周期性四肢麻痺という病名を聞いたことはあるでしょうか?「麻痺」という名前がついていますが、筋肉が脱力することで四肢(手足)が動かなくなってしまう(麻痺)症状が起きる病気です。このような症状(脱力発作)が繰り返されるため、「周期性四肢麻痺」と呼ばれています。
症状の特徴、原因、治療法について、より詳しく解説します。

目次

周期性四肢麻痺の症状

周期性四肢麻痺は、筋力が突然に脱力することで、四肢(手足)に運動性麻痺をきたす疾患です。症状には、次のような特徴があります。

  • 脱力発作は突然起こり、手足に力が入らないことで動かなくなる
  • 症状は数時間~数日間で回復し、後遺症は残らない
  • 激しい運動をした翌朝などに起こることが多い
  • 麻痺の症状は脚からはじまり、腕の方へと移行していくことが多い
  • 四肢以外の神経・呼吸筋などには症状がないので、意識障害・感覚障害などは起こらない
  • このような脱力発作が繰り返す(ただし、厳密には「周期的」ではない)

周期性四肢麻痺の原因

はっきりとした原因はわかっていませんが、骨格筋のタンパク質をつくる遺伝子の一部が変異するために起こる遺伝性家族性)周期性四肢麻痺と、その他の病気が原因となって起こる二次性周期性四肢麻痺の2種類に分けられます。

遺伝性(家族性)周期性四肢麻痺

この疾患はさらに、麻痺の症状が起こっているときの血清カリウム(K)値によって、低カリウム性高カリウム性に分けられます。カリウムとは、電解質と呼ばれるもののひとつで、細胞内の浸透圧の維持や神経や筋肉の活動調整、腎機能の調整などの働きをしています。

骨格筋に付着するチャネルと言われる電解質を調整するタンパク質に異常があり、これを形成する数種類の遺伝子異常が発症の原因として知られています。

発症年齢は、低カリウム性では1020歳代の発症が多いのに対し、高カリウム性では小児~20歳代で発症が多く比較的低い年齢での発症も見られるのが特徴です(日本筋ジストロフィー協会より)。

どちらのタイプの場合も、運動後の安静は麻痺発作を誘引する要因であるとされています。加えて、低カリウム性の場合には糖質・ナトリウムの過剰摂取、高カリウム血性では寒さ飢餓が、発作を誘引することがあるようです。

二次性周期性四肢麻痺

ホルモン異常の病気などに続発して起こるタイプの周期性四肢麻痺です。中でも、甲状腺機能亢進症、原発性アルドステロン症に合併しているケースが多いようです。特に、甲状腺機能亢進症に合併する周期性四肢麻痺は、東洋人の男性に多い傾向があります。

二次性周期性四肢麻痺では、麻痺発作時の血清カリウム値は低値を示すことが多く、国内の周期性四肢麻痺の患者さんの多くがこの二次性周期性四肢麻痺に該当すると考えられています。

上にあげた病気の他に、アジソン病や腎不全、アルコール依存症のほか、漢方薬や利尿剤などの薬の服用などが原因となることがあります。

周期性四肢麻痺の治療と経過

二次性周期性四肢麻痺の場合には、原因となる疾患の治療を行います。原因となる疾患の状態が改善すれば、麻痺発作も起こらなくなると考えられています。

遺伝性(家族性)周期性四肢麻痺では、残念ながら根治治療はいまだ確立されていません。症状と上手に付き合っていくため、麻痺予防の治療を中心に発作時には症状を抑えるための処置を行います。

麻痺発作の予防

麻痺発作を予防するためには、激しい運動や特定の食べ物など何が発作を誘発するのか把握した上で、生活習慣に注意することです。

また、アセタゾラミドなどの薬を服用することがありますが、現在は保険適用でありません。患者さんによっては状態を悪化させてしまうことがあるため、患者さんの体に合っているかどうかを慎重に見極めながら服用する必要があります。

発作時の処置

低カリウム血性の場合、発作時にカリウム製剤の内服によるカリウム補充療法を行います。原則として経口からの投薬となりますが、難しい場合は鼻からチューブを通して胃につなげる経管ルートによる投薬あるいは点滴での投薬も方法としてあります。

高カリウム血症の場合、発作が軽度である傾向があるため経過観察をするというケースが多いです。ただし、高カリウムによる心停止・不整脈に注意する必要があるため、発作時には心電図を装着しモニタリングを行います。

日常生活の注意点

医師

治療は、麻痺を起こしてしまうような行動を避けることが中心となります。日常生活での注意点として、下記の内容があげられます。

  • 激しい運動をしない
  • 寒い場所に長時間いたり、冷たいものを長時間触ったりしない
  • 低カリウム血性の場合は低炭水化物高カリウム食を心掛ける
  • 高カリウム血性の場合は高炭水化物低カリウム食を心掛ける
  • 高カリウム血性の場合は食事回数を分け、空腹時間を作らない
  • 朝食をしっかりと食べる

また、全身麻酔を施して治療を受ける際、全身麻酔によって脱力を来すことがあるため、手術を受ける際には必ず、周期性四肢麻痺にかかったことのある旨を医師に伝えるようにしましょう。

まとめ

比較的若い年齢で発症し、療養期間は長期に渡ることが多いです。しかし、中年期以降に症状が少しずつ良くなってくる患者さんも多く、生命を脅かすような病気では決してありません。

麻痺発作を誘発する条件・状況を避けてしっかりと管理することで、病気とうまく付き合っていくことが重要です。

中には何度も麻痺発作を繰り返すことで、高齢期以降に筋力低下などの影響が出ることもありますが、やはりこの場合も早めに治療を開始し、麻痺発作を予防することが有効と考えられています。