糖尿病には細い血管が侵される、神経障害網膜症腎症の3つの合併症と、太い血管が侵される狭心症心筋梗塞脳梗塞の2つの合併症があります。

今回は代表的な細い血管が侵される3つの合併症の一つである神経障害についてお話します。

目次

糖尿病による神経障害の症状

糖尿病神経障害は、血糖コントロールが悪い状態(HbA1c≧7.0%)で約3年が経過するとその兆候が表れてきます。

診察室で足首の後ろ側のすじ(アキレス腱)を診察用ハンマーで叩くと、正常な人はピョコンと足が動く(アキレス腱反射といいます)のですが、糖尿病神経障害が始まった人ではその反射が無くなります。

血糖が悪いままさらに数年放置すると自覚症状が出てきます。脳から一番遠い神経に当たる両足の指先の神経から障害され痺れで始まり、足の裏の違和感(素足なのに足と床の間に紙が1枚挟まっているような…と表現される方が多いです)、痺れの増強から人によっては痛み神経障害性疼痛と呼びます)に変わり、特に夜間に強い痺れや痛みに悩まされ寝るのも一苦労になってきます。そして最後には痛い、熱い冷たい、何かに触れているなどの全ての感覚が鈍ってきます(スリッパを履いているかどうかもわからないそうです)。

壊死を起こすことも…防ぐためには?

当然、怪我をしても痛く感じることはなく怪我したことに気づきません。その上、動脈硬化による血液の巡りも悪いため、小さな怪我でも治りが悪く、膿んで潰瘍を作りその周りから黒ずんできます(壊死です!)。

壊死を起こすと切断を余儀なくされます。日々、お風呂で足を洗う時や靴下をはく前などに自分の足の指の間や裏をよく見て下さい。水虫や魚の目や胼胝(たこ)があれば要注意です。壊死は、そこから始まることが多いです。

治療法は?

飲み薬-写真
治療というより悪化させないために、血糖コントロールを良くするしかありません。HbA1cが7.0%以上の場合では、過剰な血糖の一部は神経で処理され、その老廃物が神経細胞内にたまり障害を起こすことがわかっています。ですから糖尿病性神経障害を防止するため、HbA1cが7.0%に達しない場合は、という神経細胞内に老廃物をためない薬の内服が勧められます。また痛みについてはサインバルタという薬が神経障害性疼痛で保険適応になっています。

まとめ

糖尿病による神経障害では、両足から症状が出始め、痺れから徐々に痛みが発生します。最悪の場合、壊死を起こし、切断しなければならなくなることもあるのです。

何より、薬に頼らず良い血糖コントロールを維持し合併症を予防しましょう。糖尿病合併症から自分の体を守れるのは自分しかいませんから。