風邪だと思い込んでいたら「結核」だった…今でも、そんなことが皆無とはいえません。昔ほどには多くないとはいえ、日本国内では年間2万人以上が新たに発症しています(厚生労働省より)。結核は、最初は肺に生じますが、悪化すると他の臓器に飛び火し、脊椎カリエスや結核性髄膜炎によって死に至ることもある怖い病気です。

平成26年の結核による死亡者数は2,099人(概数)で、前年の2,087人に比べ12人増加しました。死因順位は26位です。結核の特徴については、「長引く「咳」は結核が原因!? 感染の連鎖を断ち切るには」をご覧になってください。ここでは結核の予防と治療について、医師・大谷 義夫先生による監修記事で見ていきましょう。

目次

BCGワクチンによる予防

結核を予防するため、生後5か月~8か月の期間に1回接種するのがBCGワクチンです。BCGワクチンを接種すると結核に対する特異的免疫が作られ、発病しにくくなります。その効果については、BCG接種後5年間に高い発病抑止効果が指摘されており、効果の持続期間は約15とされています(厚生労働省)。

発病抑止効果については様々な研究がありますが、現在有力とされている考え方に従えば、小児の発症に関しては52~74%程度、髄膜炎や全身性の結核などの重い症状に対しては64~78%程度発症リスクを抑えられると考えられています厚生労働省)。

結核は無治療のままだと約50%の確率で死亡します。実際、現在の医療水準をもってしても、髄膜炎にかかった場合は約30%の人が命を落としていますし、治った方でも後遺症が残る場合があります厚生労働省より)。その意味で、BCGワクチンによる予防は非常に重要です。

BCGワクチンは、以前は必ず接種しなければならないものでしたが、現在では任意接種となっています。しばしば若者が結核を発症するのは、BCGワクチンを接種していないことも原因のひとつと考えられています。

どの診療科に行けばいい?

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結核が疑われるときは、子供であれば小児科、大人であれば内科または呼吸器内科を受診しましょう。結核の発見のためには血液検査の他、肺に異常な影がないかを調べるレントゲン検査や、痰に含まれる病的な成分を確かめる喀痰(かくたん)検査を行います。

治療は薬を使った治療が中心です。結核菌はしぶとく、薬に対する抵抗力をつけてしまうことがあり、そうなると治療が困難になります。そのため、複数の薬剤を同時に使用する方法がとられています。リファンピシン、イソニアジドといった薬を合計6ヶ月間使う方法が主流となっています。症状が重い時や周囲に感染する恐れがあるときには入院治療が必要となりますが、薬物治療を行うと2~3ヶ月で菌の活動が停止するため、その後は通院しながらの治療に切り替えます。

結核にならないためには?

結核菌に感染しても9割の人は発症しません。発症しやすいかどうかは、BCGワクチンを接種しているかや、現在における免疫力の強さにも左右されます。

基本的なことですが、免疫力を下げるような不規則な生活リズムや偏った食生活は避けましょう。感染してしまっても、予防薬で適切に治療を行えば発症を防ぐことができます。感染源にならないためにも早期発見・早期治療が重要になります。

まとめ

結核は現在でも死亡する可能性のある怖い病気です。BCGワクチンが任意接種となったことで、若い世代にはこのワクチンを接種しておらず、抵抗力を持たない人が少なくありません。長引く咳など、疑わしい症状に気づいたら、子どもなら小児科、大人なら内科または呼吸器を受診してください。