電解質は私たちの体に不可欠で、多すぎても少なすぎても体の不調を招きます。電解質のバランスは血液検査で調べることができますが、ここでは、カルシウム、リン、マグネシウムが異常値の場合に考えられる疾患について解説します。

目次

カルシウム値が異常な場合に考えられる病気とは?

カルシウムは人の体に最も多く存在する電解質です。カルシウムの99骨と歯に存在しますが、残りの1血液中や筋肉にあり、出血時の止血を促し、神経の働きや筋肉運動に関わっています(江崎グリコ株式会社より)。

血液中のカルシウムは、副甲状腺ホルモンビタミンDによって調節されています。

副甲状腺ホルモンは、骨に蓄えられているカルシウムを血液中に補充し、腎臓から尿としてカルシウムが出すぎないようコントロールする働きがあります。

副甲状腺機能が亢進(こうしん、高ぶり進むこと)すると、ホルモンが過剰に分泌され、血液中にカルシウムが補充される作用が強まるため血中カルシウムは高値となります。また、骨折がんの骨への転移多発性骨髄腫など骨の病気でも、血液中にカルシウムが漏れるので高値となります。

他方、ビタミンDは腸からのカルシウム吸収を助けます。ビタミンD不足になるとカルシウムを吸収できず、血液カルシウムは低値になります。血液中のカルシウム不足が続くと、骨にあるカルシウムが血液中に補充され、骨がスカスカになる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の原因となります。

また、副甲状腺機能が低下すると血液中のカルシウムは低値になります。

著明な高値では筋力低下、不整脈、意識障害など、低値ではけいれんなどの症状が起こるリスクがあります。

血中カルシウムが基準値を外れた場合、次のような病気が考えられます(基準値は、検査を行う組合・団体・病院によって異なる場合があります)。

  基準値

基準値を外れた場合に
疑われる病気

カルシウム 8.0~
10.0mg/dl
【高値】

【低値】

出典:神戸市立医療センター中央市民病院を参考にいしゃまち編集部作成

カルシウムは牛乳、乳製品、肉類、骨ごと食べられる魚などに含まれています。電解質は骨格を作るために重要な物質なので、しっかりと摂りたいものですね。日本人の食事摂取基準(2015 年版)(厚生労働省より)によれば、成人男性では1日650~800mg、成人女性では1日650mgの摂取が推奨されています。

加えて、カルシウムの吸収を助けるビタミンDも併せて摂るようにしましょう。ビタミンDは、魚介類、卵類、きのこ類に含まれています。

リン値が異常な場合に考えられる病気とは?

リンは、その85骨や歯に含まれ、残りの15筋肉、脳、神経などの様々な組織に含まれ、エネルギーの産生に活用されています(江崎グリコ株式会社より)。

リンは腎臓から尿として、残りは腸から便として排泄されます。腎機能に異常があると尿の排泄が上手くいかず、血液中のリンが高値になります。また、副甲状腺ホルモンにはリンの尿中への排泄量を増加させる働きがありますが、副甲状腺機能の低下でホルモンの分泌が不足するとリンが排泄されにくくなり、血液中のリンは高値になります。

反対に、副甲状腺機能の亢進によって過剰にホルモンが分泌されると、リンは低値になります。

下記の表にリンの基準値、異常値で考えられる病気を挙げています(基準値は、検査を行う組合・団体・病院によって異なる場合があります)。

  基準値 基準値を外れた場合に
疑われる病気
リン 2.4~
4.7mg/dl
【高値】

【低値】

  • ビタミンD欠乏症
    (くる病)
  • 副甲状腺機能亢進症

出典:神戸市立医療センター中央市民病院を参考にいしゃまち編集部作成

リンは魚類、牛乳・乳製品、大豆、肉類など多くの食品に含まれており、通常は不足しません。むしろ多く摂りすぎるとカルシウムの吸収をさまたげるため注意が必要です。日本人の食事摂取基準(2015 年版)(厚生労働省より)では、成人の摂取上限量を男女とも1日3000mgまでと設定しています。肉類にかたよった食事やインスタント食品の多い食事では、摂取量が多くなりやすいので注意しましょう。

マグネシウム値が異常な場合に考えられる病気とは?

医師-写真

マグネシウムは骨や歯を形成するほか、体内の様々な代謝を助ける機能を持ち体温・血圧の調節にも役立っています。

血液中にあるマグネシウムは主に腎臓から尿として排泄されます。腎機能が低下し、尿の排泄が滞ると血液中のマグネシウム値は高値になります。他方、食事として摂取したマグネシウムは腸から吸収されます。嘔吐や下痢を起こすとマグネシウムを失い、血液中のマグネシウムは低値になります。

マグネシウムが低値となると、疲れやすさ、脱力感、痺れなどを感じ、さらに低くなると筋肉のつれ、震え、不整脈、不安感などの症状が出現するリスクがあります。

血液中のマグネシウムが異常値を示した場合、考えられる病気です。

  基準値 基準値を外れた場合に
疑われる病気
マグネシウム 1.8~
2.6mg/dl
【高値】

  • Mg剤過剰投与
  • アジソン病
  • ビタミンD投与
  • 急性肝炎
  • 急性腎不全
  • 慢性腎不全
  • 甲状腺機能低下症

【低値】

  • 吸収不良症候群
  • 急性膵炎
  • 原発性アルドステロン症
  • 高カルシウム血症
  • 糖尿病
  • 慢性アルコール中毒
  • 利尿剤の使用
  • 下痢
  • 嘔吐

出典:SRL総合検査案内を参考にいしゃまち編集部作成

マグネシウムはアーモンドなどの種実類、魚介類、海草類、野菜類、豆類などに多く含まれ、普通の食生活で摂りすぎることはありません。日本人の食事摂取基準(2015 年版)(厚生労働省より)では、摂取推奨量として成人男性では1日320~370mg、成人女性で1日270~290mgと設定されています。

まとめ

電解質は、私たちの体を作り、働かせる重要な働きをしています。電解質は食事から体内に補給されるため、バランスのよい食生活が大切ですね。また、電解質の異常をきたす病気が隠れている可能性もあり、血液検査で異常を指摘された場合は医療機関で診断を受けることが重要です。