生理にレバーのような血の塊が混じるような方は、過多月経が疑われます。まだ受診をしていない方や、受診を迷っている方にとって「なぜ過多月経になるのか」は気になることの1つかもしれません。ストレスや過労のせいかなと放置するのはおすすめできません。過多月経は、原因となる病気が隠れている場合があり、治療しなければ悪化したり、命に関わる場合もあります。ここでは、過多月経の原因や、その治療法などについてお話ししたいと思います。
過多月経の症状チェックは「女性の貧血、原因の6割は生理にあった!?過多月経の症状をチェック」の記事で詳しく見ています。
過多月経の原因
過多月経の原因として、婦人科器質性疾患、婦人科機能性疾患、内科的疾患の3つがあります。
婦人科器質性疾患
子宮筋腫(子宮にできる良性の腫瘍)、子宮腺筋症(子宮内膜が子宮の筋肉の中にできる病気)、子宮内膜症(本来、子宮の中にしか作られない子宮内膜が卵巣や腸、膀胱などにも発生し、生理周期に合わせて剥がれて出血を起こす病気)、子宮内膜ポリープ、子宮奇形などの主に「子宮」の病気です。不妊や不育症(妊娠成立後に流死産のため生児を得られない状態)に繋がる危険があり、出血があまりに多い場合には命に関わります。
婦人科機能性疾患
黄体機能不全(女性ホルモンの分泌不足によって子宮内膜が毎月きちんとはがれない状態)、無排卵周期症(ほぼ規則的に生理様の出血はあるのに、排卵を伴わない状態)など、ホルモンバランスの乱れが原因となる病気です。不妊・不育症の原因になります。更年期障害による月経不順もここに分類されます。
内科的疾患
白血病や特発性血小板減少性紫斑病(はっきりとした原因がわからず、血小板数が減少し、出血しやすくなる病気)、先天性の血液疾患など、止血機能に異常を示す血液の病気です。命に関わる場合もあります。
治療法について
原因によって治療法はさまざまですが、婦人科器質性疾患や内科的疾患が原因の場合には、その病気の治療によって過多月経が改善することが期待できます。婦人科機能性疾患が原因の場合、下記のような治療が行われます。
低容量または超低用量ピルの内服
卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という女性ホルモンを配合した薬を毎日内服し、排卵を抑制する薬物療法です。排卵を抑えるだけでなく出血のもととなる子宮内膜を薄くする作用、生理の量が少なくなる効果が期待できます。月経困難症治療薬として発売されているピルは保険適応のため、1か月分の費用は1500~2500円くらいです。
黄体ホルモン剤の内服
主に内膜症や腺筋症の時に用いられる薬です。黄体ホルモンという成分のみを含むもので、ピルとは異なり月経様出血がほとんどこなくなります。卵胞ホルモンを含まないため、喫煙者や40歳以上の血栓症リスクが高くなる方でも安心して服用できます。
止血剤の内服
出血を抑える薬を内服し、生理の量を減少させる薬物療法です。
ミレーナ装着
ミレーナは初めは避妊目的で発売された「ホルモン付加子宮内避妊具」で、子宮内に装着することで、黄体ホルモンの働きを持つ薬剤を最長5年間放出し続け、避妊効果を発揮します。避妊効果に加えて、子宮内膜の増殖を抑える作用があるため、生理の量が減少する効果があり、過多月経や月経困難症の治療にも使われます。装着している間は妊娠しませんが子宮から取り去ることで、妊娠が可能になります。過多月経及び月経困難症に対しては保険適応となったため、挿入時の費用は約1万円程度の自己負担で済みます。5年間有効なため、1か月あたりの費用負担は最も少なくなります。
子宮内膜掻把術(しきゅうないまくそうはじゅつ)
子宮内膜や血の塊を子宮から掻き出し、現在進行の出血をひとまず止血する方法です。次回かその後の生理で過多月経が再発してしまうため、次の生理の時には薬物療法を行う必要があります。
子宮筋腫または腺筋症核出術
筋腫や腺筋症の部分だけをくりぬいて子宮を正常な形や大きさに戻す手術です。筋腫ができている場所によっては、経膣的な手術を行う場合もあります。病変をとり切れない場合や、術後に再発するリスクはありますが、子宮そのものを残すことができるため、将来的な妊娠の希望がある場合に選択されます。
子宮摘出
子宮を摘出することで生理そのものをなくすことができるため、過多月経の根治的な治療法になります。主に子宮筋腫や腺筋症による過多月経がひどく、薬物療法などほかの治療法でもコントロールできない場合に行います。子宮がなくなるため、今後妊娠を希望していない方のみに行う治療となります。
マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)
子宮内膜をマイクロ波で焼く治療法です。機能性過多月経や子宮腺筋症による過多月経に対して行われます。経膣的な操作で行うため、外科的手術を避けたい方に向いています。ただし、妊娠したい方にはできません。
子宮動脈塞栓術(UAE)
太ももの動脈からカテーテルを入れて子宮動脈まで進め、吸水性のゼラチンスポンジで血流を抑える治療法です。子宮筋腫による過多月経の時に行う場合があります。子宮筋腫が小さくなることで月経量が減る可能性があります。以前は自費で行っていた治療ですが、使用するゼラチンスポンジの種類によっては保険適応となっています。
まとめ
過多月経の原因となる病気は、妊娠・出産に大きな影響を及ぼす場合があり、病気によっては命に関わるものもあるため、もし症状がある場合には、早めに婦人科を受診するようにしましょう。自己判断は禁物です。自覚症状だけではわからないことも多く、血液検査やエコー検査、内診などの検査で原因を調べていくことが必要になります。「生理の量が多いだけ」とそのままにしておくのではなく、それがからだの異常サインであることを知っておいてください。そして、異常サインを感じた場合には、病院を受診するようにしましょう。