厚生労働省の人口動態統計によると、大腸がんによる死亡者は、「結腸の悪性新生物」で3万4,521人、「直腸S状結腸移行部及び直腸の悪性新生物」で1万5,378人でした(厚生労働省「平成28年 人口動態統計(確定数)の概況」より)。これは、がん(悪性新生物)による死亡者の約15%程度を占めます。

大腸がんによる死亡を回避するためには早期発見・治療が有効といわれており、特に40歳以上の方では大腸ドックの受診がすすめられています。

目次

早期発見はなぜ重要?大腸ドックの必要性とは

大腸ドックとは大腸の状態を調べるための様々な検査を行うことで、大腸にできたポリープやがんといった大腸の異常をできるだけ早期に発見するための検診です。

がんで命を落とす方は多く、中でも大腸がんは部位別の死亡者数で上位を占めています。特に女性の場合、がんの部位別死亡数の第1位は大腸がんとなっています(厚生労働省「平成28年 人口動態統計(確定数)の概況」より)。

平成26年の時点での総患者数(継続的に治療を受けている人)は26万1,000人おり、患者さんは男女ともに年々増加傾向にあります(厚生労働省「平成26年(2014)患者調査の概況」より)。

5年生存率を見てみると、ステージ4では18.5%と非常に低い数値であるのに対し、ステージ1~3では90%前後です(国立がん研究センターより)。

こうしたデータから、大腸がんは罹患する可能性が比較的高い病気である一方で、早期発見・治療が非常に有効ながんであることがわかります。

特にこんな人は検査を!ハイリスク因子

次にあげるように大腸がんの発生リスクを高める要因にあてはまる場合は、特に大腸がんドックの受診が推奨されています。

  1. 40歳以上である
  2. 家族に大腸がんになった人がいる
  3. 大腸のポリープが見つかったことがある
  4. 卵巣がん、子宮がん、乳がんの既往がある
  5. 飲酒や喫煙をする
  6. 肥満、高身長である
  7. 炎症性腸疾患の既往がある

大腸がんは、40~50歳代ごろから発症者が増えはじめることから(慈恵大学より)、多くの病院・健保協会で40歳以上が大腸がんドックの対象になっています。

また、大腸がんは内因(遺伝的要因)が35%、外因(環境要因)が65%といわれています(国立がん研究センターより)。家族に大腸がんになった人がいる方は、大腸がんになりやすいといえます。

2~4については消化管ポリポーシスとよばれる病気に関係する症状でもあります。消化管ポリポーシスは大腸を含む消化管にたくさんのポリープができる病気で、その多くが遺伝性です。稀な病気ではありますが、高確率で大腸がんを発症する家族性大腸腺腫症や、乳がんなどの他のがんを併発することのあるポイツ・ジェガース症候群などがあり、該当する場合には定期的な検査が非常に重要となります。

炎症性腸疾患では、腸粘膜の慢性的な炎症が大腸がんのリスクを高めると考えられています。潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんは増加傾向にあるといわれており、これらの病気は若い年齢であっても注意が必要です。

どんなものがある?大腸の検査方法

お腹をおさえる女性

大腸ドックで行う検査には様々な種類があります。実施する機関によって検査項目は様々ですが、ここでは、代表的な大腸検査の内容とメリット・デメリットを紹介したいと思います。

大腸内視鏡検査

肛門から小型のカメラである内視鏡を挿入して、大腸の中を調べていく検査です。検査前に大腸を洗浄するための液を飲んで、大腸を洗浄する必要があります。大腸内をしっかりと見ることができため、非常に高確率でがんやポリープの発見ができるというメリットがあります。

しかし、高度の技術が必要で、実施時に大腸内を傷つけるリスクも伴うため、実施できる施設が限られるというデメリットがあります。また、腸が長すぎる、癒着を起こしているなどで、カメラが奥まで届かない場合もあります。

ポリープなど良性の腫瘍ですぐ切除できるものは、内視鏡検査時に切除する場合があったり、詳しい検査をするために組織を一部切除したりするような場合もあります。

大腸CT

造影剤を飲んでCTによる画像撮影を行って、大腸の状態を確認する検査です。内視鏡の挿入に抵抗のある方や腸の癒着などで内視鏡の実施が難しい方に適しています。

一方で、造影剤にアレルギーがある方は検査を受けることができません。

便潜血検査

便を検査して、便に血液が混じっていないか調べる検査です。体への負担がなく大腸がんの検査ができる最も一般的な検査の一つです。

偽陰性(まちがって陰性になること)や偽陽性(がんがないのに陽性になること)の可能性はあるものの、定期的な受診により大腸がんによる死亡率を減少させるという報告(国立がん研究センターより)もされています。

からだへの負担の少なさや手軽さも考慮すると、毎年受けておきたい検査です。

直腸診

指を肛門から入れて、直腸にしこりなどの異常がないか直接調べます。直腸の下部にがんが進行している場合に触れることができます。

ただし、指の届かない部分の検査は困難であるというデメリットがあります。

まとめ

大腸がんは初期は症状がないことも多く、症状が出る頃にはだいぶ病気が進行してしまっている可能性があります。そのため、大腸ドックを行うことで、初期の大腸がんを発見し、できるだけ早く治療を行うことができるという非常に大きなメリットがあります。今回の健康診断・定期検診から、大腸がんドックの受診を考えてみませんか?

大腸がんについて、詳しくはがん対策情報センターのサイトもご覧ください→国立がん研究センターがん対策情報センター|がん情報サービス「大腸がん」