呼吸器や循環器の病気をはじめ、タバコを吸う方では様々な病気のリスクが高くなります。喫煙者の数自体はどんどん減ってきていますし、何らかのきっかけで禁煙を決意したことのある方も多いのではないでしょうか。

本記事では、禁煙にまつわるいくつかの疑問にお答えします。タバコを止めたいと考えている方に、ぜひ参考にしていただければと思います。

目次

禁煙したら病気のリスクは下がるの?

タバコは、がんや心臓・肺の病気など、様々な病気のリスクを高めることはご存知だと思います。健康のために禁煙を検討中の方にとっては、タバコを止めると病気のリスクが下がるかどうかは重要な問題でしょう。

禁煙することで、タバコに関連する病気のリスクは下がります。たとえば、脳卒中や心筋梗塞のリスクは速やかに下がります。がんのリスクは、禁煙年数が長ければ長いほど、生涯非喫煙者(人生で一度もたばこを吸ったことがない人)に近づくという調査結果があります。

禁煙を始めるタイミングに、遅すぎるということはありません。思い立ったタイミングで始めれば、それだけ病気のリスクを下げることができるのです。

我慢できないので、1本だけ吸ってもいい?

タバコに含まれるニコチンには、依存性があります。そのため、禁煙を始めて体内からニコチンが抜けると、イライラや集中力の低下頭痛不眠など様々な症状がみられることがあります(離脱症状)。「どうしてもタバコが吸いたい」と強く思ってしまうのも、離脱症状の一つです。

この離脱症状から抜け出そうとして、1本だけ」と考え、吸ってしまう方がいます。でも、これは禁煙を失敗させる最大の原因となります。

離脱症状が続くのは、長くても2~3週間程度です。その間はつらいと思いますが、口寂しさをガムやお茶などで紛らわせたり、タバコと結びついている行動を変えてみたり、工夫を行ってください。その1本を我慢することが、長期的な禁煙を成功させる鍵なのです。

禁煙には健康保険が適用されるの?

ニコチン依存症は病気と考えられます。そのため、指定基準を通った施設で、下記の要件をすべて満たす患者さんが治療を受ける場合、12週間にわたる5回の治療が保険適用となります。

1. ニコチン依存症に係るスクリーニングテストでニコチン依存症と診断された方10点中5点以上)
2. 35歳以上の者については、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が、200以上である方
3. ただちに禁煙することを希望している方であって、「禁煙治療のための評価手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意された方
東京都福祉保健局|禁煙治療についてより

あわせて、過去1年以内に保険診療による禁煙治療を受けていないことも必要です。

スクリーニングテストの内容については、厚生労働省 e-ヘルスネットをご参照ください。

医師の指導のもと、薬を用いて行う禁煙治療は、一人で取り組む禁煙よりも成功率が高くなります。ぜひ、禁煙外来を設けている医療機関に相談してみてください。

なお、上記の条件に当てはまらない場合、自費(自由診療)で禁煙治療を受けることも可能です。

禁煙治療の流れ

禁煙外来には12週間通わなければだめ?

禁煙外来は、下記のようなスケジュールで行われます。

  • 初回診察:喫煙状況・禁煙経験の確認(問診)や一酸化炭素量の測定を行い、禁煙継続に向けたアドバイスを受けます。補助薬の選択を行い、禁煙開始日を決定したら「禁煙宣言書」にサインをします。
  • 2週間後:禁煙状況の確認・評価をし、禁煙継続に向けたアドバイスを受けます。離脱症状が続く場合、対策を相談しましょう。
  • 4週間後:禁煙を続けていると、体調がよくなったと実感し始める頃です。その効果の確認や、継続に向けたアドバイスを受けます。
  • 8週間後:禁煙が安定してくる時期です。治療が順調な場合、ニコチンパッチの使用を終了することがあります。
  • 12週間後:禁煙治療は終了です。禁煙状況の確認と、今後の禁煙継続についてアドバイスを受けます。

「12週間以内に禁煙できたから、もう一人でも大丈夫そう」

禁煙外来に通院している途中で、もう「タバコを吸いたい」と思わなくなることがあります。それでも、そこで通院を止めるのではなく、最後まで通い続けていただきたいと思います。

禁煙経験終了9ヶ月後の禁煙状況に関する調査(ニコチン依存症管理料による禁煙治療の効果等に関する調査報告書 p.81)では、1回で通院をやめてしまった人が禁煙を継続している確率はわずか4.7%でした。一方、5回のプログラムを終了した人の禁煙継続率は47.2%と、格段に多くの方が禁煙を続けていることが分かります。

長期的に禁煙を続けたいと思ったら、最後まで通院を続け、医師からのアドバイスを受けることが大切です。

「途中で吸ってしまって行きづらくなった」「禁煙は無理だと思った」

一度は禁煙してみたものの、我慢できずに吸ってしまったら、医師にあわせる顔がないと思うのは自然なことです。

ですが、禁煙に成功する方の中には、3度目や4度目の挑戦でようやく成功したという方が珍しくありません。今回は失敗してしまったとしても、その経験から「どんなときに吸いたくなるか」「どうすれば吸わずにいられたか」を学び取ることができれば、再挑戦に向けた大きな一歩だといえます。

今回の挑戦について振り返り、今後の禁煙について医師と相談するためにも、ぜひ受診を続けてください。

さいごに

一人で禁煙していると、「1本くらい吸っても大丈夫かな」と思ってしまいがちです。ですが、タバコの害や禁煙のメリットについて正しい知識を得、医師の助言を受けながら行うことで、成功へと一歩近づくことができます。

繰り返しになりますが、禁煙を始めるのに遅すぎるということは決してありません。「思い立ったが吉日」という言葉もあります。これを機に、ぜひ禁煙に挑戦してみてはいかがでしょうか。