近年テレビで取り上げられることが多くなったため、「B型肝炎ウイルス」という言葉を聞いたことのある方は多いと思います。
ここではどのようなウイルスか、どのように感染を予防するかについて説明していきます。

目次

B型肝炎ウイルスとは

B型肝炎ウイルスは、B型肝炎の原因となるウイルスです。
英語表記のHepatitis B virusが由来となり、HBVと呼ばれることがあります。

HBVによって発症するB型肝炎は、ウイルスが体内に侵入した際に起こす体の免疫反応によって肝細胞が壊され炎症が起きている状態です。

HBVにはどうやって感染するの?

HBVは、血液や体液を介して感染します。

感染経路の例には、性行為輸血ピアスの穴あけ汚染した注射器の使用、および母子感染があります。

以前は輸血による感染が多かったですが、輸血製剤へのスクリーニング検査が導入されたことで、輸血によるHBV感染は減少しています。
母子感染についても、新生児へワクチン注射を行う対策措置が取られています。
現在では、成人のHBV感染のほとんどの原因が性行為によるものです。

HBVには、下記2種類の感染形式があります。

一過性感染

成人がHBVに感染するとほとんどの場合、一時的な不顕性感染の状態や急性肝炎を経て、自然にウイルスは体外に排除されます(自然治癒)。

不顕性感染とは、ウイルスに感染しているにも関わらず症状が出ない状態を指します。

急性肝炎を発症すると発熱、倦怠感、食欲不振などの症状を呈し、引き続き黄疸を認めるようになります。
これらの症状は約一か月程度続きますが、免疫機能に異常がない場合、HBVは排除されます。

極めてまれに、急性肝炎を経て劇症肝炎を発症するケースや、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんの経過をたどるケースがあります。
劇症肝炎では、急激に肝不全となり、意識障害や昏睡などを呈します。

持続感染

持続感染とは、6ヶ月以上、体内に肝炎ウイルスを保有している状態を指します。

免疫機能が未発達な乳幼児、免疫機能が低下する疾患を保有している方や免疫抑制剤の投与を受けている方がHBVに感染すると、肝炎を発症しないため、ウイルスを排除することができません。
このようにウイルスに持続感染し、体内に保有している状態をキャリアと呼びます。

乳幼児期にHBVへ感染した場合、思春期までの数年から数十年の間、ウイルスは排除されず持続感染します。

思春期頃からは免疫機能が発達するため、免疫反応がおこり、HBVを排除しようとし始めます。

その後、無症候性キャリアとなる場合と慢性肝炎を発症する場合とがあります。

無症候性キャリア

無症候性キャリアとは、HBVに感染しているが肝機能は正常な状態です。

そのまま無症候性キャリアの状態が続く場合と、慢性肝炎、肝硬変を経て肝臓がんを発症することがあります。

慢性肝炎の発症

HBV排除のために働く免疫によって肝細胞が長期間障害を受けるために発症します。

まれに、肝硬変を経て肝臓がんを発症することがあります。そのため、HBVキャリアの方は、肝臓に異常がないかどうか定期的に検査を受けましょう。

HBV感染を予防するために

コンドーム

現在、HBVの主な感染原因は性交渉です。

コンドームの使用は感染予防につながります。

しかし、コンドームにより100%感染を防ぐことができないため、不特定多数の人々との性交渉はなるべく避けてください。

日常生活では次のことに気を付けましょう。

  • 血液や体液のついたものは十分に消毒しましょう
  • カミソリや歯ブラシ、タオルなどは他人と共有しないようにしましょう。

血液や体液のついていない食器、ドア、椅子、筆記用具などを触ったり共有したりすることは、HBV感染の可能性がないと言われています。

HBワクチンによる予防

2016年2月から、B型肝炎ワクチンは定期接種化されています。

HBワクチンの接種は、HBVへの感染、さらにはウイルス性肝炎由来の肝臓がんを防ぐことができます。病気のリスクを下げるためにワクチン接種を検討してみてはいかがでしょうか。

0歳児に限っては無料で接種を受けることが可能です。

接種回数は3回で、生後2か月から接種を受けることができます。2回目の接種は、1回目から27日を過ぎてから、3回目の接種は、1回目から139日(20~24週後)を過ぎてから行います。

まとめ

肝炎や肝臓がんが連想されるB型肝炎ウイルスですが、正しく予防すれば感染のリスクを下げることができます。もしも感染の可能性がある場合は、速やかに専門医を受診してください。HBVキャリアの方は定期検査による経過観察を行うことが重要です。