風邪などの後に起こるギラン・バレー症候群はどうやって診断されるのでしょうか。また予後(治り)は良い病気として知られていますが、重症化した場合はどういった治療が行われるのでしょうか。今回はギラン・バレー症候群の検査や診断、治療について紹介していきます。ギラン・バレー症候群のメカニズムや症状などについては「風邪の後に体に麻痺が現れたら疑う「ギラン・バレー症候群」とは?」をご覧ください。

目次

診断の決め手となる症状

ギラン・バレー症候群が疑われるときは、2つの症状が出ていることを確認します。

1.二肢以上の筋力低下

四肢(両腕両足)のうち、二肢以上で筋力低下しているか調べます。「どれほど筋力が低下しているか」ではなく、「筋力低下が急速に進行している」ことが診断の決め手になります。

2.深部反射消失

足が床につかない状態で座り、膝の前にある腱の部分を叩くと正常時には足が前に出ます。しかし深部反射消失の場合は足が前に出ません。これは末梢神経が障害を受けることで起こります。ギラン・バレー症候群の診断に重要です。

病院で行われる検査

詳細な検査も合わせて行うことでギラン・バレー症候群かどうか調べます。

筋電図・神経伝達速度検査

末梢神経が障害を受けると、生体の情報である電気信号を伝達する速度が遅くなったり伝わらなくなったりします。

血液検査

患者さんの約60%の人が自己抗体である抗ガングリオシド抗体陽性になります(医薬品医療機器総合機構より)。ガングリオシドとは脳、神経組織に比較的多く含まれる構成成分で、他に末梢神経に障害を与える病気と区別する際にも有効な検査です。

髄液検査

通常は髄液中の細胞数の増加と蛋白質の増加は比例しますが、ギラン・バレー症候群は1週間を過ぎると細胞数は増加していないのにタンパク質濃度が増える現象(蛋白細胞解離)がみられるようになります。

検査については腰椎の椎間板の間に針を刺して脊髄の周りを流れている髄液を採取します。

治療法は?

血液を交換する男性-写真

一般的には発症後4週間ほどで症状が治まり、次第に回復するとされています。

しかし症状ピーク時(極期)の筋力低下が著しかったり、症状が回復し始めるまでの期間が長かったりする場合、予後が悪くなります。具体的には後遺症を残したり死亡したりする可能性があります。

対症療法として最重要なのは呼吸筋の麻痺が出現したときの呼吸の確保です。筋力低下によって自分で呼吸することが困難な場合は、速やかに人工呼吸器の装着を行います。

重症度を軽減し、回復を早めるためには、病気の原因となっている抗体を含む血漿を交換する血漿交換法、献血から得た免疫機能を担うタンパク質である免疫グロブリンを点滴で補う方法である経静脈的免疫グロブリン療法(IVIg)を行います。

ちなみに自己免疫疾患の治療薬としてよく選択されている副腎皮質ステロイド薬の単独投与は、ギラン・バレー症候群には無効です。

それぞれの治療法について詳しく説明します。

経静脈的免疫グロブリン療法(IVIg)

免疫グロブリン製剤とは、人間の血液中に含まれる免疫グロブリンGというタンパク質を高純度に精製、濃縮したものです。その製剤を点滴します。使われる血液は安全が確認されているものが使われています。

メリット・デメリット

明らかな改善例があり、治療効果が期待できるとされています。本邦では第一選択の治療薬として使われています。

また特別な装置や専門技術を必要としないので、すぐに治療を開始でき、患者さん側の精神的負担が軽いというメリットがあります。

一方で費用が高いというデメリットはあります。副作用については頭痛、悪寒、無菌性髄膜炎、皮疹、悪疹、腎不全などが報告されていますが、後で紹介する単純血漿(けっしょう)交換法よりも副作用の頻度は少ないとされています。

治療ができない・向かないケース(適応禁忌)

過去に免疫グロブリンを投与されたとき、ショックや過剰な免疫反応(過敏性反応)があった人はできません。

また以下の要件に当てはまる人は注意が必要です。

  • 免疫グロブリンの一つであるIgAが欠損している人
  • 重症度の高い肝不全・腎不全・循環不全(心臓や血管に異常あり)の人
  • 血清の粘度が高い人(脂質異常症、クリオグロブリン血漿、高γグロブリン血漿、糖尿病など)
  • 深部静脈血栓症を最近発症した人

血漿交換法(単純血漿交換法)

血液を血球などの固体成分と血漿などの液体成分に分け、病気の原因と考えられている物質(自己抗体)が含まれている血漿を分離して捨てます。そのままでは体内の血漿が足りなくなるので、新鮮凍結血漿やアルブミン溶液を血球などと混ぜた状態にして患者さんの体に戻します。

腎不全、脳や心臓の血管障害、体内のたんぱく質の一つであるIgAの欠損など合併症がある場合は血漿交換法が第一治療法として用いられます。

メリット・デメリット

血漿交換療法は早期から効果があり、明らかな改善例があります。ただ費用が高い、特別な装置・装置の専門知識のある人が必要、長い治療時間、精神的負担が大きい、太い静脈の血管確保が必要などデメリットも多くあります。

単純血漿交換法は血漿浄化療法の一つで、ほかに免疫吸着法、二重膜ろ過法がありますが同等の治療効果と報告されています。

治療ができない・向かないケース

体内の血液循環に障害のある人、感染症にかかっていて原因菌がまだ活動中の人、出血しやすい人には禁忌とされています。

このほか以下の要件を満たす人は注意してください。

  • ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬:血管を広げたり、腎臓のナトリウムや水分の排出機能を高めて、血圧を下げる薬)を飲んでいる人
  • 妊娠の合併のある人
  • 小児や高齢者
  • 体重40kg以下の人
  • 発作性の高血圧・低血圧のある人

まとめ

ギラン・バレー症候群を発症していても、通常は自然と治っていきます。ただ症状がひどかったり、期間が長引く場合は命に関わったり、後遺症が出たりします。そういった危険を回避するためにも、早い診断、治療の開始が必要になってきます。

治療法については、患者さん毎に病状や検査結果等を考慮して決められますので、疑問点があれば主治医の先生とご相談されることをおすすめします。