心拡大・心肥大…普段は耳にすることはあまりない単語ですが、健康診断を受けた時やかかりつけ医を受診した際などに「心臓が大きいですね」と言われたことはありませんか?そもそも心臓が大きいって良いことなの、悪いことなの?なぜ大きいの?心臓が大きいとどうなるの?…そんな疑問について、医師・安田 洋先生による監修記事で一つずつ解決していきます。

目次

まずは心臓の役割と構造を知ろう

心臓は、全身に血液を送るポンプのようなものです。絶えず拍動し、全身に血液を巡らせています。その作業をするために心臓は4つの部屋を持ち活動しています。4つの部屋は上下左右で分かれており、右心房・右心室・左心房・左心室と呼ばれています。

全身から戻ってきた血液は、右心房に入り、右心室を出て、肺に流れていきます。そして、肺で酸素を受けとり、左心房に入り左心室を出て、全身へと送り出されます。心臓はこの一連の流れを絶えず繰り返すためにポンプ役として拍動し続けているのです。

心臓の構造-図解

心臓が大きいって?心拡大と心肥大の違い

そんなポンプの役割のある心臓が大きいということは、それだけポンプ力が大きいってことで良いんじゃないの?と思う人もいるかもしれませんが、そうではないのです。

その前に、なぜ医者は心臓が大きいと一口に言えるのでしょうか。それは主に胸部レントゲン写真で分かります。胸の全体的な大きさである胸郭の幅に対して、心臓の幅がどのくらいの割合を占めているか。心臓の幅が胸郭の50%以上となる場合、心臓が大きい状態、いわゆる心拡大の状態といえます。心拡大には、「心房や心室の内腔が大きくなる」「心臓の壁(心筋)が肥大する」という2つの原因が考えられます。

そのうち、心筋が肥大した状態を心肥大と言います。心肥大があるときは、心筋に負担がかかっていないかどうか(高血圧など)や、遺伝的に心肥大になっていないか(肥大型心筋症など)を調べる必要があります。

心拡大と心肥大はよく混同されて使われていますが、厳密には意味が違うのですね。

心臓が大きいこと(心拡大)で考えうる病気と起こる症状

なぜ心臓が大きくなっているか、原因探索が非常に大切です。また、どこの部分が大きくなっているかで考えうる病気や治療方法も変わってきます
それらを明確にするために心臓超音波検査などで精査していきます。

心室が大きい場合に考えられる病気

まず、心室に流れ込む血液の容量が余分に増えたことで負担になった場合容量負荷といいます)、心臓が大きくなります。

弁膜症(大動脈弁閉鎖不全症僧帽弁閉鎖不全症)

心臓には心房と心室の間にある弁と呼ばれるドアのようなものがあり、開け閉め調整することで血液をうまく送り出しています。血流は本来心房から心室へと一方通行ですが、弁がうまく閉まりきらないことで心室に血液が逆流し、容量負荷がかかり、心室が拡大します。

シャント性先天性疾患

生まれつき心臓のどこかに穴が開いた状態で、その穴を通って血液が余分に流れ込むことで容量負荷がかかり、心室が拡大します。

また、下記のような疾患で、心室の筋肉に異常が生じた場合に細胞の変化等で心臓が大きくなることもあります。

ハート-写真

心房が大きい場合に考えられる病気

心室が何らかの障害を受けておりスムーズに心室へ血液が流れない時に、心房で血液が滞ってしまい心房が拡大してしまいます。

弁膜症

左心室と左心房の間にある僧帽弁という弁の開きが悪い僧帽弁狭窄症は、弁の開きが狭く左心室にうまく血液が流れず、その結果左心房に血液が滞り、心房が拡大します。また、逆流することでも同様のことが起こりますので僧帽弁閉鎖不全症でも心房が拡大します。
三尖弁閉鎖不全症では右室から右房に逆流し、右房拡大が見られます。

心房細動

不整脈の一種で、心房が細かく震えてしまい血流が心房で滞ります。そのため、心房の内圧が高くなり、心房が拡大します。

心拡大があり、上記のような疾患をお持ちであった場合、放置することで心臓はどんどん負担を受け、補うために頑張り続けた結果、破綻します。そして、心不全という状態になります。

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に血液を供給できない状態です。そして、心不全の症状が出現します。
多くは労作時の息切れで始まり、呼吸困難感、体の疲れやすさ・だるさ、食欲不振、浮腫など色々な症状があります

心拡大・心肥大と言われたら、あなたがすべきこと

健康診断などで心拡大・心肥大と言われ精密検査が必要と言われたら、心臓が何らかの負担を受けていると考え、自覚症状がなくても循環器内科でまずは相談しましょう
血圧が高い方は日々の血圧値を記録したものを持参し、受診しましょう。様子を見ていいもの、場合によっては内服治療、根治手術が必要なものもあります。

まとめ

心拡大、心肥大は命の危険と必ずしも直結しているわけではありません。負荷をかけずコントロールできれば良好な生活も送れます。

しかし心拡大・心肥大の状態に至るには、あなたの心臓が負担を受けている事実や原因があり、心臓があなたのために頑張った証拠でもあります。今後、今の状態を悪化させないよう、どのような生活を送ったらいいのかを知るためにもまずは医師に相談することが一番です。