人には相談しにくい便失禁。実は多くの人が悩んでいるにもかかわらず、生命に関わる問題ではないことから病気として認知されづらく、一人で我慢している人が多いのが実情です。便失禁についての正しい知識を獲得し、原因について理解しましょう。

目次

便失禁とは

便失禁とは排便のタイミングが自分でコントロールできないことをいいます。「いつの間にか下着が汚れている」「たびたびトイレが間に合わない」といったことがおこります。

羞恥心から他人に相談しづらく、また知名度も低いので病院に通いづらいという患者さんが多くみられますが、実は1,500万人もの人が同じ症状で悩んでおりおしりの健康06-2014正式版より)、決して珍しいことではありません

生命の危険はありませんが、便のことが気になると外出も控えがちになり、気持ちが沈み、生活の質が低下してしまいます。

便失禁の種類

切迫性便失禁

便意を感じてからトイレに行くまで間に合わない、短い時間でも排便の我慢ができない、という症状は切迫性便失禁といいます。便失禁で悩む人の16%は、切迫性便失禁に分類されたという報告があります(おしりの悩み|おしりの健康06-2014正式版より)。

漏出性便失禁

自分で意識していないのに便が漏れている、いつの間にか下着が汚れているときは漏出性便失禁といいます。

便失禁患者の半数近くは漏出性便失禁です。
そのほか、切迫性便失禁と漏出性便失禁、両方の症状に悩む方が便失禁患者の35%いるとされています(おしりの悩み|おしりの健康06-2014正式版より)。

便失禁の6つの原因

お尻を抑える人物

便意を感じていなくても、便は少しずつ作られて溜められています。このときに便が漏れ出ないのは、内肛門括約筋が無意識に働いているからです。よって内肛門括約筋が麻痺したり、筋力低下することが便失禁の一番多い原因です。

加齢

上記説明のように内肛門括約筋の衰えが原因です。また直腸の感覚が鈍くなり、便意を感じにくくなっていることも関係しています。

65歳以上の約6~8%の人がこの症状を抱えており、珍しい症状ではないといえるでしょう(オムロンより)。

肛門付近の筋肉や神経の損傷

自然分娩のときに、骨盤底の神経が引っ張られて麻痺することがあります。

また、分娩に際して会陰裂傷(会陰部の組織が裂けること)が起こると、内肛門括約筋が裂けることがあります。見た目上は会陰裂傷を起こしていないのに、肛門括約筋裂傷が起こっているケースもあります

肛門括約筋裂傷が起こった場合、分娩直後から便失禁の症状が出る人もいますが、1年以上経ってから便失禁に悩まされるようになる人もいます。

直腸や肛門の病気

複雑な痔の手術では肛門括約筋が損傷することがあり、それが誘因となって便失禁の症状が生じる場合があります。

また直腸が肛門から出てしまう直腸脱も便失禁、排便困難などの症状があります。

直腸がんの手術後

直腸がんの手術では、肛門から腫瘍のみを切除する手術で済む場合もあれば、直腸もあわせて切除する場合、転移の可能性も考えて周囲のリンパ節や神経も切除する場合があります。

直腸を切除した場合は肛門と結腸を繋ぎますが、結腸は直腸より細く、また直腸ほどは膨らまないので、便を溜めておく力が弱まります。すると、便失禁が起こる原因となります。

糖尿病

糖尿病の合併症の一つである神経障害では肛門の筋肉が衰えてくることがあり、便失禁を引き起こします。

脳梗塞、認知症

便意を感じにくくなったり、判断能力の低下からトイレに行くという行動がとれなかったりトイレの場所が分からなくて間に合わなかったり、といったケースがあります。

まとめ

便失禁は高齢者だけの問題ではありません。出産後の女性やがん、痔の手術後の若い人にも起こり得ます。次の記事では自分で出来る改善法や運動、薬の治療内容を説明していますので、是非そちらも合わせて読んでください。