おならは生理現象、といってもその音や臭いなど気になりますよね。おならはお腹にたまったガスが排泄される現象ですが、なぜガスがたまったり、それによってお腹が張ったり、痛みがあったりするのでしょうか?今回は、おならと胃腸の不調の関係について、医師・高山 哲朗先生による監修記事で解説します。
おならの基礎知識
おならの成分は?
おならの主成分は、窒素・水素・二酸化炭素などです。食事や会話時に無意識に飲み込んでいる空気が、胃から腸にたまり、やがておならとなって排出されます。また、腸内細菌によって発生するガスも成分に含まれます。
おならはなぜ臭い?
おならの臭いには、腸内細菌の関与が考えられています。
従来は善玉菌、悪玉菌、日和見菌といった分類も言われてきましたが、近年はその概念はくつがえりつつあります。ビフィズス菌は、臭いをほとんど発生させないといわれています。肉などのたんぱく質や硫黄成分を多く含む食事(にんにくや玉ねぎ)を摂取すると、特定の菌によって、おならが臭くなるといわれています。
また、便秘やお腹の調子を崩すことでも悪玉菌が増え、臭いおならのもととなります。
おならと病気の関係
おならは腸内にたまったガスであり、胃腸の調子によって回数や匂いに変化が出てきます。
また、胃腸の働きはストレスとも密接な関係があります。
1.便秘
大便は大腸で作られます。小腸から大腸へ流れてきた大便は、はじめは液状ですが、大腸で水分が吸収されて次第に形を成します。大腸は大便をスムーズに送りだすためにぜん動運動をしていますが、ストレスや運動不足によりぜん動運動が弱くなることで便秘を引き起こします。
健康な胃腸は、食事摂取後4、5時間で胃と小腸での消化吸収を経て、残渣物が大腸に到達します。そこからおよそ1~3日かけて大腸で水分を吸収し大便が排出されます。
このように大便がスムーズに排泄されず、腹部の膨満感や痛み、おならの増加、食欲不振、肌荒れなどの症状を自覚する状態を便秘といいます。
排便の頻度には個人差があるため、3日に1回しか排便がなくても、こうした苦痛な症状がなければ便秘ではありません。
大腸がんと便秘
以前は便秘によって発生する細菌やガスが大腸がんの原因になると考えられていましたが、近年の研究では、直接の関係はないといわれています。しかし、大腸がんの症状として便秘があらわれることがあります。
以前は毎日排便があっていたのに便秘がちになった、または便が細くなった、血便が出るなどの症状があれば、大腸がんの疑いがあるため注意が必要です。
2.過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)とは、炎症や腫瘍などの異常はみられないのに、便秘や下痢による腹痛やおなかの張りが慢性的に持続する病気です。
過敏性腸症候群には、便秘型、下痢型、混合型、分類不能型があり、いずれもストレスとの強い関連があります。自律神経のバランスが崩れ、腸のぜん動運動が弱くなったり、反対に過剰になったりすることで便通に異常をきたします。
電車の中や仕事中に急に便意をもよおしたり、お腹の症状が気になって仕事や勉強に集中できない、趣味や外出を楽しめない、など日常生活に影響をもたらします。
この病気は消化器内科で服薬治療が行われますが、心理療法などを併用することもあります。
3.呑気症歯の噛みしめ
無意識に空気を多く飲み込んでしまう呑気症や、歯の噛みしめにより唾液の増加と一緒に空気を飲み込んでしまう症状が原因で、おならが増加することがあります。呑気症や歯の噛みしめは、不安や緊張などのストレスに起因していることが多いとされています。
まとめ
おならは胃腸の働きに関連して起こる生理現象のひとつです。胃腸の働きには炎症や腫瘍などの病気のみならず、ストレスが強く関与しています。
身体の生理機能としては、おならを我慢することは良いことではありませんが、社会生活の中でおならが気になる人も多いと思います。以下の記事では改善法もご紹介していますので、あわせてご覧ください。