体液中のナトリウム濃度が高くなった状態を、高ナトリウム血症と言います。ナトリウム濃度が高くなるとからだにどのような症状が出て、どういった影響を及ぼすのでしょうか。また高ナトリウム血症を招く原因は何なのでしょうか。今回は高ナトリウム血症について紹介していきます。

目次

高ナトリウム血症とは?

高ナトリウム血症の原因は、水分不足が基本です。ただヒトは汗や尿で排泄される水分(体液)に見合った水分を摂取していれば、体液バランスを保てます。またそのバランスが崩れそうになった場合でも、喉の渇きを覚えることで補給していきます。そのため高ナトリウム血症は誰にでも、また頻繁に起こる病気ではありません。

何らかの原因で渇きを感じにくい場合や、水分補給が難しい状況は高ナトリウム血症を引き起こす恐れがあります。また腎機能の問題によって体液より薄い水分を排出してしまうと、ナトリウム濃度は高くなります。

以下に当てはまる人は高ナトリウム血症を発症する可能性があります。

  • 水分を摂取しない(できない)人
  • 多量の下痢や嘔吐、発汗で体液を失った人
  • 糖尿病で多尿の人
  • 広範囲に火傷を負った人
  • 利尿剤を使用している人
  • ナトリウムを過剰摂取している人
  • 副腎皮質ホルモンに異常がみられる疾患(原発性アルドステロン症・クッシング症候群など)を発症している人 など

高ナトリウム血症の症状は?

机の上で倒れ込む男性

高ナトリウム血症の症状として、最も考えられるのは口の渇き(口渇)です。ただ認知症や意識障害などを発症している場合は口渇を自覚できない場合があり、重症化しやすいです。その他には錯乱、筋肉の痙攣(けいれん)、昏睡などです。浮腫(むくみ)が表れることもあります。

高ナトリウム血症で最も危険なのは、細胞内の水分が細胞外に移動してしまうことで脳の細胞内にも脱水が起きてしまうことです。脳内の細胞は脱水すると萎縮してしまいます。重度の高ナトリウム血症で死亡した事例には脳血管障害(クモ膜下出血など)、静脈血栓症などを合併したケースがあります。

高ナトリウム血症の治療法とは?

高ナトリウム血症と診断されるのは血清ナトリウム値が145mEq/L以上のときです。治療法は高ナトリウム血症を引き起こした原因によって異なるので医師の指示に従います。ナトリウムは食塩の成分の一部であるため、単純に塩分制限をすれば良いと思うかもしれませんがこれは誤りです。

水分不足による高ナトリウム血症は、水を飲むことで改善されます。口から飲み込めないようであれば、静脈注射によって補います。5%ブドウ液を摂取する場合もあります。慢性化していたり、どれだけ発症しているか分からなかったりすると、急に濃度を下げたせいで脳の損傷をきたす恐れがあります。その状況ではゆっくりと補給していきます。

水分不足でなく浮腫を伴う高ナトリウム血症がある場合は、水分補給しながら利尿剤などを使って余分なナトリウムを排出していきます。

まとめ

ヒトのからだは体液のバランスが悪くなると、口の渇きを覚えて水分補給を促す仕組みがあります。そのため一般の方が高ナトリウム血症になる可能性は低いです。ただクッシング症候群など他の疾患を患っていたり、高齢者で認知症を発症していたりしたときは、そのリスクを抱えています。

血液検査などの結果、思いもよらず自分が該当していた際には、薬の影響や疾患が隠れている可能性もあるので受診を検討してください。