怠ると腸が破裂し、腹腔の炎症や感染症に繋がることがありますが、正しい治療が行われれば予後は良好なことが多いです

腸閉塞は原因により、機械的閉塞機能的閉塞の2種類に分けられます。

機械的閉塞

がんやヘルニアによる閉塞や開腹手術後の腸管の癒着によって、腸が物理的にふさがれてしまった状態をいいます。腸閉塞の多くは、機械的閉塞に分類されます。

機能的閉塞

腸管への血液の流れや、腸の運動をつかさどる神経の障害によって蠕動運動(ぜんどううんどう:腸が収縮し、中のものを移動させる働き)が止まり、消化物がスムーズに肛門に移動できなくなった状態をいいます。炎症性の腸疾患などが原因となります。

腸閉塞の症状は?

腹痛

腸閉塞の症状は、原因によって異なります。主な症状としては、以下のようなものがみられます。

この他、腸が完全に詰まってしまった場合は重度の便秘がみられますが、部分的に詰まった状態だと下痢が起こることがあります。また、絞扼(こうやく:腸の閉塞で、腸への血流が絶たれた状態)を起こした場合は痛みが激しく、休みなく生じるようになります。

絞扼性イレウスは、放っておくと腸が壊死してしまう危険な状態です。そのため、診断されたら緊急手術を受けることになります。

腸閉塞の検査と診断

聴診器

腸閉塞の疑いがある場合、以下のような検査で診断します。

問診視診触診聴診

開腹手術や腫瘍・便秘といった既往歴を聞かれます。また、蠕動運動が正しく行われているかどうか・腹部の圧痛や膨張がないか・腸の音に異常がないかを確認します。

腹部X線検査

腸のどこが閉塞しているかを見ます。また、もしもこの検査で腸の周囲や横隔膜の下に空気が映ったら、それは腸が破裂していることを示します。

CT検査

腫瘍や炎症、ヘルニア結石など、原因となる疾患を見つけることができます。

このほか、血液検査・腹部超音波検査などが行われることがあります。

腸閉塞の治療法

腸閉塞の治療には、入院が必要です。

保存的療法と手術療法の2つがあります。まずは保存的療法で様子を見て、改善されなかったり腸閉塞が繰り返したりする場合、手術療法が行われます。

保存的療法

絶飲絶食とし、水と電解質のバランスに注意しながら、輸液によって脱水症状を改善するだけでも改善することがあります。

また、鼻から腸管のふさがったところまで胃管やイレウス管を挿入して内容物を排出させる腸管減圧療法を行ったり、抗生物質の使用で細菌感染を防いだりします。

手術療法

上記の治療法で症状が改善しない場合や、血行障害がある場合・腸閉塞を繰り返し起こす場合は、手術療法が行われます。手術内容は症状によって異なりますが、腸管がねじれたり折れ曲がったりした箇所の修正、原因となった腫瘍・異物の除去、腸管の切除、人工肛門の造設などが行われます。

さいごに

今回は、腸閉塞の症状や治療法について解説しました。初めにも書きましたが、腸閉塞は適切な治療を行えば予後は良好なことが多いため、発病した場合はしっかりと治療を受けることが第一です。