食物アレルギーの中でも、エビやカニなどの甲殻類が原因となるのが、甲殻類アレルギーです。食物アレルギーの3大原因食物といわれる鶏卵・牛乳・小麦は、乳幼児に発症して年齢とともに食べられるようになり、症状が落ち着いていくことが多いです。しかし甲殻類が原因となるアレルギーは2、3歳以降に増え始めます。
学童期以降には特に注意が必要な甲殻類アレルギー。エビやカニは、直接食べなくても身近な食品に潜んでいる可能性があります。甲殻類アレルギーとはどのように付き合えばよいのでしょうか。症状や治療法などについてご紹介します。
甲殻類アレルギーとは
エビやカニなどの甲殻類を食べたり触れたりすることによって、皮膚、消化器、気道を中心にアレルギー症状が起きます。一般的には即時型の反応が起こりやすく、食べてから1時間以内に、蕁麻疹や発疹などがでることが多いです。
甲殻類アレルギーの原因になる物質は、トロポミオシンというたんぱく質です。トロポミオシンは、エビやカニなどの甲殻類に多く含まれていますが、貝やイカ、タコなどにも含まれています。
注意が必要な食品は?
- えびせん
- ちりめんじゃこ
- しらす
- かまぼこ
- ちくわ
ちりめんじゃことしらすには小さなエビやカニが混ざっていることがあります。また、かまぼこやちくわの原材料である魚は、エサとしてエビを食べている可能性があります。
エビやカニによってアナフィラキシーを起こす可能性があるので、食品衛生法によって特定原材料としての表示が義務づけられるようになりました。エビやカニそのものを避けるのはもちろんですが、誤食を防ぐために食品表示を確認するようにしましょう。
どんな症状が起きるの?
皮膚症状
痒み、じんましん、口や眼の周りが腫れる、発疹など
消化器症状
腹痛、嘔吐、下痢など
気道症状
鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳、喉のイガイガ、ぜんそく発作、呼吸困難など
全身症状
全身に様々なアレルギー状態が起きるアナフィラキシー(短時間のうちに重篤なアレルギー反応が起こること)
甲殻類を食べてこのような症状が現れたら、すぐに医療機関(できればアレルギー科)を受診するようにしましょう。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーって?
エビやカニを食べただけではアレルギーの症状が起こらないのに、食事の後に運動をすることで、じんましんが現れたり、喉の粘膜がむくんだり、ゼーゼーして息が苦しくなるなど、急性のアレルギー反応が引き起こされることがあります。これを、食物依存性運動誘発アナフィラキシーと呼びます。
全身がショック状態になる重篤なアレルギー症状を起こすこともあるので、特に注意が必要です。甲殻類の摂取に運動の刺激が加わると、食物の消化吸収、全身の血流や自律神経のバランスなどが乱れることが原因と考えられています。
どんな治療をするの?
食物アレルギーの治療の基本は、アレルギーを起こす原因物質を避けることです。誤食を防ぐため、本人の注意に加え、周りの人の協力が必要になります。
食事療法
甲殻類アレルギーを起こさないためには、甲殻類を食べないようにすることです。エビ、カニなどの食品そのものを取り除くのと同時に、調理をしているときに混入しないように気を配りましょう。かまぼこやちくわなどの加工食品は原材料にエビやカニなどが含まれている可能性があるので、食品表示を必ず確認するようにしましょう。
除去食を行うときは、医師の正しい診断が必要です。原因となるものをただ取り除くだけでなく、代替の食品があるかなど、栄養面での配慮も必要になるからです。食物日誌をつけると、毎日の食事に偏りがないか、栄養バランスが取れているかなどを定期的に確認することができます。
エピペン注射
食物アレルギーの症状が全身に渡って出たり、血圧が下がったり意識障害が現れたりしたときは、早期のアドレナリン注射が必要です。エピペンは、アナフィラキシーを発症したときに病院以外でアドレナリンを自分で注射するための薬です。
アドレナリンは、血圧を上げて気管支を拡げる作用があります。注射をした後すぐに効果が現れますが、エピペンを注射した後に状態が回復しても必ず医療機関を受診しましょう。エピペンを使用する事態について、医師と事前に相談しておくことが大切です。
日常生活の注意

学童期であったり集団生活を行っていたりするのであれば、給食をはじめとして食物に関わる様々な活動で甲殻類に触れないように気をつけましょう。本人がアレルギーについて理解をし、お菓子の交換の際なども、保護者に確認せずに勝手に食べないようにすることも必要です。特に給食では、誤食を防ぎ除去食や代替食を実施していくために、責任者、担当者との綿密な打ち合わせが必要です。献立の確認、調理場での甲殻類の混入の防止、配ぜんの仕方などに気を配りましょう。
除去食を続けるとともに、心理面でもサポートが必要になります。周りの人と同じ食事をとれないことは、時に疎外感や劣等感につながることがあります。アレルギーを意識するあまりに慎重になり過ぎて、食事を楽しめなくなることもあるのです。心理的な負担を減らすために、周りの人が食物アレルギーを正しく理解してサポートすることがとても大切です。
誤食をした場合の緊急対応は?
どんなに気を付けていても、アレルギーの原因となる食品を食べてしまうことがあるかもしれません。誤食してしまったときのことを想定して、緊急時の応急処置について準備をしておくことが大切です。食物アレルギーの症状が出たら、慌てないで状態をよく観察してすぐに適切な行動に移れるように対策を考えておきましょう。
食物アレルギーの反応が出たときは
- 食べ物が口の中に残っていれば、取りだして口を水ですすぐ
- 飲み込んだものは吐かせなくてよい
- 呼吸をしやすいように横になって足を上げる
アレルギーの症状が重かったり、アナフィラキシーが起きたりした場合は
- できるだけ助けを求め、人を集める
- 保護者の方は、本人の側から決して離れない
- アナフィラキシーが起きたらエピペン注射をして救急車を呼ぶ
まとめ
食物アレルギーの一種である甲殻類アレルギーは、エビやカニを食べたときに、皮膚や消化器などにアレルギー反応が起こります。重症なときは、全身症状としてアナフィラキシーが起きることもあります。加工品などで原材料に甲殻類が含まれているものもあるので、誤食を防ぐために必ず食品表示を確認するようにしましょう。
基本的な治療は、甲殻類の除去です。栄養に偏りがないように、心理的に負担がないように、本人と周りの人がアレルギーに対して理解しておくことがとても重要です。