目次

がんが治った後も、自立していけるように

―小児がんが治って退院した後の「フォローアップ外来」についてお聞きします。がんの種類などによっても異なると思いますが、どのような内容でケアを行っているのでしょうか?

その子の受けた治療内容によって、かなり異なります。とても強い治療をした場合、何年経っても数ヶ月に一度くらいのフォローが必要ですし、何もなければ1年に1回や2年に1回でも良いでしょうし。

フォローアップは、基本的には血液検査やさまざまな検査をして、ということになります。ただ、長期フォローアップは私たち医師が患者さんを追いかけていくこととは少し違います。患者さんが自立することを助けるというのが、長期フォローアップの考え方です。

ただ、治療を受けてから何十年も経った時に、「30年前に私はどんな治療を受けたか」ということは誰かが知っていないといけません。そういうデータを、中央の長期フォローアップのデータセンターで保管しておくようになることはとても重要ですし、そのデータをもとに「あなたの場合、がん検診を早く受けた方が良い」とアドバイスしてあげることができるのではないでしょうか。これからの課題だと思います。

あとは、妊娠・出産の問題です。小児がんの子どもたちは閉経が早いことが多いので、早めに結婚して、早めに子どもを産めるようにといったアドバイスもきちんとできるようにすることが必要です。

長期フォローアップは実は、がんのことを見ているわけではありません。がん以外のこと、内分泌の問題やメンタルの問題など、いろんなことを総合的に見ないといけないので、がん自体のフォローアップとは少し違います。総合力がとても大切です。

 

―最後に、「いしゃまち」の読者の方々に一言メッセージをいただけますでしょうか。

小児がんのサバイバーの方たちがみんな一番におっしゃるのは、「私たちは何も特別な存在じゃない」ということです。小児がんだから、小児がんだったからではなくて、普通の子と変わらないということをもっとアピールしてほしい部分はあるようです。変な目で見られてしまっているようなところはあるし、保護しているようで実は差別していることもあるような気がします。

繰り返しになりますが、本当に普通の子なんです。ただ単にそういう病気があって、少しだけ治療をしたということで、普通の子となんら変わりありません。それを一番にお伝えしたいと思います。

編集後記

この日、実際に国立成育医療研究センターの病棟を見学させていただきました。松本先生と一緒に病棟内に足を踏み入れた途端に歩み寄ってくるお子さん、親御さんとなにやら話しながらニコニコしているお子さんなど、たくさんの子どもたちの姿を目にしました。

何より強く感じたのは、「本当に、普通の子どもたちだ」ということです。ただ可哀想というわけではなく、楽しい時には笑い、つらい時には泣くであろう、ごく普通の、そして愛らしい子どもたちの姿がそこにはありました。

この連載では引き続き、看護師、保育士、歯科医師などのインタビューをお届けします(次回は、緩和ケア認定看護師・木須 彩さんのインタビューをお送りします)。

※取材対象者の肩書・記事内容は2018年1月19日時点の情報です。