皆さんは消化管カルチノイドという病気を知っていますか。世界的な発生率が10万人あたり約2人がん情報サイト)と珍しい病気であるため、知っている人はそう多くないかもしれません。

しかし、消化管カルチノイドは実はがん化することもあり、その性質上様々な症状を引き起こすことがあります。また当然、放置していれば命の危険にもつながってくる可能性があるのです。

今回はそんな消化管カルチノイドという病気について、詳しくみていきましょう。

目次

消化管カルチノイドとは

消化管カルチノイドの「カルチノイド」とは「がんのようなもの」という意味があります。つまり消化管カルチノイドという病名は「消化管にできるがんのようなもの」といった意味になります。

一般に進行が遅いことからそう呼ばれてきましたが、実はカルチノイドという言い方自体定義が曖昧で、なおかつ最近では悪性化することが多いことも分かってきたため、現在ではあまりこの呼び名は使われていません。

代わりに現在では神経内分泌腫瘍(しんけいないぶんぴつしゅよう)といわれることが多くなっています(ただしこの文章では便宜上、消化管カルチノイドという呼び方を用いることにします)。

つまり、消化管カルチノイドは腫瘍の一種なのですが、ここで腫瘍という言葉の説明も加えておきましょう。

腫瘍とは

腫瘍とは簡単にいえば細胞が増えて塊になったもののことで、良性悪性が存在します。

良性はその場で増えるだけで、広がったり、転移したりしない腫瘍であるため、多くの場合それほど大きな問題にはなりません。ただし、良性の腫瘍であっても後から悪性化する可能性はあります。

一方悪性の場合は腫瘍が周りに広がったり、ほかの場所へと転移してしまって正常な組織をどんどんと侵してしまうため、放置していると命の危険に繋がるのです。この悪性の腫瘍が、一般に「がん」と呼ばれているものです。

消化管カルチノイドの症状

消化管カルチノイドは大きく機能性非機能性の2つの種類に分けることができます。この場合の機能とは、体の様々な働きを調節する物質であるホルモンを出す機能のことを指します。

機能性消化管カルチノイド

機能性の場合はカルチノイドからホルモンが分泌され、その作用による多彩な症状、例えば嘔吐腹痛消化管出血下痢などが現れることになります。

カルチノイド症候群

機能性消化管カルチノイドの症状の一種にカルチノイド症候群というものもあります。これはカルチノイド患者さんの20%未満(がん情報サイト)で起こる症候群で、ほとんどがカルチノイドの肝臓への転移に伴って発生します。

消化管カルチノイドから分泌されるホルモンによって紅潮腹痛下痢気管支収縮などが現れ、心臓に影響が出ることも少なくありません。

心臓への影響が重度に及んだ場合では死亡率が上がることも知られており、この病気で経過を良くすることを考える上で大切な症状です。

非機能性消化管カルチノイド

非機能性では症状に乏しいことも多く、腫瘍がかなり成長して初めて発見されることもあるようです。

消化管カルチノイドの原因

消化管カルチノイドの原因については、実の所よく分かっていません。ある種の遺伝性疾患の一部として発生することがある、ということは知られていますが、消化管カルチノイドのほとんどは明確な原因が無く、どんな人にでも突然に発生する可能性があるのです。

消化管カルチノイドの治療

消化管
消化管カルチノイドの治療としては、手術薬物療法局所療法などがあります。

手術

多くの場合は手術が選択され、現在唯一完治させるための治療法でもあります。転移した場合にも行うことができる場合が多く、その場合症状の緩和を望むことができます。

薬物療法

手術に向いていない場合などでは、薬物療法を中心とした治療が行われます。

薬物療法は腫瘍の進行を抑える目的のものと、症状自体の改善を目的とするものに分けることができ、状況に応じて適切なものが選択されていきます。

また、手術で腫瘍の全てが摘出できなかった場合でも、薬物療法による追加治療が選択されます。

局所療法

局所療法は腫瘍そのものをピンポイントで攻撃する治療のことを指します。

具体的にはラジオ波による焼却療法や、血管塞栓術(腫瘍に栄養を運んでいる血管を塞ぐ手術)などが含まれており、肝臓への転移が見つかったときなどに用いられます。

まとめ

消化管カルチノイドとは消化管にできた腫瘍の一種で、「神経内分泌腫瘍」と呼ばれることもあります。機能性・非機能性がありますが、機能性の場合にはその名前のとおり、ホルモンを分泌することで様々な症状が現れます。またホルモンを分泌するだけでなく、腫瘍自体が周りに広がったり他の場所に転移したりするなど悪性化することも分かっています。

神経内分泌腫瘍について、詳しくはがん対策情報センターのサイトをご覧ください→国立がん研究センター希少がんセンター|さまざまな希少がんの解説|神経内分泌腫瘍