脳卒中」や「脳梗塞」、「脳出血」について、どんな病気かご存じの方は多いかもしれませんね。
しかし、「TIA」という言葉は聞いたことがあるでしょうか?

まだまだ認知度の低いTIA(一過性脳虚血発作)ですが、脳梗塞の前触れとして発症するケースがあることがわかってきています。TIAについての知識を深め、万が一の時は脳梗塞の発作が起きる前に病院に行けるようにしましょう。

目次

脳卒中とは

脳卒中は、何らかの原因で脳の血管や中枢神経が障害されてしまう病気の総称です。
その中でも、脳の血管が詰まってしまうことを脳梗塞、脳の血管が破れて出血を起こすことを脳出血と呼びます。

その症状は障害を受けた脳の範囲によって異なりますが、以下のような症状が見られることがあります。

脳卒中の恐ろしいところはその死亡率です。
脳卒中を含む脳血管疾患は日本人の死亡原因の第4位で、2016年は年間で約107,000人が脳血管疾患によって死亡したと推測されています(厚生労働省より)。

また、脳卒中は回復してもその後の後遺症が残ってしまうことも多く、早期発見と予防が大切な疾患です。

脳梗塞の前兆?一過性脳虚血発作(TIA)とは

一過性脳虚血発作とはTransient(一過性の)Ischemic(血流が乏しくなる)Attack(発作)の頭文字をとってTIAと呼ばれています。脳の血流が一時的に悪くなることで、手足が痺れる、力が入らない、言葉が出てこない、などの症状が現れますが、短時間、多くは1時間のうちにおさまってしまいます

かつてTIAは一時的な症状だとして軽視されていました。
しかしTIAを起こした人は高い確率で、比較的短期間のうちに脳梗塞になるということが明らかになりました。

TIA発作後速やかに病院を受診し検査・治療を受ければ、脳梗塞の発症の危険を減らせることもわかっています。
TIAは脳梗塞の重要な前ぶれであり、速やかに脳梗塞に備えた治療を開始する必要がある状態といえます。

TIAの症状~このような症状があれば、すぐに脳神経外科を受診!

手術着の医師-写真
TIAの症状は脳梗塞と似ており、以下のようなものがあります。

  1. 手足や顔に力が入らない(運動障害)
  2. 手足や顔の感覚がなくなる・痺れる(感覚障害)
  3. 呂律が回らない、言葉が出にくい(言語障害)
  4. 片方の目が見えにくくなる一過性黒内障や、片側にあるものが見えなくなる半盲(はんもう)

運動障害、感覚障害に関しては身体の左右どちらか片方だけに症状が現れることが多いです。

先ほども述べたようにこれらの症状は短時間で治まってしまうことが多いため、しばらく様子を見てしまう方もいらっしゃるかと思います。
しかしTIAの発症後90日以内で脳梗塞を発症した例を見ると、そのうち約半数がTIA発症後の48時間以内に発症していたという統計もあるため(下記参照)、TIAを疑った際にはすぐに脳神経外科の受診が必要です。

参照
Johnston SC, Gress DR, Browner WS, Sidney S. Short-term prognosis after emergency
department diagnosis of TIA. JAMA 2000;284:2901-2906
Lisabeth LD, Ireland JK, Risser JM, Brown DL, Smith MA, Garcia NM, et al. Stroke risk after transient ischemic attack in a population-based setting. Stroke 2004;35:1842-1846

脳梗塞の起こしやすさがわかる!?TIAの重症度判定スコア

TIA発作後に脳梗塞を起こす危険性を予測する指標としてABCD²スコアが用いられています。
“ABCD²”とは、Age(年齢)、Blood pressure(血圧)、Clinical symptoms(症状)、Duration(症状の持続時間)、Diabetes(糖尿病)のそれぞれ頭文字をとったものです。各項目の点数を足した合計点が高いほど、TIA発作後、早期に脳梗塞を起こす危険性が高いとされています。

A(Age) 年齢 60歳以上 1点
B(Blood
pressure)
血圧 140/90mmHg以上 1点
C(Clinical symptoms)  症状 片側の麻痺 2点
麻痺のない呂律障害 1点
D(Duration)  症状の持続時間 10~59分 1点
60分以上 2点
D(Diabetes) 糖尿病 あり 1点
  合計

参照
Johnston SC, Rothwell PM, Nguyen-Huynh MN, et al.
Validation and refinement of scores to predict very early
stroke risk after transient ischemic attack. Lancet 2007;
369:283-292

まとめ

TIAと呼ばれる一過性の発作は、脳卒中の前触れとして起きることがあります。TIAは脳梗塞に移行するリスクが非常に高いですが、すぐに治療を開始することで重症化を予防することもできます。
脳卒中のような症状が出て、すぐに治まったとしても楽観視せず、早めに脳神経外科を受診しましょう。