40代から50代にかけては、いわゆる「更年期」と呼ばれる期間です(個人差があり、早い人では30代から症状がみられることもあります)。女性にとってはホルモンのバランスが変化し、それに伴い身体に様々な不調が起こることがあります。「更年期障害」と呼ばれるこれらの症状の薬物療法について、ご紹介していきます。

目次

更年期障害の症状について

更年期障害の症状は、人によって非常に大きな個人差があります。代表的なものは、下記のような症状です。

  • のぼせ・ほてり・発汗
  • 抑うつ・不眠・イライラする
  • 疲れやすい・倦怠感
  • 頭痛・頭重感
  • めまい・動悸・息苦しさ
  • 手のふるえやしびれ
  • 肌や目・口の乾燥
  • 尿のトラブル

日常生活に支障を来すほどの症状に悩まされる人がいる一方、特に不快な症状を感じない人もいます。
また、同じ症状であっても感じ方や程度が異なるため、周囲の人に相談しても理解してもらえない、という場合もあることでしょう。

また、ここに挙げた以外の症状が起こることもあると思います。
もしかして?と感じる場合は、更年期を意識して、日常生活などを工夫してみてもいいかもしれません。

更年期障害は、薬物療法で改善できる

更年期障害は、日常生活の工夫および薬物療法で改善していきます。
まずは身体を動かす、生活リズムを見直すといった対処を行いますが、なかなか効果がみられない場合は市販薬を服用したり、病院(婦人科や診療内科など)で診察を受けたりすると良いでしょう。

ここでは、薬物療法について解説していきます。

市販薬によるセルフメディケーション

薬局や薬店で売られている市販薬を服用し、症状の緩和をはかることができます。漢方やビタミン剤を配合したタイプの薬が一般的で、下記のような薬が販売されています(一例です)。

命の母A(小林製薬)

小林製薬から販売されている女性保健薬「命の母A」は、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「加味逍遥散(かみしょうようさん)」「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」と3つの生薬を組み合わせた生薬です。
ビタミンB群やビタミンE、カルシウム、タウリンなども配合されています。

服用にあたり、体力の衰えている方や胃腸が弱く下痢をしやすい方は薬剤師に相談してください

ツムラの女性薬 ラムールQ(ツムラ)

漢方で有名なツムラが更年期障害用の市販薬として販売しているものです。
女性ならではの様々な症状に効く中将湯に、鎮痛効果・鎮静効果のある生薬(エンゴサク、カノコソウ)のほか、ビタミンを配合しています。

便秘を改善する「センナ」が含まれているため、服用後に便がやわらかくなったり、下痢がみられたりすることがあります。
その場合は服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。

ルビーナ(武田薬品)

連珠飲という漢方処方に基いて作られた製品で、体力が中程度・やや虚弱という方におすすめです。
ただし、虚弱体質の方や胃腸が弱い方、下痢をしやすい方は服用前に医師や薬剤師に相談してください。

連珠飲は、四物湯(血のめぐりを改善し、身体を温める)と苓桂朮甘湯(自律神経の働きや水分代謝を改善する)を組み合わせた漢方処方です。

神恵(佐藤製薬)

血の巡りを良くする四物湯に、血管を拡張する成分と、血行を促すビタミンEなどが配合された製品です。

服用後は、生理が予定よりも早く来たり、経血量が少し多くなったりする場合があります。
出血がいつもより長く続くようであれば、薬剤師や医師に相談してください。

病院ではどんな治療を行うの?

笑顔の女性

ここからは、更年期障害に対して婦人科や診療内科で行われる治療をご紹介します。

ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy : HRT)

更年期障害はそもそも、卵巣の機能が低下することで女性ホルモン(エストロゲン)が減少するために起こります。

ですから更年期障害の薬物療法では、女性ホルモンを補う治療が一般的に行われています。下記2種類の方法があります。

  • エストロゲンのみを補充する治療法
  • エストロゲンとプロゲステロンの2種のホルモンを補充する方法

HRTに副作用はある?

もともとは、エストロゲンのみを補充する治療が一般的でした。
しかしこの方法だと子宮内膜がんのリスクが増加することが研究の結果分かってきました。

そのため、子宮のある女性に関しては2種類のホルモンを補充する(プロゲステロンにより子宮内膜がんを予防する)方法が普及しましたが、アメリカにおいて、このホルモン補充療法により乳がん発症リスクが高まるとの報告がありました。

ただし国際閉経学会によると、このリスクは治療中止後は減少するといいます。

しかし、この結果が日本人にそのまま当てはまるわけではないと考えられています。
閉経後の年数や患者さんの年齢、体格、家族歴などによってもリスクは変わってくるため、この治療を受ける際は医師とよく相談する必要があるでしょう。

このほか、HRTによって起こりうる副作用として不正出血乳房の痛み乳房の張りなどがあります。特に不正出血は、多くの患者さんでみられます。

漢方薬による治療

漢方薬の症状の改善には、漢方を用いることがあります。HRTを使用することができない場合や、多彩な症状を改善するときに処方されます。

体質や症状にあわせて、下記のような漢方が処方されます。

  • 加味逍遙散:体力が中程度以下の方向け。のぼせ、肩こり、疲れやすさ、いらだち、便秘などに効果がみられます。
  • 桂枝茯苓丸:比較的体力がある方向け。肩こりや頭痛、めまい、のぼせ、足の冷えなどに効果的です。
  • 当帰芍薬散:虚弱体質の方向け。冷え性、貧血傾向、疲れやすい方に用いると良いでしょう。

抗うつ薬・精神安定剤による治療

うつや不安など、精神的な症状が強い場合に抗うつ薬や精神安定剤で治療を行うことがあります。
薬による治療と同時にカウンセリングなども行い、ストレスを取り除いていきます。

まとめ

更年期障害で医療機関を受診すると、ホルモン剤や漢方を処方されることが多いです。
いきなり病院に行くのは不安、という方もいると思うので、本記事では市販薬もピックアップしてご紹介しています。

更年期特有の症状は、その時期がすぎれば「あれは何だったんだろう」と感じるようになる方もいるといいます。

しかし、長い方では10年近くにもわたって症状が続くため、無理をせず、薬や医療にも頼ることが大切です。適切なケアを行い、我慢せずに素敵な10年間を過ごしましょう!