クッシング症候群は、コルチゾールというホルモンの過剰な分泌により、肥満や高血圧、糖尿病、骨粗しょう症などの様々な合併症を引き起こす、厚生労働省が指定する特定疾患です。診断には、どのような検査が行われ、患者さんにはどのような治療が施されるのでしょうか。

なお、クッシング病の概要については、「クッシング症候群の3タイプと代表的な症状のメカニズム」をご覧ください。

目次

クッシング症候群の診断

問診

目で見て分かりやすい特徴的な症状があるため、初めは問診が行われることが普通です。「クッシング症候群の3タイプと代表的な症状のメカニズム」の記事で紹介した、満月様顔貌(ムーンフェイス)や野牛肩(バッファローハンプ)など、身体所見で確認できる症状がないか確認します。

ホルモン検査

問診によりクッシング病が疑われる場合には、血中コルチゾールを調べる血液検査尿中検査を行います。血液中のコルチゾール濃度を調べることで、濃度が一定以上である場合にクッシング病と診断されます。

また、コルチゾールの分泌が過剰になることで引き起こされる、低カリウム血症高血糖についても調べます。

画像検査

ホルモン検査によりクッシング症候群が診断されると、その原因を調べるために、CTやMRIといった画像検査副腎や下垂体に腫瘍の有無を検査します。クッシング症候群には、コルチゾールの分泌過剰の原因として3つのタイプがあります。

下垂体性クッシング症候群では下垂体にできる腫瘍(下垂体腺腫)を、異所性ACTH産生腫瘍では下垂体以外の場所にできてACTH副腎皮質刺激ホルモンを分泌する腫瘍(肺小細胞がんカルチノイド腫瘍)を、副腎性クッシング症候群では副腎にできる副腎腺腫副腎がんをそれぞれ画像により調べます。

クッシング症候群の治療とは

点滴-写真

下垂体性クッシング症候群(クッシング病)、異所性ACTH産生腫瘍、副腎性クッシング症候群と3つのタイプにより原因が異なりますが、基本的には原因となる腫瘍の摘出をします。腫瘍の摘出ができない場合や腫瘍が発見できない場合は、薬物療法による治療が行われます。

手術療法

下垂体性クッシング症候群では、下垂体にできた腫瘍を手術で取り除く「下垂体腺腫摘出術」が主要な治療方法となります。

この手術は、一般的に「経蝶形骨洞的(けいちょうけいこつどうてき)手術」といわれます。顕微鏡や内視鏡によって、片方の鼻の穴から下垂体にできた腫瘍を摘出する方法です。具体的には、鼻の中または上唇の上側を切開し、鼻の奥にある蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)という奥の空洞を経由して腫瘍を切除します。

副腎性クッシング症候群については、腹腔鏡による副腎の摘出手術が行われます。お腹の中に炭酸ガスを注入し、腹腔鏡というカメラを通してモニター画面で観察しながらの手術となります。

お腹を切る、いわゆる「開腹手術」ではない腹腔鏡による手術は、出血のリスクが少ないというメリットがあります。また、傷が小さくて済むことから、入院の期間もその分短くなります。

異所性ACTH産生腫瘍の場合にも、原因となる腫瘍の切除が基本的な治療法となります。しかし、このタイプの場合、腫瘍が散らばっているために切除が難しいことがあります。

薬物療法

薬物療法で使われる薬には、ホルモンの合成・分泌を抑えるものと、ホルモンを受け取る働きを抑えるものがあります。具体的には、副腎皮質ホルモンの分泌を抑えるドパミン作動薬や、コルチゾールの合成を抑えるメチラポンミトタンが使用されます。

しかし、体内でのホルモンの働きはとても複雑なので、ホルモン剤の使用により別の症状が引き起こされることも多く、処方は慎重に行われます。使用にあたっては、きちんと医師・薬剤師の指導に従いましょう。

まとめ

クッシング症候群はホルモンバランスが崩れることで発症し、原因となる腫瘍の切除が基本的な治療となります。しかし、ホルモンはとても絶妙なバランスで私たちの体を調節しています。治療にあたっては、検査で丁寧に身体の状態を観察しつつも、患者さん自身の病気への理解も欠かせません。