B型肝炎は発症したとしても、顕著な症状がほとんどないため、自分が感染していることを知らずに生活している患者さんも多いということころが厄介な感染症です。様々な対策がなされている現在でも、毎年1万人の新規感染者がいるといわれています(日本肝臓学会より)。徐々に進行して肝硬変や肝がんの原因ともなるB型肝炎は、予防が何より重要です。また、もし感染してしまったときには早めの治療がカギとなります。

目次

B型肝炎にならないために

B型肝炎ウイルスは、主に次のような経路をたどり感染します。

  • 母子感染
  • 医療行為(針刺し、輸血、移植、注射器の使いまわし)による感染
  • 性交渉による感染
  • 医療機関以外で行うピアスの穴明け、入れ墨、麻薬使用時の注射器の使いまわし
  • 激しいスポーツ中に起こった出血を介するもの

母子感染、医療行為による感染は、国による管理徹底により現在ではほとんど見られなくなりました。しかし一方で、性交渉による感染、医療機関以外でのピアスの穴あけなどの原因による感染など、これまでとは異なる感染経路による感染が増加しています。こうした感染経路は街中で起こる可能性の多いものですが、個人個人での予防が可能なものでもあります。

どのように予防するか?

これまで、母子感染に対しては母子感染予防対策事業、医療行為などによる感染に対しては医療従事者の予防接種、移植や輸血に使用する臓器や血液に検査の徹底、注射器は使い捨てとするといった対策がなされてきました。

さらに、知らずに感染してしまうこと、感染を拡大させてしまうことを防ぐ目的で、平成2810月からはB型肝炎の予防接種が定期化されました。乳児期に予防接種により免疫を獲得しておくことで、感染のリスクを減らします。

さらに、不慮の感染を予防するためには以下のような行動・意識が大切です。

  • 自分自身がキャリア(ウイルスを持っている状態)となっていないかを、検査で確認する
  • 自分の家族にキャリアがいないかを確認しておく
  • パートナーと一緒に検査を受けておく
  • 性交渉時にはコンドームを使用する
  • ピアスの穴明けや入れ墨を行う環境に、感染の可能性がないかを確認する(針や器具の使いまわしをしていないことを確実に確認する、疑わしいときは行わない)
  • 麻薬は使わない

もし、感染してしまったら…治療について

現在、B型肝炎ウイルスの感染に対して、ウイルスを完全に除去する治療方法は残念ながらありません。しかし、早期に治療を始めることで、肝臓へのダメージ、肝硬変肝がんへ進行するリスクを減らすことができます。感染が分かったら、すぐに治療を開始する必要があります。

一方で、感染を知らずに放置し、肝硬変や肝がんになって初めて気づくということも起こりえます。感染原因となるような行為に心当たりがある場合には、一度検査を受けることも有効といえるでしょう。

治療目標

治療の目標にはふたつのパターンがあります。

まず、肝炎を既に発症している場合には、ウイルスを増やさないようにして、炎症を抑えて肝炎の状態から脱することが目標となります。肝炎の状態が続いたり、悪化したりすると、肝硬変・肝がんへと進行していくリスクが高くなります。

そして、肝炎をまだ発症していない場合には、肝機能の状態をみながら肝炎を発症させないように経過観察をします。

治療方法

バランスのいい食事

肝炎発症時の治療方法はウイルスに対して抗ウイルス薬を服用する方法と、肝炎を抑える方法があります。

インターフェロン(抗ウイルス薬・注射)

35歳未満で治療期間を短くしたい場合遺伝子型を調べて効果が望める場合に推奨される方法です。週1回~3回の注射を数週間続けます。治療が効果を発揮すれば、注射をやめてからもB型肝炎ウイルスは増殖せず肝炎が沈静化します。逆に効果が十分に発揮できないと、投薬をやめたあとにウイルスが再び増殖してしまい、再び肝炎となってしまうケースも多いようです。この治療で効果が見られるケースは3040といわれてます(肝炎情報センター)。

副作用は、38度を超える発熱や全身倦怠感関節痛筋肉痛の症状が投薬開始の頃にみられる場合がありますが、これらの症状は数週間でみられなくなることがほとんどです。

また、インターフェロンは骨髄の働きを抑える作用があるため、白血球、赤血球、血小板の数の低下が起こります。持病として糖尿病や膠原病がある場合、悪化させることもあるため、注意が必要となります。

核酸アナログ薬(抗ウイルス薬・内服)

平成12年に承認された比較的新しい治療方法です。インターフェロンが有効でないタイプの方、インターフェロンで効果のなかった方、重症の肝炎の方などで選択されます。多くの患者さんに有効ではありますが、インターフェロンと違い、薬をやめてしまうとウイルスが増殖し再び肝炎を起こすことがほとんどだという難点があります。服用を開始したあと、自己判断で中止することは絶対にしてはいけません。副作用はインターフェロンほどの強いものはありません。

また、以前は薬剤耐性ウイルスの問題がありましたが、最新の核酸アナログ製剤では耐性株の出現は少なくなっています。また、別の核酸アナログ製剤を併用することで、耐性株を抑えることができるということが分かったので、薬剤耐性への心配は少なく薬剤の使用ができるようになっています。

肝庇護法(肝機能を強化させる薬・注射/内服)

肝炎を抑えることが目的の治療方法で、内服薬の使用が一般的です。インターフェロンや核酸アナログ薬の使用で効果が出ない場合、使用できない場合、急性肝炎で症状がひどくない場合などに選択されます。軽度の肝障害にはある程度の効果を発揮することがあります。しかし、強い症状が出ている場合には有効ではありません。

肝庇護法には小菜胡湯などの漢方薬ウルソデオキシコール酸(ウルソ)の経口投与、グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンシー)の静脈内注射などがあります。

まとめ

肝炎は、現在進行形で治療法の研究・国による感染対策が進んでいる病気のひとつです。インフルエンザのように毎年流行る、というものではないものの、誰でも感染する可能性があることに変わりはありません。新たに増加しつつある感染経路については、一人一人が正しい知識を持ち、注意の目を光らせていく必要があります。