飲酒の習慣が肝臓に悪い影響を与えることは良く知られています。正式には「アルコール性肝障害」という病名になります。アルコール性肝障害が恐ろしいのは、ありふれた状態である脂肪肝から始まり、肝炎肝硬変、さらには肝がんへと進行する可能性がある点です。ここでは、「アルコール性肝障害」とはどのような病気なのかを見ておきましょう。

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飲み過ぎから始まるアルコール性肝障害

お酒の飲み過ぎが体に悪いことは良く知られていますが、中でも大きなダメージを被るのが肝臓です。習慣化した飲酒と肝障害は密接に結びついています。独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センターによれば、アルコール依存症者(毎日日本酒で5合程度のお酒を10年以上飲んでいる人)における肝障害の割合は約80にも達するそうです(e-ヘルスネット)。

飲酒による肝障害の最初の段階は脂肪肝です。症状はほとんどなく、腹部超音波検査で見つかるケースが多いとされています。脂肪肝は継続的な飲酒によって簡単に引き起こされる反面、飲酒を止めれば短期間で改善するという特徴があります。

脂肪肝の状態で飲酒を継続すると症状はさらに悪化します。肝臓に炎症が起き、肝細胞の破壊が進むのが「アルコール性肝炎」です。

また、近年日本で増えているのが、肝臓に線維組織が増殖して肝機能を低下させる「アルコール性肝線維症」です。アルコール性肝炎もアルコール性肝線維症も、放置するとさらに悪化して生命に危険が及びます。

アルコール性肝硬変

アルコール性肝炎またはアルコール性肝線維症が悪化すると、「アルコール性肝硬変」となります。

アルコール性肝硬変は、日本酒で約7合を毎日10年以上飲み続けた人の20に発症します(e-ヘルスネット)。さらに、同じ量を15年以上飲み続けた場合では50に発症します。腹水、黄疸、吐血といった症状が現れ、最悪の場合は死に至ります。

非常に深刻な状態ではありますが、断酒を継続することで改善するケースもあります。諦めずに断酒を続けることが大切です。これはアルコール性肝障害全般にいえることですが、最も効果の高い治療は「お酒を飲まない」ことです。

肝硬変の方は肝がんにもなりやすいため、注意が必要です。

肝がん

アルコールの過剰摂取により、肝がんになってしまうこともあります。厳密に言うと、肝細胞ががん化してしまう肝細胞がん(HCC)というのですが、こちらはお酒の飲みすぎ、肝硬変、慢性肝炎などが原因となって発生します。加えて男性、高齢の方、喫煙者はリスクが高いため、注意が必要です。

がん自体の症状は少なく、肝炎や肝硬変の症状(黄疸、体のだるさなど)が出ます。早期診断が重要ですので、定期的に検査を受けましょう

初期からの対応が鍵を握る

グラス

このように、アルコール性肝障害は軽度のものから重度のものへと進行していきます。初期の状態である脂肪肝には症状がありません。そのため飲酒の習慣がある人は積極的に検査を受けるようにすると早期発見に繋がります。

血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)、γ‐GTPの値を調べることで肝機能の状態を確認することができます。このほか、必要に応じて超音波やCT撮影による画像解析や、肝生検(針を刺して肝臓の組織を採取する)による組織学的診断を追加することもあります。

まとめ

アルコール性肝障害は、悪化してしまわないうちに改善することが大切です。飲酒の習慣がある人は、定期的な検査によって肝機能の状態を確認するようにしてください。そして、「脂肪肝」であることが分かったら、すぐに断酒を始めることで、アルコール性肝炎やアルコール性肝線維症、さらにはアルコール性肝硬変への進行をくい止めましょう。