1か月健診の時などに、赤ちゃんに甘いシロップを飲ませた経験のある方もいらっしゃると思いますが、あの黄色のシロップはなんなのか、なんのために飲ませるのかご存知でしょうか?
あのシロップを飲ませることで、赤ちゃん特有の怖い病気を予防することができます。ここでは、ケイツーシロップについてお話ししたいと思います。
黄色のシロップの正体
1ヶ月健診の時などに赤ちゃんに飲ませる黄色のシロップは、ケイツー(K2)シロップと言う名前で、赤ちゃんのビタミンK不足を防ぐお薬です。
1ヶ月健診の時以外にも、産まれてすぐと、退院の頃にもケイツーシロップを赤ちゃんは飲むことになっています。
ビタミンKは、出血した時に血を止めるのを助ける働きがあるので、不足すると出血しやすい状態となります。
ビタミンK不足の理由
赤ちゃんは下記のような理由によって、ビタミンKが不足しやすいと考えられています。
- ビタミンKは胎盤を通過しにくい
- 母乳中にビタミンKが少なく摂取しにくい
- 腸内細菌が少なく、ビタミンKが作られる量が少ない
- ビタミンKを吸収する能力が低い
また、早産の赤ちゃんは、正期産の赤ちゃんよりもビタミンK不足が起こりやすいことがわかっています。
ビタミンK不足だとどうなるの?
ビタミンKが少ないままだと、赤ちゃんの体内で出血が起きやすい状態となり、下記のような病気を引き起こすことがあります。
新生児ビタミンK欠乏性出血症(出生後7日までに発症したもの)
生後2~4日目に起こることが多く(合併症がある場合には24時間以内のことも)、皮膚や消化管などから出血が起こり、出血斑(青あざ)、注射や採血後に血が止まらない、吐血、下血などの症状がみられます。
吐血や下血など消化管からの出血の場合は、新生児メレナとも呼ばれます。
乳児ビタミンK欠乏性出血症(出生後8日以降に発症したもの)
生後3週間から2ヶ月までの母乳栄養の赤ちゃんに起こりやすく、特発性(原因不明のもの)は女の子よりも男の子が2倍なりやすいとされています。8割以上に頭蓋内出血の症状がみられ、命に関わる重篤な病気です。
どちらも怖い病気ですが、ケイツーシロップを飲ませることで予防することが可能です。
ケイツーシロップを飲ませる時期
ケイツーシロップは、合併症のない赤ちゃんの場合、通常3回飲ませることになっています。
- 1回目:出生後、ミルクが飲めることを確認後
- 2回目:生後1週間または退院時のいずれか早い時期
- 3回目:1ヶ月健診時
ケイツーシロップを与えるのは1ヶ月健診までの場合が多いですが、生後3か月まで自宅でケイツーシロップを飲ませる場合もあります。
赤ちゃんの状態や病院によっても違いますので、気になる方はかかりつけの産婦人科に確認しましょう。ケイツーシロップは、特筆すべき副作用はありませんので、自宅でも安心して飲ませることができます。
ケイツーシロップの飲ませ方
自宅でケイツーシロップを飲ませる場合には、下記の3つの方法があります。
スプーン
スプーンにシロップを少しずつ取り分け、赤ちゃんの口に流し込みます。舌で押し出されないように、ほほの内側に入れると飲ませやすいです。
哺乳瓶の乳首
乳首を赤ちゃんにくわえさせて、シロップを少しずつ乳首に入れて飲ませます。
哺乳瓶
ミルクか湯冷まし、母乳のいずれかと一緒にシロップを哺乳瓶に入れ、混ぜて飲ませます。量は10ml以下にして飲み切れるようにしましょう。
ケイツーシロップは開封したら1回で使い切ります。シロップをこぼしたり、吐いたり、半分以下しか飲んでいないと思われる時は、次回の分を飲ませるようにしましょう。
まとめ
ビタミンKが不足しやすい赤ちゃんですが、ケイツーシロップを飲ませることで、重篤な病気を予防することができます。ケイツーシロップ以外の方法、つまり母親が食事に注意するなど代替医療で代用できるものではないので、必ず最低限必要な3回は飲ませるようにしましょう。
生後1か月以降もビタミンK不足が心配な場合には、母乳中のビタミンKを多くするために、納豆や緑黄色野菜などビタミンKを多く含む食品を積極的に食べるのがおすすめです。
栄養バランスの整った食事は、母乳の質を良くし、赤ちゃんの成長を促すことができますので、食事内容にも気を配るようにしましょう。