会社や学校の健康診断では、尿検査が行われます。その際、「尿蛋白(たんぱく)」という項目を見かけたことがある方は少なくないでしょう。

尿検査では、試験紙と呼ばれる専用の紙に尿を付着させることで、尿中の糖分やたんぱく質、血液成分の有無を確認することができます。この検査で比較的頻繁に発見される異常が、蛋白尿です。

蛋白尿は主に、腎臓の異常の疑いを見つけるための大切な指標として用いられています。ここでは、蛋白尿とは一体何なのかについて説明します。

目次

腎臓の機能について

蛋白尿について理解するためには、まず腎臓の機能について簡単に知っておく必要があります。

腎臓は、「血液中から不要な物質や水分を取り除く・調節する働き」を果たしています。
腎臓の機能に異常が生じると、血液中に不要な水分が蓄積することで高血圧に陥ったり、不要な物質が排泄されないことで尿毒症が起こったりします。

高血圧や尿毒症が持続すると最悪の場合死に至る危険性もあるため、腎臓の状態はしっかりと把握しておく必要があるのです。

蛋白尿ってなに?

通常、尿中には蛋白質はほとんど含まれません。腎臓には糸球体と呼ばれるフィルターがあり、蛋白質をはじめとする身体に必要な物質が尿中に排泄されるのを防いでいます。

ですが腎臓が何らかの障害を受けて糸球体が障害されると、フィルターとしての機能が失われてしまいます。そうすると、血液中の蛋白質成分が尿の中に漏れ出し始めます。これが蛋白尿です。

蛋白尿が出ているということは腎臓が何らかの形でダメージを受けている疑いがあります。
そのため、蛋白尿は腎臓の障害のバロメーターとして用いられています。

また、尿中に溶けだしている蛋白質の種類を調べることで、腎臓がどのようなダメージを受けているのか推測することもできます。

蛋白尿が出る原因

蛋白尿が出る原因はいくつかあります。
腎臓の異常が原因となっている場合、糸球体が免疫機能や血管障害、糖尿病などによって障害されていることがあります。病名としては、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症などが存在します。

腎臓以外が原因となっているケースもあり、多発性骨髄腫(形質細胞と呼ばれる免疫を担う細胞が異常に増殖する病気)や尿路結石、膀胱や尿管の腫瘍などの疑いがあります。特に多発性骨髄腫では、ベンスジョーンズ蛋白と呼ばれる特殊な蛋白質が検出され、これが診断に大きく役立っています。

そのほか、身体に異常がない場合も激しい運動や入浴などをした際に蛋白尿が認められることもあります。これは生理的蛋白尿と呼ばれており、特に問題はありません。

蛋白尿の検査方法

蛋白尿が発見されるきっかけとして、定期健康診断などで行われる試験紙による尿検査(尿定性試験)があります。一般的には、蛋白質の量を五段階(少ない順に-、±、+、2+、3+)で判定します。
この検査法で顕著な蛋白量が認められた場合は、個別でより詳細に蛋白質の量を計測するための検査(尿蛋白定量検査)を実施します。

まとめ

蛋白尿は腎機能の悪化を示唆する大切な徴候です。軽度なもの(±や+など)を含めると比較的多くの方が陽性の判定を受け取ったことがあるかもしれません。

健康診断は、“引っ掛かった”からといってすぐに「病気」というものではありません。しかし、病気の可能性を知る上ではとても大切なものです。尿定性試験で異常が認められた方はぜひ、医師の診察を受けるようにしましょう。