ヘリコバクター・ピロリ菌は、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、そして、胃がんの原因にもなる細菌といわれています。日本人の50代以上の人に感染している人が多いといわれていますが、現在の発達した医療では治療することも可能になってきています。ピロリ菌がどのような菌なのかは、「胃潰瘍の原因?ピロリ菌ってどんな菌」をご覧ください。今回は、治療法について解説します。
ピロリ菌の検査法6つ
ピロリ菌の治療を開始するためには、本当に感染しているのか検査する必要があります。
まず、内視鏡を使った検査には、以下の3つがあります。
1.培養法
胃の粘膜を取り、培養して菌の有無を確認する検査です。判定が出るまで5~7日程度かかります。
2.病理検査
胃の粘膜を取り、顕微鏡で菌の有無を調べる検査です。この検査では、ピロリ菌の有無だけではなく、炎症の程度やがん細胞の有無やがんになりやすい胃粘膜の有無なども調べることができます。しかし、菌の量が少ないと判定が難しいといわれています。
3.迅速ウレアーゼ検査
胃の粘膜を取り、特殊な液と反応させて、色の変化を見ることで菌の有無を判定する検査です。名前が示すように、短時間での判定が可能です。
血が止まりにくくなる病気や血液をサラサラにする薬を使用している場合などは、内視鏡を使った検査ができない場合があります。
内視鏡を使わない検査としては、以下のようなものがあります。
4.尿素呼気試験
簡単に行うことができ、最も精度の高い診断法といわれています。
検査薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断を行います。ピロリ菌に感染している場合、ピロリ菌が持つ酵素によって尿素が分解されるため、呼気には二酸化炭素(13CO2)が多く検出されるのです。
5.抗体測定
ピロリ菌に感染した場合、人間の体は抗体を作って菌に対抗しようとします。血液や尿を採取してこの抗体が含まれるかどうかを調べれば、ピロリ菌がいるかどうかが分かるのです。
6.糞便中抗原測定
便の中にピロリ菌の抗原が含まれているかどうかを調べる方法です。
ピロリ菌の治療法

ピロリ菌に感染していると分かったら、治療が行われます。従来は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった病気に際しての除菌治療にのみ健康保険が適用されていました。しかし、2013年2月から慢性胃炎も健康保険の対象となっています。
ピロリ菌除去では、内服治療が一般的です。初めての除菌では、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)と2種類の抗生物質を朝夕2回、7日間服用します。この治療で約7~8割の方が除菌に成功します。最近では、新しいタイプの胃酸分泌を抑える胃薬(ボノプラザン)と2種類の抗生物質により、体質によらず高い除菌の成功率(約90%)が得られる治療方法も使用できるようになりました。
ただし、薬の飲み間違いや飲み忘れなどがあると除菌に失敗する確率が増えます。また、抗生物質が効かない細菌(耐性菌)を作ってしまう可能性があるので、指示された通り正しく内服することが大切です。
1度で除菌できなかったら
薬を正しく服用しても、体質によっては除菌に失敗することがあります。この場合、初回と同様に3種類の薬(ただし、初回とは異なる薬を使います)を朝夕2回、7日間服用します。薬を内服する期間は、アルコールが飲めないので注意が必要です。
再除菌では、8~9割が成功します。しかし、それでも除菌できなかった場合は、ピロリ菌の専門医を紹介してもらいましょう。再々除菌を行う場合、健康保険が適用されませんので注意が必要です。
まとめ
ピロリ菌の治療を開始するには、本当に感染しているのか検査する必要があります。治療には、内服薬があり、3種類の薬を朝夕2回、7日間服用します。再除菌が必要な場合は、薬を変えて同様に内服します。それでも除菌できない場合は、専門医を受診することをおすすめします。